19 / 39
第19話
(そういや、キャズと言葉が通じるようになってから話すの、初めてだな……)
幾分和やかになった場の雰囲気に、口を開く。
「キャズはハルトの執事なの?」
「はい、そのようなものでございます。イリヤ様」
「正確には侍従長ね。先々代の御代から仕えさせていただいているのよ」
にこりと笑って答えるキャズの言葉を、メリッサ先生が補足してくれる。
俺は恥ずかしさからまともに見られなかった彼女の顔を恐る恐る見上げてみた。先ほどの一件などなかったかのように、元通りのさっぱりとした笑みを浮かべている。
どさくさの中で「汚物」とか言っていたことはこの際都合よく忘れることにする。
俺が口を開きかけたのを制して、メリッサ先生が謝罪の言葉を述べる。
「驚かせてごめんなさいね。てっきり、陛下の婚約者の姫君だとばかり思っていたの」
「……いえいえ、こちらこそなんかスイマセン」
女だと思われていたことは分かっていたが面と向かって言われると複雑だ。というか、メリッサ先生、体を勝手に触りまくったことは謝らないのね。
「すっかり忘れてたけど、陛下にはまずイルティス語を教えるように言われてたのよね。そういえばあなた、どこの国のご出身?」
(そこ説明してくれてないのかよっ!!)
心の中で叫びながらどうしたものかと頭をフル回転させる。異世界から来たということを、この場で言ってしまっていいのか分からない。
ハルトとリルケはすぐに俺が異世界人だと分かったみたいだったから、説明しなければならない事態は初めてだ。
「み……未開の地、江戸……」
ようやく絞り出した俺の答えに、皆が顔を見合わせる。俺も自分が何言ってんだかよくわかんない。
「……エド? はて、長年生きておりますが存じませんな。西のほうですかな?」
「えっと……あの……えーと……」
正確な位置まで説明させられそうになって答えに窮していると、突然、皆の話している言葉が理解できなくなった。
「◯×△△、××△◯??」
「あ、なんか……魔法、切れちゃったみたいッス……」
同様に皆も俺の言葉が理解できなかったらしく、いち早く事態に気付いたメリッサ先生が顔に手を当てて残念そうな声を上げた。
キャズが何事か言うと、衛兵さんや召使いさんたちはぞろぞろと部屋を退出していく。最後にキャズが俺の手を握り、励ましの言葉らしきことを言ってからパタンと扉を閉めた。
束の間静寂が室内を包む。
「フフフ……××△◯×、イリヤ」
腰に両手を当て、不敵な笑みを浮かべたメリッサ先生が何事か言ったのを皮切りに、めくるめくスパルタ教育が始まったのだった。
幾分和やかになった場の雰囲気に、口を開く。
「キャズはハルトの執事なの?」
「はい、そのようなものでございます。イリヤ様」
「正確には侍従長ね。先々代の御代から仕えさせていただいているのよ」
にこりと笑って答えるキャズの言葉を、メリッサ先生が補足してくれる。
俺は恥ずかしさからまともに見られなかった彼女の顔を恐る恐る見上げてみた。先ほどの一件などなかったかのように、元通りのさっぱりとした笑みを浮かべている。
どさくさの中で「汚物」とか言っていたことはこの際都合よく忘れることにする。
俺が口を開きかけたのを制して、メリッサ先生が謝罪の言葉を述べる。
「驚かせてごめんなさいね。てっきり、陛下の婚約者の姫君だとばかり思っていたの」
「……いえいえ、こちらこそなんかスイマセン」
女だと思われていたことは分かっていたが面と向かって言われると複雑だ。というか、メリッサ先生、体を勝手に触りまくったことは謝らないのね。
「すっかり忘れてたけど、陛下にはまずイルティス語を教えるように言われてたのよね。そういえばあなた、どこの国のご出身?」
(そこ説明してくれてないのかよっ!!)
