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第1章 守護神石の導き
第9話 守護神石の秘める力(2)
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昼前になると、三人は森林の中へと進路を進めていった。森林の中には獣やゴブリンが移動した跡と思われる道ができていたので、三人はそれに沿って歩いた。
「それにしても早くソニアちゃんの魔法を見てみたいもんだな」
湿った落ち葉を踏みしめ歩きながら、ライアンが声を上ずらせる。
するとティムが思い出したように言った。
「ああ、そうだね。まだライアンは見てないのか」
ソニアも言う。
「魔法はまだ一度も見たことがないんでしたね」
「ないな」
「二人が魔法を使えないことには、私驚きましたよ」
「何で?普通使えないさ。俺たちはソニアみたいに修道院に行ってた訳じゃないしね」
「でも二人は守護神石を持っているじゃないですか」
「うん、それがどうかしたの?」
するとソニアは目をぱちぱちとさせた。
「そうでしたね。二人は守護神石のことをあまり知らないんでしたね」
ティムとライアンは不思議そうに顔を見合わせた。
その時だった。三人の前方の木陰から四体のゴブリンが勢い良く飛び出してきた。すぐに三人の存在に気付き、手に持った斧や剣を振りかざして襲ってくる。
「よっしゃあ。かかってこいよ!」
ライアンが剣を抜き、構えた。
「ソニアは後方から援護をよろしく」と、ティム。
「はい、分かりました」
ソニアは両手を交差させて構えた。
「おお、これは早速魔法を拝見できるチャンス到来!」
ライアンが目を輝かせる。
まず二体のゴブリンが先頭にいたライアンに襲いかかる。残りの二体はティムに向かった。
「どりゃあぁ!」
ライアンの重い一振りはゴブリンを二体とも捕らえ、二体とも地面にぐしゃりと崩れ落ちた。
ティムも向かってきた残り二体を返り討ちにするべく踏み込んだ。しかしその内一体には攻撃が当たったものの、残り一体は直前で方向を変えたので捕らえることはできなかった。その一体は後ろにいるソニアへと向かう。
「ごめん、ソニア!」
ティムは振り向きざまに叫んだ。
ゴブリンは唾液を撒き散らしながら、ソニアに突進していっている。ソニアは腰に携えていたレイピアを抜いた。
ゴブリンは持っている剣を思い切り振りかぶり、ソニア目がけて振り下ろした。しかしソニアはひらりと身を交わしてそれを避けると、逆手に持ったレイピアをゴブリンの背中に突き刺した。ゴブリンは気味の悪い鳴き声を上げて痙攣したかと思うと、ぐったりと動かなくなった。ソニアは刺さっているレイピアを掴み、細い腕に精一杯の力を込めて抜いた。
ライアンが前方から叫ぶ。
「ソニアちゃんっ!怪我は無いか!」
「はい、大丈夫です!」
ソニアは剣を振り腰に戻すと、二人のいる方へ駆け寄ってきた。
「ソニア、剣も扱えるのか」
ティムは自らも剣を腰に戻しながら、目を丸くして言った。
「護身程度です。でもこのレベルの魔族一体くらいなら、魔法を使うまでもないですよ」
「何だ、せっかくソニアちゃんの魔法が見られるかと思ったのによー」
ライアンがお茶目に唇を尖らせてみせる。
ソニアは苦笑した。
「ごめんなさい。でも魔法は体力を消耗してしまうので、多用すると大変なんです。お腹も空いちゃいますし」
「なるほどね。そんなにたくさんできるものでもない訳か」
「そうです。でも近々お見せする時は来るはずですよ」
こうして三人は再び森の中を歩き始めた。
少し歩いてからティムは尋ねた。
「さっきの話の続きなんだけど、俺たちが知らないことって何?」
ソニアは「あ、そうでしたね」と言い、続けた。
「ティムとライアンは守護神石を持っているでしょう」
「ああ」
「守護神石を持っていれば魔法を使えるんですよ」
「何だって」
ティムとライアンは息を呑んだ。
ライアンがもごもごと口を開く。
「じゃあ何だ。今俺が魔法を使おうと念じれば、火やら水やら何でも出るってことかよ?」
「いえ、すぐにできるという訳ではありません。やはり訓練しないとできません」
ティムが聞く。
「それなら守護神石が無い状態と一緒じゃないの?」
「そういう訳でもありません。守護神石が無い状態で魔法を習得するには、長い月日がかかるんです。でも守護神石がある状態なら、早ければ数週間で自由に魔法を使えるようになります」
「そいつはすげえ!」
ライアンは目を輝かせた。
「でも守護神石を使って魔法を習得した場合、デメリットもあります」
ソニアは人差し指を立てた。
「守護神石を使って魔法を習得した場合は、守護神石を持っていない状態では全く魔法は使えません」
「何だよ、がっかりだ」
ライアンは唇を尖らせた。
「俺のルビーはヘーゼルガルドでティムに渡しちまうから、結局俺には魔法は使えねえってことか」
しかしライアンは魔法を使えるようになることよりも、ティムの大志に貢献することの方がもっと大事なことに思えた。
そう。魔法なんて使わなくても俺には剣がある。何よりティムとエルゼリアの為だ。これでいいのさ。
そうライアンが思っていた矢先に、ティムの高笑いが轟いた。
