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第1章 守護神石の導き
第9話 守護神石の秘める力(3)
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その日、前半は高原を、後半は荒野を歩き続けた。その後も何体かゴブリンと出くわしたが、それ程手を煩わせずに駆逐した。ソニアの魔法を見たいが為にライアンがわざと戦おうとせず突っ立っていた時には、ティムがライアンの尻を思い切り蹴飛ばした。
日が暮れてきたので、荒野の中にあった岩場近辺で三人は休むことにした。夕食には、ライムギのグリュエル(薄い粥)にエンドウマメを煮たものを作った。辺りもすっかり暗くなると、三人は鍋を囲んでグリュエルをすすり始めた。
「守護神石にそんな能力があったとはなあ」
ライアンが呟いた。
「本当にね」
器によそったグリュエルを息で冷ましながら、ティムが頷いた。
「他にはどんな能力があるのかな?」
「後はそうですね。守護神石を持っていると戦闘能力が上がります」
「そうなの?」
「そうですよ」
ライアンは頭を掻きむしりながら言った。
「マジかよ!そういう大事なことをもっと早めに教えてくれよな」
「ごめんなさい。てっきりもう知ってるものかと思って」
「いや、俺たち何も知らないからなあ」
ティムが鼻の下を掻きながら言った。
「じゃあもう一つ質問だけど、守護神石によって能力に違いはあるの?」
「はい、あります。まず司る神が違うので属性がそれぞれ違います。例えば私の持ってるアクアマリンには海の神が宿ってるから、属性は水です。ティムのサファイアには風の神が宿ってるから、属性は風。ライアンのルビーには火の神が宿ってるので、属性は火です」
「属性が違うとどうなるんだ?」と、ライアン。
ソニアは空の器にグリュエルをよそぎながら答えた。
「属性によって使える魔法が違います。例えばもしティムがサファイアの力を借りて魔法を習得したとしたら、使える魔法は風に関するものだけになるんです」
今度はティムが聞いた。
「じゃあソニアは水の魔法しか使えないの?」
「いえ、私はアクアマリンを手に入れる前から魔法を使うことができたので、それ以外の魔法も使えますよ。でもアクアマリンを持つことで水の魔法の力が強化され、比較的体力消費も軽減されるから、水の魔法以外の魔法を使うことはあまりないですけど」
「へえー」
更にソニアは続けた。
「後、守護神石によって強化される能力に違いがあります。強化される能力は全部で三つあるんです。物理的な攻撃力と防御力、それと魔法能力です。魔法能力は、魔法の攻撃力と防御力、どちらも含みます。私の持ってるアクアマリンの場合だと、物理攻撃力と防御力の上昇は低めですが、魔法能力の上昇は高いですね」
ティムがもう一度聞いた。
「じゃあさ。サファイアとルビーは?」
「サファイアはどの能力もほぼ均等に上昇しますね。ルビーは確か、攻撃力がよく強化される石のはずです」
「ははあ。ということは、俺たち知らないうちに強くなってたって訳か」
ティムは唸った。
「いえ、違います。持っているだけでは変化はありません。まずは石と心を共鳴させることができないとだめです」
「共鳴?」
ティムが目をぱちくりさせる。
「はい。石に宿る神と心を一つにすることです。ちなみに魔法もこの共鳴ができないと使えません」
ライアンは咀嚼しながら、神妙な面持ちでしばらく考えてから言った。
「じゃあつまりだ。もし俺が共鳴できるようになったとしよう。その場合、こいつを手放したら俺は弱くなっちまうってことなのか?」
「まあ・・・」と、ソニアは目をくりくりと動かした。
「相対的には、そういうことになりますね」
「むう。何か損した気分」
するとティムがげっぷ混じりに言う。
「じゃあルビーはお前がずっと持ってれば?もし他の石が全部揃ったら、渡してくれればいいよ」
