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第3章
第119話 龍脈の巫女
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富士山の麓には、日本中の龍脈が全て集まる地点がある。以前は幻術を使い隠れ里の様にひっそりと存在していた。
しかし神々と魔術の実在が明かされてからは、近代的な建造物が複数建てられ要所として厳重に管理されている。
科学と魔術を複合した多角的な守りが施され、簡単には侵入出来ない造りとなっている。
天才魔道具師である島田宗一郎の技術も複数用いられ、彼の自宅を遥かに上回る警備体制だ。
四神の概念を利用した東西南北の守りは堅牢そのもの。そしてそれほどの守りを要しているこの地は、遥か昔から龍王の里と呼ばれて来た。
日本で魔術に関係する人間は、里と言えばこの龍王の里を意味する。そんな重要拠点の中を、巫女服を着た美しい少女が歩いていた。
「美月様! 困りますよこんな夜更けに1人で出歩かれては」
「ごめんなさい、ちょっと寝付けなくて」
「軽めの睡眠薬なら用意致します。お部屋にお戻り下さい」
警備隊長の男性が美月様と呼ぶ少女は、まるで人形の様な美しさを誇っていた。
完璧とも言える無駄のない造形に、ガラス玉の様な瞳。真っ白い肌はどこか人間離れしたものを感じさせる。
完成された美のお陰で、造り物の様な印象を与えていた。形の良い唇から紡がれるその声は、鈴の鳴る様な高くて可愛らしいもの。
彼女を構成する全てが、神から選ばれし者と思わせる。この少女の名前は神薙美月、15歳で龍脈の巫女を務めている少女だ。
神薙家は日本国内において神坂家や天皇家に匹敵する長い歴史を持つ家系だ。
「? 気のせいでしょうか?」
「はい? 何がです?」
「今何か、見られていた様な」
「野生動物でも居たのではないですか? ほら、戻りますよ」
彼女が就いている龍脈の巫女とは、神に使える神子とは全く別物だ。巫女としてその身を龍脈に捧げ、共に生きる特別な存在。
管理者でもあり、契約者でもある。命が尽きるその日まで、ただひたすらに龍脈をコントロールし続ける。
普通の人間には、龍脈という魔力の塊なんて制御出来ない。しかもそれが複数ともなると尚更だ。
だがそれを可能とするのが神薙家であり、龍脈の巫女であった。古来より伝わっている儀式を用いて、人の身でありながら龍脈の母となる。
龍王の里の龍王とは、オスの龍ではなくメスの龍を指す。つまりは女帝の里というわけだ。
「そろそろ奉納式ですね。また大勢おもてなししなくては」
「大丈夫ですよ、私達に任せて下さい」
「ですが、陛下や神坂様ともご挨拶をしませんと」
神薙家は特別な家系の1つであり、天照大御神の神子を代々務める天皇家。そして本来は伊邪那美命の神子を担う神坂家を入れて日本3大神子と呼ばれている。
神薙家は巫女であって神に仕えないが、その代わりに龍脈という地球そのものというべき地母神と契約していると同義。
その為この三家は特別な扱いを受けており、日本で最も尊い血筋として昔から高い権力を持っていた。
現在神坂家は苦境に立たされているが、血はまだ途絶えていない。清志が7歳の時に起きたテロとも言うべき襲撃により、たった1人だけが生き残った。
そして神薙家もある意味では清志と同じ立場にある。何故なら神薙家は、中々子供が出来にくいからだ。
「式典については我々が考えておりますから、美月様は御身を大事になさって下さい」
「はぁ、そうですか」
「そこの君! 美月様にお薬を。寝付けないそうだ」
美月を自室まで送り届けた警備隊長の男は、世話係の若い女性に指示を出す。
別の世話係の年配の女性が美月を室内へと案内し、広い和室に敷かれた布団まで連れていく。
彼女が暮す屋敷は京都御所とほぼ同様の造りになっている。同じ人物が設計したと言われているので、似るのは当然だろう。
後付けで外側を囲う様に建てられた、数々の現代建築は全て効率重視となっている。日本風の建物を、要塞の中に放り込んだかの様なシュールさがあった。
どうしても要所であるが故に、この様な状態にするしか無かった。儀式を行う為に屋敷は必要で、かと言って守りを疎かには出来ず。外観については妥協された。
「美月様、お薬をお持ちしました」
「ありがとう」
「さあ美月様、改めてお休み下さいな」
子供が出来にくい神薙家の1人娘であり、現龍脈の巫女である美月は非常に手厚いサポートがされている。
彼女の代わりはおらず、母親は既に他界済みだ。子を産めば母は命を落とし、その魂は龍脈へと還るのだ。
過酷な血脈であり、日本に必須な存在でもある。地球という地母神に選ばれし特別な命なのだ。
それ故に15歳という若さであっても、こうして様々な世話役や護衛役が配置されている。薬を飲んだ美月は、徐々に効果が出始めたのか眠りにつく。
奉納式で清志と再会する事を夢みながら、龍脈の巫女の意識は途絶えて行った。