「あははは!残念だったなあライアン!俺だけ魔法使いにならせてもらうぜ」
ライアンの顔はみるみる内に真っ赤に燃え上がる。
「てめえ・・・俺の思いも知らねえで・・・!誰の為だと思っていやがる!」
「またケンカですか・・・」
ソニアの溜息がその場に響いた。
「それにしても早くソニアちゃんの魔法を見てみたいもんだな」
湿った落ち葉を踏みしめ歩きながら、ライアンが声を上ずらせる。
するとティムが思い出したように言った。
「ああ、そうだね。まだライアンは見てないのか」
ソニアも言う。
「魔法はまだ一度も見たことがないんでしたね」
「ないな」
「二人が魔法を使えないことには、私驚きましたよ」
「何で?普通使えないさ。俺たちはソニアみたいに修道院に行ってた訳じゃないしね」
「でも二人は守護神石を持っているじゃないですか」
「うん、それがどうかしたの?」
するとソニアは目をぱちぱちとさせた。
「そうでしたね。二人は守護神石のことをあまり知らないんでしたね」
ティムとライアンは不思議そうに顔を見合わせた。
その時だった。三人の前方の木陰から四体のゴブリンが勢い良く飛び出してきた。すぐに三人の存在に気付き、手に持った斧や剣を振りかざして襲ってくる。
「よっしゃあ。かかってこいよ!」
ライアンが剣を抜き、構えた。
「ソニアは後方から援護をよろしく」と、ティム。
「はい、分かりました」
ソニアは両手を交差させて構えた。
「おお、これは早速魔法を拝見できるチャンス到来!」
ライアンが目を輝かせる。
まず二体のゴブリンが先頭にいたライアンに襲いかかる。残りの二体はティムに向かった。
「どりゃあぁ!」
ライアンの重い一振りはゴブリンを二体とも捕らえ、二体とも地面にぐしゃりと崩れ落ちた。
ティムも向かってきた残り二体を返り討ちにするべく踏み込んだ。しかしその内一体には攻撃が当たったものの、残り一体は直前で方向を変えたので捕らえることはできなかった。その一体は後ろにいるソニアへと向かう。
「ごめん、ソニア!」
ティムは振り向きざまに叫んだ。
ゴブリンは唾液を撒き散らしながら、ソニアに突進していっている。ソニアは腰に携えていたレイピアを抜いた。
ゴブリンは持っている剣を思い切り振りかぶり、ソニア目がけて振り下ろした。しかしソニアはひらりと身を交わしてそれを避けると、逆手に持ったレイピアをゴブリンの背中に突き刺した。ゴブリンは気味の悪い鳴き声を上げて痙攣したかと思うと、ぐったりと動かなくなった。ソニアは刺さっているレイピアを掴み、細い腕に精一杯の力を込めて抜いた。
ライアンが前方から叫ぶ。
「ソニアちゃんっ!怪我は無いか!」
「はい、大丈夫です!」
ソニアは剣を振り腰に戻すと、二人のいる方へ駆け寄ってきた。
「ソニア、剣も扱えるのか」
ティムは自らも剣を腰に戻しながら、目を丸くして言った。
「護身程度です。でもこのレベルの魔族一体くらいなら、魔法を使うまでもないですよ」
「何だ、せっかくソニアちゃんの魔法が見られるかと思ったのによー」
ライアンがお茶目に唇を尖らせてみせる。
ソニアは苦笑した。
「ごめんなさい。でも魔法は体力を消耗してしまうので、多用すると大変なんです。お腹も空いちゃいますし」
「なるほどね。そんなにたくさんできるものでもない訳か」
「そうです。でも近々お見せする時は来るはずですよ」
こうして三人は再び森の中を歩き始めた。
少し歩いてからティムは尋ねた。
「さっきの話の続きなんだけど、俺たちが知らないことって何?」
ソニアは「あ、そうでしたね」と言い、続けた。
「ティムとライアンは守護神石を持っているでしょう」
「ああ」
「守護神石を持っていれば魔法を使えるんですよ」
「何だって」
ティムとライアンは息を呑んだ。
ライアンがもごもごと口を開く。
「じゃあ何だ。今俺が魔法を使おうと念じれば、火やら水やら何でも出るってことかよ?」
「いえ、すぐにできるという訳ではありません。やはり訓練しないとできません」
ティムが聞く。
「それなら守護神石が無い状態と一緒じゃないの?」
「そういう訳でもありません。守護神石が無い状態で魔法を習得するには、長い月日がかかるんです。でも守護神石がある状態なら、早ければ数週間で自由に魔法を使えるようになります」
「そいつはすげえ!」
ライアンは目を輝かせた。
「でも守護神石を使って魔法を習得した場合、デメリットもあります」
ソニアは人差し指を立てた。
「守護神石を使って魔法を習得した場合は、守護神石を持っていない状態では全く魔法は使えません」
「何だよ、がっかりだ」
ライアンは唇を尖らせた。
「俺のルビーはヘーゼルガルドでティムに渡しちまうから、結局俺には魔法は使えねえってことか」
しかしライアンは魔法を使えるようになることよりも、ティムの大志に貢献することの方がもっと大事なことに思えた。
そう。魔法なんて使わなくても俺には剣がある。何よりティムとエルゼリアの為だ。これでいいのさ。
そうライアンが思っていた矢先に、ティムの高笑いが轟いた。
「あははは!残念だったなあライアン!俺だけ魔法使いにならせてもらうぜ」
ライアンの顔はみるみる内に真っ赤に燃え上がる。
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