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第1章 守護神石の導き
第9話 守護神石の秘める力(4)
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食事の後片付けが済むと、そのまま焚火を囲んでソニアの魔法の講義が始まった。
「じゃあ、まず守護神石を出して下さい」
ティムとライアンは守護神石を袋から取り出し、手の上に載せた。
ソニアもアクアマリンを取り出す。
「それでは二人とも、自分の石をよく見つめてみて下さい。いいですか。ティムのサファイアは風の神、ライアンのルビーは火の神が宿っています。それを理解した上で、石の魂を感じ取ろうとしてみて下さい」
ティムとライアンは、言われるままにそれぞれの石を凝視した。ソニアも同じようにする。しかししばらく続けていても石は今まで通り美しい輝きを見せるだけで、変わったことは何一つ起こらなかった。
「何も起こらないよ、ソニア」
ティムが痺れを切らして顔を上げた。ライアンも同じだったようで、首を傾げている。
しかしソニアは凛とした表情を保ちながら、大きな瞳で食い入るように手の中のアクアマリンを見つめていた。ソニアの手元に目をやると、アクアマリンからは青白い光が放たれていた。
「ソニア、それ・・・」
ティムは目を丸くしてアクアマリンに見入った。ライアンも口をぽかんと開けている。
ソニアはアクアマリンから目を離さずに言った。
「二人とも、アクアマリンに触ってみて下さい」
ティムとライアンは、言われるままに、アクアマリンに手を差し出した。そっと触ってみると、アクアマリンは熱を帯びていた。まるで一日中太陽の日差しを浴びた後かのように。
「あっ。何か熱い」
ティムが思わず声を漏らす。
「何だあ、こりゃ?何で熱くなってるんだ?」
ライアンも驚きを隠せないようだ。
ソニアはゆっくりと口を開いた。
「これは私とアクアマリンが共鳴し合ってるからです。私の心とアクアマリンの心が通い合ってるんですよ」
続いてソニアはふっと眼を閉じた。同時にアクアマリンから出ている光もすうっと消えていく。
「すげえな、こりゃあ・・・」
ライアンは目の前で起きている現象に舌を巻いているようだった。ティムも目をぱちくりさせていた。
光が完全に消えるとソニアは目を開いた。
「じゃあ、同じようにして下さい」
「いやいや、ソニアちゃん」
ライアンが最早苦笑しながら言った。
「今同じようにやったけどできなかったじゃねえかよ」
「だから、できるようになるまで頑張って下さい」
「これができねえと魔法も使えねえってか?」
「そういうことです」
「簡単に言ってくれっけどよお、そんなこと俺たちにできっこあるかよ。なあ、ティム」
そう言ってライアンがティムに同意を求めようと振り向くと、ティムは既に真剣な眼差しでサファイアをまじまじと見つめていた。その様子を見たライアンはしばらく硬直していたが、結局ぶつくさと愚痴を言いながらもルビーを見つめ始めた。
ソニアは言った。
「いいですか。石と見つめ合い、心をシンクロさせるんです」
そして二人が石とにらめっこを始めてから三十分程経った。
ティムが突然声を上げる。
「あれ、何かちょっと温かくなってきてる気が・・・」
「何だと!」
白けたように石を睨んでいたライアンが目を剥く。
「ティム、本当ですか?」
ソニアも驚いたように瞬きをした。
「う、うん」
「気のせいなんじゃねえのか?」
胡散臭いものを見るような顔付きでサファイアに触ると、ライアンは息を呑んだ。
「た、確かに。ちょっと温けえ・・・」
ソニアも試しに触ってみると、確かにサファイアは温かみを帯び始めていた。
「本当ですね。まだまだ不完全だけどいい感じです。この調子で石がもっと熱くなって光るようになるまで頑張って下さい」
「本当に?やった!」
「なっ・・・何故ティムだけ?」
ライアンが悔しそうに歯を食いしばる。
そんなライアンを見てソニアは言った。
「魔法の習得のスピードには個人差があるんです。ライアンも悔しがっている暇があったら、少しでも早くコツを掴むように頑張って下さいね」
「くっ。ソニアちゃん、厳しいな」
「だから言ったでしょう。私は厳しいですよって」
そうさらりと言ったものの、ライアンの石にまだ何も変化が無いのは当然だということをソニアは分かっていた。そもそも石とのシンクロが完全にできるようになるには、天才でも丸一日は必要と言われているのである。しかしティムは完全ではないものの、この短時間でコツを掴んでしまっていた。完全にシンクロできるようになるまでそれ程時間を要しないだろう。