心の中で叫びながらどうしたものかと頭をフル回転させる。異世界から来たということを、この場で言ってしまっていいのか分からない。
ハルトとリルケはすぐに俺が異世界人だと分かったみたいだったから、説明しなければならない事態は初めてだ。
「み……未開の地、江戸……」
ようやく絞り出した俺の答えに、皆が顔を見合わせる。俺も自分が何言ってんだかよくわかんない。
「……エド? はて、長年生きておりますが存じませんな。西のほうですかな?」
「えっと……あの……えーと……」
正確な位置まで説明させられそうになって答えに窮していると、突然、皆の話している言葉が理解できなくなった。
「◯×△△、××△◯??」
「あ、なんか……魔法、切れちゃったみたいッス……」
同様に皆も俺の言葉が理解できなかったらしく、いち早く事態に気付いたメリッサ先生が顔に手を当てて残念そうな声を上げた。
キャズが何事か言うと、衛兵さんや召使いさんたちはぞろぞろと部屋を退出していく。最後にキャズが俺の手を握り、励ましの言葉らしきことを言ってからパタンと扉を閉めた。
束の間静寂が室内を包む。
「フフフ……××△◯×、イリヤ」
腰に両手を当て、不敵な笑みを浮かべたメリッサ先生が何事か言ったのを皮切りに、めくるめくスパルタ教育が始まったのだった。
あなたにおすすめの小説
腐男子♥異世界転生
よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。
閣下の犬
ネコマ
BL
かつて王都に美貌で名を轟かせながらも、とある事情によってその美貌を損ない、仮面を被って引きこもりがちになった侯爵のルシアン。
そんな彼は六年前、ちょっとしたなりゆきで野犬のような青年イザークを拾い、屋敷に置くことになる。
そしてある夜、ルシアンはそのイザークに迫られることに。
飼い主の手を噛む駄犬ぶりに呆れつつも、彼は一つの条件を出して——
「旦那様はお可愛らしい」
「お優しい、だろうが。駄犬」
これは主従でありながらどこか歪な距離のまま互いを選び続ける二人と、その周囲の人々の日々を描く物語。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜
五十嵐紫
ファンタジー
元・社畜SE、今世は国宝級の赤ん坊!? 最強の父様とお兄様が過保護すぎて、一歩歩くだけで国が揺れちゃいます!
乙女ゲームのモブキャラに転生した俺たち
藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
まさにオープニングムービーで見た景色だ。
ついに始まった「ゲーム本編」の空気に、イチルは気を引き締める。
その隣では貴族子女と懇意になろうとしているフタミと、
何もわからねえと腕を捲るミツハ。
全ては闇の勢力の陰謀だと中二病全開のヨツギ。
「良いか、絶対にゲームのメインキャラクターと関わるなよ!」と
フラグ全開な発言をするイチルに、この乙女ゲーム世界に転生したモブである、
「転生モブ同盟」四人は、イマイチしまらない返事をする。
回避すべき相手は、ヒロインとその攻略対象たち。
平和な未来を掴むため、決してシナリオを変えない、未来を大きく捻じ曲げない。
そのことを護りながら始まった学園生活は、初日から波乱万丈で!?
※題材乙女ゲームですがBLです。ご了承ください。
イラスト:藤掛ヒメノ
天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる(第13章終了しました)
ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
銀の鳥籠
善奈美
BL
■ルイ&アサギ編
サクヤは高校受験の為の二者面談で担任教師から誕生時に進むべき高校が決められていると知らされる。そこは全寮制の超がつくエリート男子魔法学校だった。魔力制御の一つも出来ず、その魔力の為に決められていた事が理由だった。しかし、本来なら初等部から入学が義務付けられる能力があるにも関わらず、高等学校から入学する事を決められた理由を、サクヤは入学してから知ることになる。誕生日を境に煌びやかな人々に囲まれ、サクヤは知らないうちに色々な事情に巻き込まれていく。何より、循環相手として貞操の危機に! 果たして、サクヤは無事命を永らえることが出来るのか?!
■マシロ&アサギ編
ルイとサクヤの息子マシロと、ライカとユエの息子アサギ。中等部に上がりいきなり不思議な噂が持ち上がる。マシロに意中の人が出来たという噂だが、マシロには全く身に覚えのない噂だった。噂の出所を探すうち、アサギの祖先が関わっていると知ることになる。過去にあった忌まわしい事件とは?
■閉鎖したサイト、メクるにて公開していました。小説家になろうでも公開しています。
■ブログ機能で連載をしていた関係で、ルイ&サクヤ編は文字数が少な目です。
■SSについては時系列がバラバラです。