「いや、別にいい」
ライアンが手で制す。
「結局いつか俺はこれを手放すんだから、それが今でも先でも変わりゃしねえ」
「ああ、そう?」と、ティムはグリュエルを口に掻き込む。
「ま、俺は今のままで十分強えしな。石でインチキする必要はねえ」
ライアンは誇らしげに鼻から息を吐いてみせた。
グリュエルの入った器を一旦置くと、ティムはソニアの方を見た。
「という訳だから、ソニア。食べ終わったら、俺たちに魔法の使い方を教えてよ」
ソニアは頷いた。
「分かりました。でも私は厳しいですよ。覚悟はいいですか?」
「あっ。じゃあやめます」
間髪を入れずにそう答えると、ティムはまたグリュエルを口に掻き込み出した。
「だよなー。そりゃやめるよなー。って、バカヤロウ」
すかさずライアンはティムの頭を引っぱたいた。
結局ソニアは、ティムとライアンの倍以上の量を食べた。
空になった鍋を見て、ティムは目をぱちくりさせた。
「ソニア、今日は魔法一回も使っていないよね」
ライアンも意地悪な笑みを浮かべて言う。
「ははあ。さてはソニアちゃん、魔法使わなくても大食いだな?」
「あうう・・・」
「あっはっはっは!」
顔を赤らめてうろたえるソニアに、二人は大笑いした。
ソニアは両手を前に広げて、弁解した。
「でも魔法を使うと、お腹が空くのは本当です」
「はいはい、そうですかー」
いかにも信じていないというようにティムがそう言うと、ソニアは小ぶりの頬をぷっくりと膨らませた。
「それは本当です」
するとライアンが言い放った。
「ま、何でもいいけど、ソニアちゃんは大食いだなあ!」
「もうっ!ライアン!」
ソニアが顔を真っ赤にしてライアンを睨むと、二人はまた笑い出した。
「そういう意地悪言うんなら、魔法の使い方教えませんよ!」
ティムが笑い過ぎてひいひい言いながら謝る。
「ごめん、ごめん。もう言わないから、教えてよ、ソニア」
「まったくもう・・・。仕方ないですね」
ライアンが目を細めて頷いた。
「そうだよな、大食いなのは仕方ないな」
「・・・もう絶対教えません!」
そう言い捨てると、ソニアはぷいっと後ろを向く。
「ごめんごめーん、ソニアちゃーん!」
日が暮れてきたので、荒野の中にあった岩場近辺で三人は休むことにした。夕食には、ライムギのグリュエル(薄い粥)にエンドウマメを煮たものを作った。辺りもすっかり暗くなると、三人は鍋を囲んでグリュエルをすすり始めた。
「守護神石にそんな能力があったとはなあ」
ライアンが呟いた。
「本当にね」
器によそったグリュエルを息で冷ましながら、ティムが頷いた。
「他にはどんな能力があるのかな?」
「後はそうですね。守護神石を持っていると戦闘能力が上がります」
「そうなの?」
「そうですよ」
ライアンは頭を掻きむしりながら言った。
「マジかよ!そういう大事なことをもっと早めに教えてくれよな」
「ごめんなさい。てっきりもう知ってるものかと思って」
「いや、俺たち何も知らないからなあ」
ティムが鼻の下を掻きながら言った。
「じゃあもう一つ質問だけど、守護神石によって能力に違いはあるの?」
「はい、あります。まず司る神が違うので属性がそれぞれ違います。例えば私の持ってるアクアマリンには海の神が宿ってるから、属性は水です。ティムのサファイアには風の神が宿ってるから、属性は風。ライアンのルビーには火の神が宿ってるので、属性は火です」
「属性が違うとどうなるんだ?」と、ライアン。
ソニアは空の器にグリュエルをよそぎながら答えた。
「属性によって使える魔法が違います。例えばもしティムがサファイアの力を借りて魔法を習得したとしたら、使える魔法は風に関するものだけになるんです」
今度はティムが聞いた。
「じゃあソニアは水の魔法しか使えないの?」
「いえ、私はアクアマリンを手に入れる前から魔法を使うことができたので、それ以外の魔法も使えますよ。でもアクアマリンを持つことで水の魔法の力が強化され、比較的体力消費も軽減されるから、水の魔法以外の魔法を使うことはあまりないですけど」
