109 / 184
第3章
第109話 パートナーの不在
しおりを挟む
アイナが母国アメリカに戻った日の翌日、清志は早速パートナー不在の状態で事件の対応を求められていた。
魔術を用いて作られた違法な薬品の密輸と密売、その容疑者を確保する為に清志は現地へと向かう。
今回起きている事件は、魔術師でない者を魔術師に変えてしまう違法薬物が根源にある。
この手の薬物は魔素に恵まれた土地である程、その効果がより高く発揮出来る。
そして京都は日本でも特に魔術的要因に恵まれた土地だ、どうしてもこう言った代物を引き寄せてしまう。
京都市左京区にある寂れた雑居ビルで、今夜0時に問題の取引が行われる予定だ。清志を始めとした、魔導協会の魔術師達がビルの周囲でマークしている。
「清志君、突入は任せるよ」
「分かりました」
「タイミングが来たら教えるから」
現場で指揮を執っているベテランAランク魔術師が、清志に突入時の一番手を求めた。
この様なやり取りも状況も、清志にとっては慣れたもの。何年も前から続けていた事だ。
それでも今やパートナーがいる状況に慣れてしまったからこそ、清志は不便さを感じている。
アイナが居ればな、と言う思いがどうしても浮かんでしまう。そんな内心を押し隠しながら清志が待機している間も、内部を透視している観測係が取引の様子を監視していた。
中途半端な状況で突入しても、シラを切られてしまう可能性がある。隣に立つビルの屋上から監視を続けていた、20代の女性魔術師から連絡が入る。
『今です!』
「よし! 頼んだぞ」
「行きます!」
リーダーからの指示が飛び、別のビルに潜伏していた清志が階段の踊り場から飛び出す。同じ様に待機していた突入班の面々が清志の後に続く。
風の流れを魔術で操った清志は、そのままふわりと宙を舞う。向かいにあったビルの3階に窓から突入し、素早く武装した集団を制圧していく。
遅れて窓やドアから突入して来た残りの魔術師が、清志に続いて戦闘を開始する。
瞬く間に武装をしている犯人グループの護衛役達は無力化され、残ったのは2つのグループのリーダーだけ。
片や京都での勢力を著しく失いつつあったヤクザの組長で、60代ぐらいの和服を来た老人だ。
そしてもう1人は、東南アジア系のマフィア。30歳ぐらいの比較的若い浅黒い肌を持つ男だった。
「what happened!?」
「なんじゃ貴様ら!」
「魔導協会の魔術師だ。大人しくして貰おうか」
この場で最も若い清志が、大人2人に向かって警告する。日本語を話せないらしいマフィアの外国人は、英語で何かを喚き散らしている。
何を言っているのか、清志には把握し切れなかったが意味は想像が出来た。恐らくはガキの癖に何だお前は、と言ったありきたりな発言と思われる。
一方でヤクザの組長は、伊達に日本でヤクザなんてやっているだけに理解していた。目の前で大鎌を構えている少年が、一体何者であるのかと言う事を。
ここ京都で大鎌を持つ少年が意味する所は、魔導犯罪者を狩る者の象徴。この地で悪事に手を染める者であれば、絶対に敵対してはならない相手。
「Holy shit!」
「アカン! 無駄や!」
「抵抗は無意味だ」
ヤクザの老人が静止するも虚しく、マフィアの男は懐から拳銃を取り出す。しかし銃口を清志に向ける前に拳銃は切り裂かれ、鋭い掌打が男の顎を捉えた。
一瞬にして意識を刈り取られた男は、ガクリと床に倒れ込んだ。制圧された時点で抵抗を諦めていたヤクザの老人は大人しく確保され、ここに居る全員が逮捕される事となった。
言い逃れの出来ない完璧なタイミングで突入した為、減刑を願ってもまともに通りはしないだろう。
あっさりと事件を解決した清志だったが、やはり満足のいく結果にはならなかった。
「助かったよ清志君、いつもすまないね」
「いえいえ、これも仕事ですから」
「夏休みだと言うのに、相変わらず真面目だね君は」
リーダーの男性と和やかに会話を交わしながら、清志は脳内で先ほどの戦闘を思い返していた。
もしここにアイナが居たならば、ほぼ同時に突入して二手に分かれて制圧開始。今回よりも短い時間で無力化を済ませて、抵抗もさせずに終わっただろう。
マフィアの男が所持していたのは魔導銃であり、アイナに魔力弾を撃ち込まれて終了していた。これが清志1人だと、何もかもが足りていない。
わざわざ魔導銃を切り裂いて、対象の意識を奪う様な行動は必要にならなかった。
2人から1人に戻った事で、かつての自分が如何に非効率的な事をやっていたのか良く分かる。
清志はそんな反省をしつつ、現場を離れて魔導協会京都支部へと向かう。
「安達さん、俺です。今から戻ります」
『あら清志君、早かったわね』
「……まあ、一応は」
魔導協会で清志のオペレーターをしてくれている安藤奈緒子に連絡を入れ、清志は帰還する旨を伝える。
奈緒子から見れば十分スピード解決だったが、清志の理想からは既に遠い。春頃とは大きく変わってしまった自分の思考を自覚しつつ、清志は真夜中の京都を歩いていた。
自分で思っている以上に、アイナの影響を受けているのだと清志は知った。
それがただの友情から来た影響なのか、プロの魔術師としてなのか、それともそれ以上の感情が絡むのか。今の清志には、そこまでの事は良く分かっていなかった。