「じゃあ、まず守護神石を出して下さい」
ティムとライアンは守護神石を袋から取り出し、手の上に載せた。
ソニアもアクアマリンを取り出す。
「それでは二人とも、自分の石をよく見つめてみて下さい。いいですか。ティムのサファイアは風の神、ライアンのルビーは火の神が宿っています。それを理解した上で、石の魂を感じ取ろうとしてみて下さい」
ティムとライアンは、言われるままにそれぞれの石を凝視した。ソニアも同じようにする。しかししばらく続けていても石は今まで通り美しい輝きを見せるだけで、変わったことは何一つ起こらなかった。
「何も起こらないよ、ソニア」
ティムが痺れを切らして顔を上げた。ライアンも同じだったようで、首を傾げている。
しかしソニアは凛とした表情を保ちながら、大きな瞳で食い入るように手の中のアクアマリンを見つめていた。ソニアの手元に目をやると、アクアマリンからは青白い光が放たれていた。
「ソニア、それ・・・」
ティムは目を丸くしてアクアマリンに見入った。ライアンも口をぽかんと開けている。
ソニアはアクアマリンから目を離さずに言った。
「二人とも、アクアマリンに触ってみて下さい」
ティムとライアンは、言われるままに、アクアマリンに手を差し出した。そっと触ってみると、アクアマリンは熱を帯びていた。まるで一日中太陽の日差しを浴びた後かのように。
「あっ。何か熱い」
ティムが思わず声を漏らす。
「何だあ、こりゃ?何で熱くなってるんだ?」
ライアンも驚きを隠せないようだ。
ソニアはゆっくりと口を開いた。
「これは私とアクアマリンが共鳴し合ってるからです。私の心とアクアマリンの心が通い合ってるんですよ」
続いてソニアはふっと眼を閉じた。同時にアクアマリンから出ている光もすうっと消えていく。
「すげえな、こりゃあ・・・」
ライアンは目の前で起きている現象に舌を巻いているようだった。ティムも目をぱちくりさせていた。
光が完全に消えるとソニアは目を開いた。
「じゃあ、同じようにして下さい」
「いやいや、ソニアちゃん」
ライアンが最早苦笑しながら言った。
「今同じようにやったけどできなかったじゃねえかよ」
「だから、できるようになるまで頑張って下さい」
「これができねえと魔法も使えねえってか?」
「そういうことです」
「簡単に言ってくれっけどよお、そんなこと俺たちにできっこあるかよ。なあ、ティム」
そう言ってライアンがティムに同意を求めようと振り向くと、ティムは既に真剣な眼差しでサファイアをまじまじと見つめていた。その様子を見たライアンはしばらく硬直していたが、結局ぶつくさと愚痴を言いながらもルビーを見つめ始めた。
ソニアは言った。
「いいですか。石と見つめ合い、心をシンクロさせるんです」
そして二人が石とにらめっこを始めてから三十分程経った。
ティムが突然声を上げる。
「あれ、何かちょっと温かくなってきてる気が・・・」
「何だと!」
白けたように石を睨んでいたライアンが目を剥く。
「ティム、本当ですか?」
ソニアも驚いたように瞬きをした。
「う、うん」
「気のせいなんじゃねえのか?」
胡散臭いものを見るような顔付きでサファイアに触ると、ライアンは息を呑んだ。
「た、確かに。ちょっと温けえ・・・」
ソニアも試しに触ってみると、確かにサファイアは温かみを帯び始めていた。
「本当ですね。まだまだ不完全だけどいい感じです。この調子で石がもっと熱くなって光るようになるまで頑張って下さい」
「本当に?やった!」
「なっ・・・何故ティムだけ?」
ライアンが悔しそうに歯を食いしばる。
そんなライアンを見てソニアは言った。
「魔法の習得のスピードには個人差があるんです。ライアンも悔しがっている暇があったら、少しでも早くコツを掴むように頑張って下さいね」
「くっ。ソニアちゃん、厳しいな」
「だから言ったでしょう。私は厳しいですよって」
そうさらりと言ったものの、ライアンの石にまだ何も変化が無いのは当然だということをソニアは分かっていた。そもそも石とのシンクロが完全にできるようになるには、天才でも丸一日は必要と言われているのである。しかしティムは完全ではないものの、この短時間でコツを掴んでしまっていた。完全にシンクロできるようになるまでそれ程時間を要しないだろう。
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