アイドルですがピュアな恋をしています。

雪 いつき

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撮影現場

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「SYUNN君、痩せたね」
「はい。頑張りました。このくらいで良さそうですか?」
「バッチリだよ」

 監督は満足そうに笑った。
 今日はドラマの撮影で旧校舎に来ている。今日からクランクインで、いきなり最初の犠牲者が出るシーンから始まった。怯える少女を窓際に追い詰めるシーンだ。

 辺りは暗闇。まだ蝉が鳴く中、ふ……と音が途切れる。――実際にはまだ五月蝿く鳴いているが。
 そんな音すらないかのように、涼しげな顔でスッと少女に手を伸ばす。優しく、静かに、……微笑を浮かべて。





『ねぇ、一緒に……、いこう……?』





「……か、カーット!」

 声が掛かり、張り詰めていた空気が緩む。役に入っていた隼音しゅんも、その声でハッと我に返った。

「ふー。どうでした?」
「怨念込もってそうで良かったよ!」
「本当に呪われるかと思ったよー!」
「ありがとうございま、す……? で、いいんですよね?」
「勿論! 最高だったよ!」

 監督もスタッフも大興奮だ。

「いやー、やっぱり綺麗な顔だと迫力あるねぇ」
「美人の真顔は怖いって言うけど、微笑も怖さが出るねー」
「えー? 顔だけですかー?」

 演技はー? と言わんばかりに拗ねてみせる。すると監督は満足そうに笑った。

「勿論演技も良かったよ! また上手くなったね!」

 演技。……まあ、今更だ。

「ありがとうございます。もっと頑張ります」

 そう言って、まだ座り込んだままの少女役の子の側にしゃがむ。「怖がらせてごめんね」と声を掛け手を差し伸べると、すっかり元気になったその子は嬉しそうに隼音の手を取った。


 ……顔。

 ……顔、は、自慢ではあるけど。

 それは、両親のおかげなわけで。

 いつか、演技力のみで選ばれるようになりたい。自分の手で掴んだのだと、努力が報われたのだと、胸を張って言えるようになりたい。

(……なんて、贅沢な話だよな)

 この顔だから得られたものにも、感謝の気持ちを忘れないようにしなければ。


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