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10. 模試の結果
二ヶ月後。模試も終わり、そろそろ文化祭や体育祭の話が出始める頃だ。
三年生は受験を控えているものの、高校最後の思い出にと、うちの学校では準備期間一週間という強行スケジュールが組まれる。その間は授業は午前中だけ。学校に泊まり込むのも有りという、よく学びよく遊べを体現したような学校だ。
理央は一年生だから、授業時間は変わらずに、一ヶ月間でじっくりと準備をするはずだ。
少しだけ浮かれた雰囲気の廊下を歩き、目的の場所を目指す。下校する生徒たちと擦れ違いながら辿り着いたのは、一年生の教室が並ぶ廊下だ。
「理央は、まだ来てないか」
一緒に見るのもなんとなく気まずいし、先に見てしまおう。
壁に貼り出された大きな紙へと視線を向け、順位表の一番下、二十位からゆっくりと名前を追っていく。
「十七……十五……」
十位を過ぎると、グンと総合点が上がる。
理央は文系科目が苦手だから、さすがに今回は見送りかな。
「九位、五位……三位、…………三位っ?」
油断しながら名前を追っていた俺は、思わず声を上げた。
『三位 平瀬 理央』
何度見ても、理央の名前だ。
でも、学年で、三位?
まだ二ヶ月しか経っていないのに?
「勉強、苦手なふりしてた……?」
「あの時の点数は、嘘じゃないよ」
「っ、理央……」
突然背後から声がして、ビクッと跳ねた身体を抱き締められた。周囲にはちらほら人がいるけど、今の俺はそれどころじゃない。
「こんな短期間で、どうやって?」
「すごく、頑張った」
「頑張ったにしても……」
「ものすごく勉強したんだ。凰ちゃんの、……凰太朗の恋人として、相応しくなりたいから」
「っ、理央っ……」
耳元でそっと囁かれる。理央の気持ちを知った今、こんな甘い声で名前を呼ばれてはたまらない。
「えっ、理央やばっ」
理央の腕の中から抜け出そうとすると、後ろから知った声がした。理央のクラスメイトの女の子だ。
「あのっ、これはっ……」
「三位ーー!?」
え……あ、抱き締められていることに対する反応かと思ったら、そっちだったのか……。
「坂口センパイ、こんちはーっ」
「うん……こんにちは……」
理央の男友達からは、普段通りの挨拶をされた。二歳しか違わないけど、今の子って、こういうスキンシップは普通?
「理央、三位か~。今回、理系科目厳しかったのに……って、厳しかったからか」
「理央、数学満点だったもんね」
「理系全部な」
「すごい通り越してこわい」
理央が答えると、一気に賑やかになる。
「うちら文系得意だけど、理系で死んだ」
「それはそう。わたし文系ほぼ満点なのに、十三位だったしー」
「それでもすごいよ。学年で十三位なんだから。一年生の理系科目、今回かなり難しかったんだね」
「えっ、凰ちゃん先輩やさし~っ、惚れるっ」
「惚れるな。呼ぶな」
理央は俺を抱き締めたまま、彼女たちの逆方向に身体を移動させる。いや、いくら理央の方が体格がいいからって、軽々と動かされすぎじゃないか?
「独占欲やば。理央君、また一緒に勉強しよーね」
「……ああ」
デレた、と笑い合いながら、彼女たちは帰って行く。……最後まで、俺が抱き締められていることには何も言わないまま。
そこでようやく、理央の腕の中から解放される。代わりに手を繋がれて、廊下の端まで連れて行かれた。
「……あいつら、あれでいて成績いいから。この前のテスト用紙見せたら爆笑されたけど、勉強会しようってなって……」
「そっか。いい友達だな」
「一人とじゃなくて、みんなでの勉強会だから。教室とかファミレスで」
「うん。……うん?」
やけに詳細を教えてくれるな?
「……あ、そっか。大丈夫だよ。友達だって分かってるから、疑ったりしないよ」
浮気を心配しているのかと思ったら、そうだったみたいだ。まだ恋人でもないのに浮気というのもおかしな話だけど。
「勉強の方は、疑ってごめんな。何か理由があって得意なのを隠しているのかと……」
「その方が良かったんだけどね。なんでも出来てかっこいいって思われたかったし」
理央は苦笑したけど、すぐに真剣な顔をして俺を見つめる。
「俺は年上にはなれないけど、凰ちゃんにかっこいいって言って貰える男になるから。だから、年下でも……」
「ちょっと待て。俺は、年上が好きなわけじゃないぞ?」
秀兄ちゃんの時も違和感があった。
思い返してみれば、岡本が理央を怖いと言っていたのも、理央が敵対心を燃やしていたからか?
「でも凰ちゃん、ずっと秀兄ちゃんのこと大人でかっこいいって言ってた。岡本って人も、騒がしいけど、なんか余裕みたいな雰囲気出すし」
「そりゃ秀兄ちゃんは憧れだったから……岡本、余裕みたいな雰囲気あるか……?」
いつも明るくて堂々としているのは間違いない。でも、テスト前にノートを見せて欲しいと言って泣きついてきたり、女子にフラれたから慰めてくれと言って泣きついてきたり……泣いてる姿ばっかり見ている気がするな。
「二人にはそんな感情ないよ。理央相手みたいにドキドキしないし」
まさか年上が好きと思われていたなんて。笑い飛ばしたはずが……余計なことを言った気がする。
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