魔術を用いて作られた違法な薬品の密輸と密売、その容疑者を確保する為に清志は現地へと向かう。
今回起きている事件は、魔術師でない者を魔術師に変えてしまう違法薬物が根源にある。
この手の薬物は魔素に恵まれた土地である程、その効果がより高く発揮出来る。
そして京都は日本でも特に魔術的要因に恵まれた土地だ、どうしてもこう言った代物を引き寄せてしまう。
京都市左京区にある寂れた雑居ビルで、今夜0時に問題の取引が行われる予定だ。清志を始めとした、魔導協会の魔術師達がビルの周囲でマークしている。
「清志君、突入は任せるよ」
「分かりました」
「タイミングが来たら教えるから」
現場で指揮を執っているベテランAランク魔術師が、清志に突入時の一番手を求めた。
この様なやり取りも状況も、清志にとっては慣れたもの。何年も前から続けていた事だ。
それでも今やパートナーがいる状況に慣れてしまったからこそ、清志は不便さを感じている。
アイナが居ればな、と言う思いがどうしても浮かんでしまう。そんな内心を押し隠しながら清志が待機している間も、内部を透視している観測係が取引の様子を監視していた。
中途半端な状況で突入しても、シラを切られてしまう可能性がある。隣に立つビルの屋上から監視を続けていた、20代の女性魔術師から連絡が入る。
『今です!』
「よし! 頼んだぞ」
「行きます!」
リーダーからの指示が飛び、別のビルに潜伏していた清志が階段の踊り場から飛び出す。同じ様に待機していた突入班の面々が清志の後に続く。
風の流れを魔術で操った清志は、そのままふわりと宙を舞う。向かいにあったビルの3階に窓から突入し、素早く武装した集団を制圧していく。
遅れて窓やドアから突入して来た残りの魔術師が、清志に続いて戦闘を開始する。
瞬く間に武装をしている犯人グループの護衛役達は無力化され、残ったのは2つのグループのリーダーだけ。
片や京都での勢力を著しく失いつつあったヤクザの組長で、60代ぐらいの和服を来た老人だ。
そしてもう1人は、東南アジア系のマフィア。30歳ぐらいの比較的若い浅黒い肌を持つ男だった。
「what happened!?」
「なんじゃ貴様ら!」
「魔導協会の魔術師だ。大人しくして貰おうか」
この場で最も若い清志が、大人2人に向かって警告する。日本語を話せないらしいマフィアの外国人は、英語で何かを喚き散らしている。
何を言っているのか、清志には把握し切れなかったが意味は想像が出来た。恐らくはガキの癖に何だお前は、と言ったありきたりな発言と思われる。
一方でヤクザの組長は、伊達に日本でヤクザなんてやっているだけに理解していた。目の前で大鎌を構えている少年が、一体何者であるのかと言う事を。
ここ京都で大鎌を持つ少年が意味する所は、魔導犯罪者を狩る者の象徴。この地で悪事に手を染める者であれば、絶対に敵対してはならない相手。
「Holy shit!」
「アカン! 無駄や!」
「抵抗は無意味だ」
ヤクザの老人が静止するも虚しく、マフィアの男は懐から拳銃を取り出す。しかし銃口を清志に向ける前に拳銃は切り裂かれ、鋭い掌打が男の顎を捉えた。
一瞬にして意識を刈り取られた男は、ガクリと床に倒れ込んだ。制圧された時点で抵抗を諦めていたヤクザの老人は大人しく確保され、ここに居る全員が逮捕される事となった。
言い逃れの出来ない完璧なタイミングで突入した為、減刑を願ってもまともに通りはしないだろう。
あっさりと事件を解決した清志だったが、やはり満足のいく結果にはならなかった。
「助かったよ清志君、いつもすまないね」
「いえいえ、これも仕事ですから」
「夏休みだと言うのに、相変わらず真面目だね君は」
リーダーの男性と和やかに会話を交わしながら、清志は脳内で先ほどの戦闘を思い返していた。
もしここにアイナが居たならば、ほぼ同時に突入して二手に分かれて制圧開始。今回よりも短い時間で無力化を済ませて、抵抗もさせずに終わっただろう。
マフィアの男が所持していたのは魔導銃であり、アイナに魔力弾を撃ち込まれて終了していた。これが清志1人だと、何もかもが足りていない。
わざわざ魔導銃を切り裂いて、対象の意識を奪う様な行動は必要にならなかった。
2人から1人に戻った事で、かつての自分が如何に非効率的な事をやっていたのか良く分かる。
清志はそんな反省をしつつ、現場を離れて魔導協会京都支部へと向かう。
「安達さん、俺です。今から戻ります」
『あら清志君、早かったわね』
「……まあ、一応は」
魔導協会で清志のオペレーターをしてくれている安藤奈緒子に連絡を入れ、清志は帰還する旨を伝える。
奈緒子から見れば十分スピード解決だったが、清志の理想からは既に遠い。春頃とは大きく変わってしまった自分の思考を自覚しつつ、清志は真夜中の京都を歩いていた。
自分で思っている以上に、アイナの影響を受けているのだと清志は知った。
それがただの友情から来た影響なのか、プロの魔術師としてなのか、それともそれ以上の感情が絡むのか。今の清志には、そこまでの事は良く分かっていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる