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店長、鷹尾
しおりを挟む花楓から、閉店後に来られる日はないかと連絡が来た。閉店後の店内……とドキドキしてしまったが、ドキドキイベントが発生する確率はゼロだと思い直す。まだ、お友達ですから。
スケジュールを確認し、明後日に決まった。
当日。
休憩室の定位置に座ると、花楓は「隼音君、気にしてたみたいだから」と言って店長を呼びに行った。予想外。ある意味ドキドキイベント発生だった。
「紹介するね。うちの店長です」
(物凄いイケメンが来た……)
花楓の背後から姿を見せたのは、芸能界でも滅多に見ない端正な顔立ちとオーラをした男性。
隼音より短い黒髪に、黒曜石の瞳。身長は大地と同じくらいだろうか。大ほど筋肉質ではないが、しっかりした体躯をしているのがシャツ越しでも分かる。国家元首を守るボディーガードの役とか似合いそう、と想像してしまった。
確かにこの顔を見慣れていれば、隼音の事はちょっと顔の良い可愛い子程度に見えるだろう。
以前花楓が、店長も目立つのが好きじゃないと言っていた。確かにこの風貌だと居るだけで目立つ。SNSで拡散でもされればこの店は一瞬でパンクしそうだ。
「初めまして。隼音と言います。花楓さんと、お付き合いを前提にお友達させていただいています」
椅子から立ち上がり、ペコリと頭を下げる。
「正直だな?」
「はい。隼音君のいいところです」
花楓はにこにこと笑った。
「俺は店長兼、オーナーの鷹尾だ。花楓の兄代わりで、父親代わりでもある」
「実の父は京都に住んでてなかなか会えないから、店長が昔から色々面倒を見てくれてるんだ」
自慢の兄です、と言わんばかりに嬉しそうに笑う。
仲睦まじい姿に嫉妬しないとは言わないが、それよりも、今度は姫と護衛騎士に見えてきた。……お似合いだな、とか思っていませんし。
「君が花楓に心酔している事は以前から知っていた」
「え? そうなんですか?」
「ああ。だが、花楓が楽しそうにしているから、様子を見る事にしたんだが……随分と仲良くなったものだな」
眼光が鋭くなる。この整った顔で凄まれるとかなりの迫力がある。だが隼音は、自分の顔で少しは慣れてて良かったーと胸を撫で下ろした。
様子の変わらない隼音に鷹尾はどこか驚いた顔をしながらも、今度は腕を組み隼音を見下ろした。
「君を裏に入れる許可を出したのも、花楓からどうしてもとお願いされたからだ。……で? 手は出してないだろうな?」
ズイ、と一歩詰め寄る。隼音はピンと背筋を伸ばした。
「手は繋ぎました」
「……他には?」
「頭を撫でてくれました」
「他は?」
「撫でさせてくれました」
キリッと顔を決める。
「…………花楓?」
「隼音君は、本当に俺のことを大事に思ってくれてるんです」
嬉しそうににこにこと笑う。その顔に嘘はない。
おてて繋いでお部屋でおしゃべり。
成人した大の男が。
……本当に、お友達としてのお付き合いだった。鷹尾は深く息を吐く。これ以上追及する気は失せた。
「これだけは言っておく。アイドルだか何だか知らんが、花楓に迷惑を掛けたら出禁にするからな」
「はい! 花楓さんを悲しませるようなことはしません! ……あれ? 俺がアイドルって知ってたんですね?」
「あれだけテレビに出てりゃな」
音楽番組からドラマからCMまで、最近では見ない日がない程だ。知らないのは滅多にテレビを見ない花楓くらいだろう。
花楓を見れば、隼音に申し訳ないやら鷹尾の発言に驚いているやら、くるくる表情を変えていた。
そういえば、と花楓は思い出す。普段聴かないジャンルを聴けと勧めたのも店長だった。もしかして、わざと知らせるために?
「知ったら距離を置くかと思っていたんだがな」
「……ごめんなさい」
「いや、お前が決めたなら、反対はしないさ」
「……はい」
俯いた花楓の頭を、優しく撫でる。
二人にしか分からない事があるのは仕方がないのだが、何やら深い事情がありそうだ。まだそれに触れるのは早い気がして、隼音は違う疑問を選び取った。
「店長さん。男同士だということには、何も言わないんですね」
まずそこで出禁にされるかと思ったのに、今までの会話で一度も触れて来なかった。すると鷹尾は小さく肩を竦める。
「花楓が幸せならそんな細かい事どうでもいいんだよ」
「さっ……さすがですお義父さん……!」
「誰がお前の父だ、コラ」
突然口調が荒くなり、隼音は目を瞬かせた。花楓には苦笑され、鷹尾はコホンと咳払いをする。
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