ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき

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兄という人

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 ふと、初顔合わせの日を思い出す。
 あれから一ヶ月。兄とは数回しか会えていない。
 仕事で帰宅時間が不規則な為、こちらへは越して来ないという。だが電車で二駅程のところに住んでいる彼は、たまに美味しいものを持って顔を出してくれた。

 お土産なんてなくてもいいのに。と思いながらも紅茶を淹れ、先日貰った有名店のクッキーを持ってソワソワとソファに座る。お土産はなくても良いが、美味しいものは嬉しいのだった。
 座り心地の良い革張りのソファに、大きなテレビ。リビングだけで十八畳もある。そこだけでも以前母と二人で住んでいたアパートの約二倍。その他に四部屋あるのだから、最初は開いた口が塞がらなかった。今でも落ち着かないけれど。

 午前で大学が終わった優斗ゆうとは、この空間とテレビを満喫するという贅沢に浸る為に、今日も真っ直ぐに帰宅したのだ。

 テレビをつけると、ワイドショーが流れ始める。


『今大人気の若手俳優、橘 直柾たちばな なおまささんの印象を街角で聞いてみました!』


 そんなコーナーが始まり、チャンネルを変えようとして……やはりやめて、ガラスのローテーブルの上の布製コースターの上にそっとリモコンを置いた。


『王子様!』
『かっこいい! 綺麗!』
『さすが元モデルって感じ!』
『神が創った最高傑作だよね!』


 誰もがまず、顔が良い、と興奮気味に答える。
 顔が良い、スタイルが良い、笑顔が綺麗、真面目で穏やかで優しい、諸々。

 ――おっしゃる通りです……。

 心の中で深く頷いた。
 今をときめく人気若手俳優さんは、とにかく顔がいいのです。気を抜いている時でも顔がいいのです。そしていつでも穏やかで、言動も王子様なのです。

 ……と言う優斗は、つい先日まで彼の顔程度しか知らなかった。それが何故こんなに彼の事を知っているかというと……。


「優くん、何見てるの?」
「っ……!?」
「驚かせてごめんね?」

 ソファの背後から覗き込み、驚く優斗を楽しそうに見つめながら穏やかな笑顔で頬をつついてくる。

「突然顔を近付けるのはやめてくださいって何度もっ」
「兄弟なんだから、敬語はやめよう?」
「……………………無理です」

 顔が良すぎて。そう答えると、彼は困ったように笑った。
 そう。この人が、兄だ。優斗は頭を抱える。つい先日兄弟になったばかりのこの人は、実は……。

「あ、俺の出てる番組見てくれてたんだ」

 そう言って嬉しそうに頬を緩めるのは、今大人気の若手俳優、橘 直柾、その人だった。

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