比較的救いのあるBLゲームの世界に転移してしまった

雪 いつき

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初夜3


 激情が過ぎ、そっと風真ふうまをベッドに下ろす。
 名残惜しげに自身を抜くと、小さく呻いた風真はすぐに目を開けた。

「ぁ……俺、……?」
「数秒だが、気を失っていた」
「え……っ、ごめんっ」
「私こそ、無理をさせてすまなかった」
「ううんっ、その…………初夜、なのに……ごめん」

 もごもごと言って、スッと両手で顔を覆った。
 初夜。風真の口から出ると、尊くも酷く官能的な言葉に聞こえる。アールは気持ちを落ち着けようと風真の髪を撫でた。
 そして自身を覆う薄い膜を外し、散らばる未使用の包みへと視線を向ける。

「……少し休んで、また抱いてもいいか?」
「! う……うん。俺も、したい……」

 今度はちゃんと、アールが満足するまでしたい。アールが達する顔を見たい。もっと、幸せを感じたい。


(……アールと、シたんだよな)

 意識を向けると、まだ入っているような違和感。
 優しく頬を撫でるアールを見ていると、ぼろ、と涙が零れた。

「っ、どうした?」
「ごめ……なんか、アールのものになったんだって思ったら、幸せだなぁって……」

 好きだと気付いて、その人のものになれた。自分を欲しいと言ってくれたアールに、全てをあげられた。
 それが、こんなにも幸せな事だとは想像もしていなかった。

「私も……幸せだ。幸せという言葉だけでは、形容し難い感情だな」

 胸に込み上げる、泣きたいほどの衝動。涙を流す風真を抱きしめ、そっと目を閉じた。


「私の、フウマ……」

 髪を撫で、額にキスをする。

「誰にも渡したくない。一生私のものだと思うと同時に、気付いていなかった欲に気付かされた」

 胸元に抱き寄せ、優しく髪を梳く。

「フウマを奪う者がいれば、奪い返すために、私は……戦争も辞さない」
「!?」
「だが、私も戦争はしたくない。フウマに逃げられないよう、努力する」
「っ……逃げる気ないから、俺は拐われないように気を付けるねっ……」

 あまりの衝撃発言に、涙も止まってしまった。
 もしアールの元を離れるとしたら、誘拐される以外にない。先日、奴隷として売られていたなら、戦争が始まっていたのかもしれない。
 その可能性をアールの口から聞き、自らの命の重さを違う角度から再認識した。

(てか、戦争って……)

 逃げられないようにと言うなら、風真が他の誰かを好きになり、自主的に離れる可能性だ。それを戦争で奪い返すとは、どういう状況。
 考えても風真には分からず、とりあえず誘拐されないように、と気を引き締めた。


(アールが不安になるって、俺の愛情表現が足んないんだよな……)

 アールに愛されている自覚のある自分は、アールが他の人を好きになるなど考えもしない。つまりは、同じくらいに表現出来ていないということだ。
 風真はそう考え、すり、とアールに擦り寄った。

「俺もアールを一生離さないから、覚悟しててよ」
「っ……」
「絶対幸せにしてやるからな」

 好きになって良かったと、一年後も十年後も思わせたい。その約束を込めて、胸元へと紅い痕を付けた。

「…………幸せに、してくれ」
「っ、おおっ、任せてっ」

 てっきり、こちらの台詞だ、と挑戦的な言葉が返るかと思っていた。まさか、甘えた声が返るとは。

(どうしよ……すごい愛しい……)

 時々赤ちゃんになるアールを、ぎゅうっと抱きしめる。
 俺が幸せにしなきゃ。護らなきゃ。その想いが込み上げ、アールの髪をよしよしと撫でた。


「なんか、……えっちしてる時もだけどさ、今も、緊張してるとめちゃくちゃ喋っちゃうよ」
「私もだ。話している方が長くなってしまったな」

 赤ん坊アールはすぐに収まり、ふっと微笑み、風真の髪にキスをする。
 だが、今も、最中も、会話をする余裕があるように見えて、余裕がないからこそ話して緊張を紛らわせていた。
 お互いに同じだったのだと、二人はクスリと笑い合った。


 そこでふと、冷たい風が頬を撫でる。

「ん、窓、開いたままだ」
「ああ。この時間からは第二部隊の騎士たちも配備している。安心してくれ」
「そっか。……って、窓、開いてたんだ……?」
「……開いていたな」

 風真がぎゅっと抱きつく腕に力を込めると、アールも気付く。外に、喘ぎ声が聞こえただろうことに。

「不覚だ。外の気配を感じられた方が、……いや、フウマは私のものだと知らしめようと考えたのだが、奴等にフウマの声を聞かせる事になるとは……」
「それに気付かないくらい、俺に夢中だったんだ?」

 にへっと笑ってアールの顔を見る。

「っ……、……ああ」
「アール、俺のこと好きすぎ」

 嬉しくなって、アールの頬にキスをした。

(聞かれたのはあれだけど、二人きりが駄目なアール、可愛いから許しちゃう)

 ほんの僅かに開いた窓。外に人の気配を感じる限り、アールは無敵なのだろう。
 王太子としての自覚がそうさせる。その自覚を借りなければ行為に及べなかったのかと考えると、ますます愛しくなった。

 男の喘ぎを聞かされてしまった可哀想な兵たちには、後日迷惑料を払おうと風真は考える。
 アールは、口止め料を払おうと考え、窓を閉めるためにベッドから下りた。


 風真はベッドの上から、窓の外を見つめる。

(星が、綺麗だ)

 アールが求婚のために選んだ日。お互いが、お互いのものになった日。
 一生懸命に、愛してくれた。
 こんなに愛しい日は、一生忘れられない。

(好き、だな……)

 胸がきゅうっとなり、少しの間でも離れている体温を、寂しく感じた。

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