肝心の奉納式は順調に準備が進められており、このままであれば予定通り行われるであろう。
だがそんな表舞台の裏側では、怪しい者達の暗躍があった。まだその事に気付いている者はそう多くはなかった。
しかし神々と魔術の実在が明かされてからは、近代的な建造物が複数建てられ要所として厳重に管理されている。
科学と魔術を複合した多角的な守りが施され、簡単には侵入出来ない造りとなっている。
天才魔道具師である島田宗一郎の技術も複数用いられ、彼の自宅を遥かに上回る警備体制だ。
四神の概念を利用した東西南北の守りは堅牢そのもの。そしてそれほどの守りを要しているこの地は、遥か昔から龍王の里と呼ばれて来た。
日本で魔術に関係する人間は、里と言えばこの龍王の里を意味する。そんな重要拠点の中を、巫女服を着た美しい少女が歩いていた。
「美月様! 困りますよこんな夜更けに1人で出歩かれては」
「ごめんなさい、ちょっと寝付けなくて」
「軽めの睡眠薬なら用意致します。お部屋にお戻り下さい」
警備隊長の男性が美月様と呼ぶ少女は、まるで人形の様な美しさを誇っていた。
完璧とも言える無駄のない造形に、ガラス玉の様な瞳。真っ白い肌はどこか人間離れしたものを感じさせる。
完成された美のお陰で、造り物の様な印象を与えていた。形の良い唇から紡がれるその声は、鈴の鳴る様な高くて可愛らしいもの。
彼女を構成する全てが、神から選ばれし者と思わせる。この少女の名前は神薙美月、15歳で龍脈の巫女を務めている少女だ。
神薙家は日本国内において神坂家や天皇家に匹敵する長い歴史を持つ家系だ。
「? 気のせいでしょうか?」
「はい? 何がです?」
「今何か、見られていた様な」
「野生動物でも居たのではないですか? ほら、戻りますよ」
彼女が就いている龍脈の巫女とは、神に使える神子とは全く別物だ。巫女としてその身を龍脈に捧げ、共に生きる特別な存在。
管理者でもあり、契約者でもある。命が尽きるその日まで、ただひたすらに龍脈をコントロールし続ける。
普通の人間には、龍脈という魔力の塊なんて制御出来ない。しかもそれが複数ともなると尚更だ。
だがそれを可能とするのが神薙家であり、龍脈の巫女であった。古来より伝わっている儀式を用いて、人の身でありながら龍脈の母となる。
龍王の里の龍王とは、オスの龍ではなくメスの龍を指す。つまりは女帝の里というわけだ。
「そろそろ奉納式ですね。また大勢おもてなししなくては」
「大丈夫ですよ、私達に任せて下さい」
「ですが、陛下や神坂様ともご挨拶をしませんと」
神薙家は特別な家系の1つであり、天照大御神の神子を代々務める天皇家。そして本来は伊邪那美命の神子を担う神坂家を入れて日本3大神子と呼ばれている。
神薙家は巫女であって神に仕えないが、その代わりに龍脈という地球そのものというべき地母神と契約していると同義。
その為この三家は特別な扱いを受けており、日本で最も尊い血筋として昔から高い権力を持っていた。
現在神坂家は苦境に立たされているが、血はまだ途絶えていない。清志が7歳の時に起きたテロとも言うべき襲撃により、たった1人だけが生き残った。
そして神薙家もある意味では清志と同じ立場にある。何故なら神薙家は、中々子供が出来にくいからだ。
「式典については我々が考えておりますから、美月様は御身を大事になさって下さい」
「はぁ、そうですか」
「そこの君! 美月様にお薬を。寝付けないそうだ」
美月を自室まで送り届けた警備隊長の男は、世話係の若い女性に指示を出す。
別の世話係の年配の女性が美月を室内へと案内し、広い和室に敷かれた布団まで連れていく。
彼女が暮す屋敷は京都御所とほぼ同様の造りになっている。同じ人物が設計したと言われているので、似るのは当然だろう。
後付けで外側を囲う様に建てられた、数々の現代建築は全て効率重視となっている。日本風の建物を、要塞の中に放り込んだかの様なシュールさがあった。
どうしても要所であるが故に、この様な状態にするしか無かった。儀式を行う為に屋敷は必要で、かと言って守りを疎かには出来ず。外観については妥協された。
「美月様、お薬をお持ちしました」
「ありがとう」
「さあ美月様、改めてお休み下さいな」
子供が出来にくい神薙家の1人娘であり、現龍脈の巫女である美月は非常に手厚いサポートがされている。
彼女の代わりはおらず、母親は既に他界済みだ。子を産めば母は命を落とし、その魂は龍脈へと還るのだ。
過酷な血脈であり、日本に必須な存在でもある。地球という地母神に選ばれし特別な命なのだ。
それ故に15歳という若さであっても、こうして様々な世話役や護衛役が配置されている。薬を飲んだ美月は、徐々に効果が出始めたのか眠りにつく。
奉納式で清志と再会する事を夢みながら、龍脈の巫女の意識は途絶えて行った。
肝心の奉納式は順調に準備が進められており、このままであれば予定通り行われるであろう。
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