「へえー」
更にソニアは続けた。
「後、守護神石によって強化される能力に違いがあります。強化される能力は全部で三つあるんです。物理的な攻撃力と防御力、それと魔法能力です。魔法能力は、魔法の攻撃力と防御力、どちらも含みます。私の持ってるアクアマリンの場合だと、物理攻撃力と防御力の上昇は低めですが、魔法能力の上昇は高いですね」
ティムがもう一度聞いた。
「じゃあさ。サファイアとルビーは?」
「サファイアはどの能力もほぼ均等に上昇しますね。ルビーは確か、攻撃力がよく強化される石のはずです」
「ははあ。ということは、俺たち知らないうちに強くなってたって訳か」
ティムは唸った。
「いえ、違います。持っているだけでは変化はありません。まずは石と心を共鳴させることができないとだめです」
「共鳴?」
ティムが目をぱちくりさせる。
「はい。石に宿る神と心を一つにすることです。ちなみに魔法もこの共鳴ができないと使えません」
ライアンは咀嚼しながら、神妙な面持ちでしばらく考えてから言った。
「じゃあつまりだ。もし俺が共鳴できるようになったとしよう。その場合、こいつを手放したら俺は弱くなっちまうってことなのか?」
「まあ・・・」と、ソニアは目をくりくりと動かした。
「相対的には、そういうことになりますね」
「むう。何か損した気分」
するとティムがげっぷ混じりに言う。
「じゃあルビーはお前がずっと持ってれば?もし他の石が全部揃ったら、渡してくれればいいよ」
「いや、別にいい」
ライアンが手で制す。
「結局いつか俺はこれを手放すんだから、それが今でも先でも変わりゃしねえ」
「ああ、そう?」と、ティムはグリュエルを口に掻き込む。
「ま、俺は今のままで十分強えしな。石でインチキする必要はねえ」
ライアンは誇らしげに鼻から息を吐いてみせた。
グリュエルの入った器を一旦置くと、ティムはソニアの方を見た。
「という訳だから、ソニア。食べ終わったら、俺たちに魔法の使い方を教えてよ」
ソニアは頷いた。
「分かりました。でも私は厳しいですよ。覚悟はいいですか?」
「あっ。じゃあやめます」
間髪を入れずにそう答えると、ティムはまたグリュエルを口に掻き込み出した。
「だよなー。そりゃやめるよなー。って、バカヤロウ」
すかさずライアンはティムの頭を引っぱたいた。
結局ソニアは、ティムとライアンの倍以上の量を食べた。
空になった鍋を見て、ティムは目をぱちくりさせた。
「ソニア、今日は魔法一回も使っていないよね」
ライアンも意地悪な笑みを浮かべて言う。
「ははあ。さてはソニアちゃん、魔法使わなくても大食いだな?」
「あうう・・・」
「あっはっはっは!」
顔を赤らめてうろたえるソニアに、二人は大笑いした。
ソニアは両手を前に広げて、弁解した。
「でも魔法を使うと、お腹が空くのは本当です」
「はいはい、そうですかー」
いかにも信じていないというようにティムがそう言うと、ソニアは小ぶりの頬をぷっくりと膨らませた。
「それは本当です」
するとライアンが言い放った。
「ま、何でもいいけど、ソニアちゃんは大食いだなあ!」
「もうっ!ライアン!」
ソニアが顔を真っ赤にしてライアンを睨むと、二人はまた笑い出した。
「そういう意地悪言うんなら、魔法の使い方教えませんよ!」
ティムが笑い過ぎてひいひい言いながら謝る。
「ごめん、ごめん。もう言わないから、教えてよ、ソニア」
「まったくもう・・・。仕方ないですね」
ライアンが目を細めて頷いた。
「そうだよな、大食いなのは仕方ないな」
「・・・もう絶対教えません!」
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「ごめんごめーん、ソニアちゃーん!」
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