王国最強の暗殺者《アサシン》は時を駆け抜ける

ユー@焼き

文字の大きさ
12 / 12
第1章 王国最強の暗殺者

第12話 三年生の苦手な先輩

しおりを挟む
 月曜日。

 授業とその後の掃除は、いつもと特に変わらず終了した。

 ここでいつもなら四人で買い物に行ったりするが、今日は違っていた。

 何故なら僕とジーク、それにリムネは異能選手権に向けた集会に参加しなければならないからだ。そして今、僕たち三人は一年生に混じって、学校代表の先輩の異能選手権に対する意気込みを聞いている。

 フィアも恐らく、組織としての任務に奔走していることだろう。僕は新人だし、まだフィアとシレズ先輩、ボス以外には知り合いがいないし、仕事が回されることもほとんどない。

「あー、話なげぇなー」

 隣でジークがつまらなそうに本音を零している。

「ジークうるさい」

 ジークの右隣に座っていたリムネが一喝した。

「なんだよー。だってそうだろ?おんなじような話をくどくどくどくど面倒この上ないだろ?」
「みんな思ってるけど、言わないでちゃんと聞いてるのよ。一人がそんなこと言ったらみんなのモチベーションが下がるでしょ。そんなこともわからないの?」
「リムネはやっぱりうっせぇなぁ……」

 あくまで、先輩たちに配慮しているのか、二人の声は小さめだ。

 多分普段のボリュームで口喧嘩していたら、体育館から追い出されることは間違いないので、今は先輩の言葉が終わるのをじっと待つしかない。

 やがて、先輩の声が止み、各部門に出場する人どうしが集まる場所を指定する声が事務的に伝えられた。

 僕は補助系異能の人たちのところへ行かないといけないのか。

「よーし、それじゃあ行きましょ。私たちは三人とも部門が違うからここで一旦分かれなきゃいけないわけね」
「よっしゃ!燃えてきたなぁ!」
「そうだね」

 そうして僕たちは、それぞれの集合場所に歩を進めた。


 ●●●



 補助系異能を持つ生徒たち、つまり僕のことだが、北校舎の三階にある第十四会議室に最集合していた。

 見る限り、一年生六人、二年生十人、三年生十四人いる。シレズ先輩も二年生に混ざって雑談をしている。

 三年生のうちの一人が他二十九人の前に出た。リーダーのようだ。

「私はクリスファード・ランプ。ここにいる三十人の一応のリーダーとして着任しました。よろしく」

 ランプ先輩は、銀の長髪と同色の瞳を持つ、意志の強そうな女性だった。実力もありそうだ。

「まず、補助系異能と称される異能力は、戦闘系の異能力に比べて、戦略を立てることが大切となります。これは、各々が自分で考えること。ここでは、そういった部分ではなく、個人としての肉薄戦の闘い方を学んでもらうつもりです。基本的に三年は下級生に教え、下級生は先輩方から学んでください。とはいっても、普段から鍛えている学生ならば全く違うことはやらないと思います。ですが、今日は初日です。今日に限り、同じ系統の異能を持つ先輩方から戦術の考え方などを学ぶ時間とします。では、どうぞ」

 どうぞっていったって……。

 後輩組は萎縮して先輩に突撃することなんてできない。

「じゃあ、回復系の異能を持ってる人はこっち!」

 一人の三年生が声を張り上げた。この状況がまずいと理解しるが故に、有難い。

「こっちは相手を状態異常にする異能の人!」

 右手を天井に向けた他の三年生に、ぞろぞろと集まって行く。

 補助系でメジャーなのは、対象を痺れさせたり、眠りにつかせたりする状態異常効果を付与するものだ。その証拠に一年生の四人もそちらに歩き始めた。

 僕のような概念操作や、シレズ先輩のような空間移動はかなり希少価値の高い異能で、第三級の危険異能に指定されている。第三級は、特に普段の生活に制限があるわけではないが、犯罪を働いた際、すぐさま防衛軍が捕まえにくる。

 謂わば、犯罪予備軍のような扱いを受けるのだ。

 例えば、瞬間転移テレポートなんかは、窃盗をしようと思えば回数の制限があるとはいえ、使い勝手がいい。だから犯罪を起こしやすい、という先入観が確実にある。

 まぁ、犯罪をしなければいいだけの話ではあるが。

 それに実際、シレズ先輩のような例もある。防衛圏内でなければ、犯罪者情報として防衛軍のリストに乗る確率はかなり低下する。

 たから、夜明けのDaeg使者manでは、特例でもない限り、シレズ先輩は防衛圏外の任務しかされないらしい。

「じゃ、こっちそれ以外の人」

 のんびりとした口調で、ランプ先輩が募集をかける。

 僕はそこに向かって歩き始めようとしたのだが、

「一年!早く!」

 と急かされ、ランプ先輩の元へダッシュすることになった。

「うっわー、クリアくん怒られてる~」

 そこには勿論シレズ先輩もいる。そしてむかつく表情でからかってきた。

 殴りたい気持ちはやまやまだが、先輩にいきなり殴りかかるなんて常識のない行動はしない。できるだけ目立つのは避けるべきだ。

 怒られて目立ったのはしょうがないとして……。

「やる気はあるのか?」

 ランプ先輩はもう不機嫌オーラを発しまくっている。どうやら、僕がこの状態を招いたらしい。

「あります」

 僕はできる全力の真面目な声で答えた。

 本音を言うなら、正直ない。ジークには選ばれたらいい、なんて思ってもいないことを口にしたが、僕は防衛軍に入りたいわけでも、優秀な成績を収めたいわけでもない。

 強いて言うなら、確かに安定で給料の高い職場がいいのだが、夜明けのDaeg使者manなんて組織で活動している身分で、そんなこと言っていられない。

 それにしても、このランプ先輩は熱い分かなり気が短いようで、僕の苦手なタイプだ。

 そういえば、シレズ先輩にも初対面ではそう感じていたっけ、と昨日の訓練を思い出して、思わず笑みが溢れた。

「何を笑っている!」

 そしてそれを咎めるようにランプ先輩がまた叫んだのを見て、やってしまった、と顔を強張らせるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...