ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき

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一泊二日

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 そして、当日。
 旅行用の荷物を持って駅で待ち合わせ。それだけで優斗ゆうとはワクワクした。

 早すぎたかと思いつつ駅前の待ち合わせ場所に着くと、既に隆晴りゅうせいが来ていた。
 そこで、優斗はピタリと脚を止める。

 ――目立つ……。ものすごく、目立つ……。

 目立ち過ぎて、駅前の人混みの中でもすぐに見つけられた。
 立っているだけで絵になるとは常々思っていた。ただ、こうして客観的に見るとあまりにも目立つ。

 優斗が着るとラフになるだろうブラックのMA-1ジャケットも、隆晴が着ると男らしくハイブランド感が溢れている。
 旅行用サイズのボストンバッグを右肩に掛けているだけで何故か男前度が更に上がっていた。何かの撮影かな? と思ってしまうくらいに。

 ――先輩って、ここまで目立つ人だったかな……?

 思わず陰からこっそりと見守ってしまう。
 その数分の間に華奢で綺麗な女性に声を掛けられ、次はモデルのように美人な女性に、それから女子高生に。

 ――う、うーん……話しかけるタイミングが……。

 代わる代わる声を掛けられ、周り中の視線を独り占めしている中で、声を掛けるタイミングと勇気がない。
 不釣り合いだ何だではなく、平凡な人間にこの視線の中は、ちょっと勇気が。

 隆晴は声を掛けてきた女性たちに何を言ったのか、皆残念そうにしながらも納得した顔で去って行く。

 ふと人が途切れたタイミングで、優斗は大きく深呼吸をして思いきって隆晴の元へと駆け寄った。


「すみません、お待たせしました」
「いや、俺も今来たとこだから」

 そう言って優しく笑う。周囲が小さくざわめき、優斗はピタリと動きを止めた。
 周囲の声に、ではなく。

「それ、デートみたいですね?」
「デートだろ?」
「え、デートじゃ……あれ? そう、なります、ね……?」

 恋人候補ならデートかな、と首を傾げる優斗の手を取り、隆晴は改札へと向かう。
 周りの視線が痛い。雑踏の中から「え? あの人?」とざわつく声がいくつも聞こえた。

 ――どうして俺なのか、俺が一番知りたい……。

 どう考えても、ここまで好かれるような事をした覚えがないのだから。


 改札を抜けホームに着いても手は繋がれたまま。さすがに周囲の視線が気になり、優斗は申し訳なさそうに離して欲しいとお願いした。

「……あの。女の人に声掛けられてましたけど、なんて返したんですか?」
「ん? 今から大切な子とデートなんで、って」
「!?」
「優斗のこと見て、断り文句かって顔されたから手ぇ繋いだ」
「!!?」

 手を引かれたのはそういう事か。驚きの事実に言葉を失くす。
 それに、大切な子、なんて。あの時の真面目な顔でそんな事を。
 じわじわと赤くなる優斗の顔を見つめ、隆晴はそっと目を細めた。

「逆ナンされてんの見て、嫉妬した?」
「え? いえ。先輩がモテるのは知ってますし」
「へぇ? 俺がその中の誰かと連絡先交換するとか思わなかったか?」
「……………………おこがましくも、思いませんでしたね」

 自惚れているのか、旅行に浮かれているのか。隆晴が優斗との待ち合わせ中にそんな事をするとは露程も思わなかった。

「信じてくれてんだな。俺のこと」
「先輩は真面目ですし。……俺のこと、本当に大事にしてくれますし。なので、自惚れました。すみません」

 申し訳なさそうにする優斗に隆晴は驚いた顔をして。すぐに、そっと目元を緩めた。

「ちゃんと伝わってんだな。良かった」
「?」
「俺の気持ち」

 そう言ってあまりに嬉しそうに笑うものだから。
 伝わってます。小さく呟いて、一度離れた手を、今度は躊躇いながらも優斗の方から繋いだ。

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