4 / 23
アイドルのお仕事
しおりを挟むその翌々日、音楽番組の収録があった。今回の新曲は雨の日をテーマにしたもので、本物の雨音がバックで収録されている。
それに合わせて衣装も雨粒を模したビジューが施されていた。スタジオのライトを浴び、動く度にキラキラと光を放つ。ビデオクリップの映像も綺麗で、隼音はとても気に入っていた。
ただ一つ。全体は白が基調になっている。座るだけで汚しそうで、この椅子に座るまでソワソワとしてしまった。今はキリッと顔を決めているけれど。これでもアイドルなので。
「SYUNN君、何かいいことあった?」
司会の男性に尋ねられ、隼音は驚きながらも「分かります?」と答えた。ここで焦ったり否定すると怪しまれる。隣に座る大地も、リーダーも、笑顔のまま表情一つ変えなかった。
新曲を出す度に声を掛けてくれるこの番組の司会者とは、時折ユニットぐるみで飲みに行っている。それだけで隼音の変化を見抜くとは、侮れない。……いや、それだけにやけていたのだろうか。
好きな人からエールを贈られた事と、会う約束が出来た事。……と言う訳にはいかず、直近で起こった出来事を思い出す。意外とある。どれにしようか迷い、決めた。
「お昼のロケ弁が美味しかったです」
「ロケ弁?」
「はい。特にシュウマイが美味しかったです。冷めてもお肉のジューシーさが感じられて。あ、店名覚えました。今度買いに行きますね」
ありがとうございます、とカメラに向かって両手を振る。
「SYUNNは社交辞令じゃなく、本当に行きますからね」
大地が隣で苦笑した。
「ちゃんと変装して行きます」
「SYUNN君、変装してもバレそうだけどねー」
「堂々としてると意外とバレないものですよ」
「そうなの?」
驚く司会者に自信満々に頷いてみせる。どうやら誤魔化せたようだ。
「DAIの方がバレやすいと思います。背も高いですし」
「あー、分かるわー」
そんな和気藹々としたトークが終わり、ステージへと移動する。
この番組の収録は観客を入れずに行われる。手を抜くつもりはないが、やはりカメラに向かって歌うより、ライブの方が好きだと改めて思わされる瞬間だ。
格好良く決まれば歓声が上がる。一緒に歌ってとコールすれば会場いっぱいに歌声が響く。その一体感が、繋がりが、愛しくてたまらない。
ファンの子たちが振る色とりどりのライトの海が、好きだ。曲に合わせて揺れる眩しい光。自分を求め、応援してくれる人たちの光。もう、あの光景を知る前には戻れない。それがとても嬉しくて、幸せで、……少し、怖かった。
3
あなたにおすすめの小説
アイドルですがピュアな恋をしています。~お付き合い始めました~
雪 いつき
BL
人気アイドルユニットに所属する見た目はクールな隼音は、たまたま入った店のパティシエ、花楓に恋をしてしまった。
見た目はクール、中身はフレンドリーな隼音は、持ち前の緩さで距離を縮めていく。
毎週ケーキを買うだけで、話をするだけで、幸せだから……な筈が、紆余曲折あり晴れて恋人同士に!
周りを巻き込みがちな、初恋同士のふたりのピュアでゆるゆるな恋のお話。
―二十歳イケメンアイドル×年上パティシエの、恋人編!―
※こちらからでも読めるかと思いますが、前作は下↓のフリースペースからリンクを繋いでおります。
俺の婚約者は小さな王子さま?!
大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」
そう言い放ったのはこの国の王子さま?!
パミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。
今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。
「年の差12歳なんてありえない!」
初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。
※不定期更新です
彼の想いはちょっと重い
なかあたま
BL
幼少期、心矢に「結婚してほしい」と告げられた優希は「お前が高校生になっても好きな人がいなかったら、考えてやらなくもない」と返事をした。
数年後、高校生になった心矢は優希へ結婚してほしいと申し出る。しかし、約束をすっかり忘れていた優希は二ヶ月だけ猶予をくれ、と告げる。
健全BL
年下×年上
表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/140379292様からお借りしました。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
まさか「好き」とは思うまい
和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。
オレに触らないでくれ
mahiro
BL
見た目は可愛くて綺麗なのに動作が男っぽい、宮永煌成(みやなが こうせい)という男に一目惚れした。
見た目に反して声は低いし、細い手足なのかと思いきや筋肉がしっかりとついていた。
宮永の側には幼なじみだという宗方大雅(むなかた たいが)という男が常におり、第三者が近寄りがたい雰囲気が漂っていた。
高校に入学して環境が変わってもそれは変わらなくて。
『漫画みたいな恋がしたい!』という執筆中の作品の登場人物目線のお話です。所々リンクするところが出てくると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる