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第1章
自分にとっての黒歴史は他人にとっては蜜の味
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〈Daikon〉『元カノ???』
〈Pyonkichi〉『あのくっそ可愛いセシルと付き合ってたとか、これはゼロやんイケメンか!?』
〈Jack〉『わー、それは確かに秘密にしたがるわけだねーーーー』
〈Pyonkichi〉『昔一緒にプレイしたことあるとかそのくらいだと思ってたのに斜め上すぎw』
〈Jack〉『違うプレイだったねーーーーwww』
〈Pyonkichi〉『全くですなwww』
〈Zero〉『おいやめろ』
〈Zero〉『もう何年も前の話だからな?』
〈Pyonkichi〉『いつの話なんだよーw』
〈Zero〉『あー』
完全に狩りをする空気でもなくなってしまった俺たちは、モンスターが徘徊する洞窟の中のセーフティゾーンでただただチャットするだけという不思議な状態になってしまった。
だが下手にはぐらかせて変なことを言われるのも何なので、俺はみんなにセシルとの過去を話すことにした。
と言っても、別れたのは大学3年の春休み前だったから、もう6年以上前の話だ。
俺が彼女と付き合い始めたのは俺たちが大学1年の秋だったから、期間にして2年ちょいってとこか。
東北出身の俺は都会に憧れて大学は都内の教育学部のある大学を選んだわけだが、同じ大学の文学部に在籍していたのがセシルこと、武田亜衣菜だった。
俺と彼女の出会いはバイト先。大学1年の5月頃に某ファミレスでバイトを始めた俺に続いて、亜衣菜がバイト先に入ってきた。
正直一目見た時から可愛いなとは思ってたし、俺のバイト先は俺が住んでたアパートから近く、大学とは少し離れていたため、同じ大学の学生がいなかったことから、自然と俺たちが仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
亜衣菜も北海道からの上京だったし、何となく田舎出身仲間って感じで最初からなんか気楽だったんだよな。
俺は大学で男子ソフトボールサークルに入っており、割とアクティブな方だったんだが、亜衣菜はかなりのゲーマーで、彼女のお勧めのゲームを俺もやり始めた1年の夏頃から、俺たちはかなり仲良くなっていった。
一緒のゲームを始めてからは大学内でも割と一緒に行動することが増えていったし、この流れならいけるだろうと思い、俺は秋の文化祭前に彼女に告白し、OKをもらった。
高校2年以来の彼女で、しかもかなり可愛いこともあり、あの時の俺はまぁ、幸せだったね。
付き合ってからは亜衣菜とはほぼ半同棲のような形で俺のアパートで一緒に過ごし、そこで一緒にゲームしたり、ゲームのモデルとなった場所に旅行にいったり、某ゲームショーに行ったり、某遊園地にデートしに行ったり、俺の試合の応援に来てもらったり。
完全にリア充を満喫していたと思う。
そんな中だったから、大学3年の6月、LAのサービス開始に合わせ彼女から一緒にやろうと勧められた時も、何も考えずにOKをした。彼女と一緒ならなんでも楽しいと思ってたからな。
事実、LAは楽しかった。俺も亜衣菜も初めてのMMORPGだったんだが、二人だけの世界じゃないその空間に、俺たちは魅了された。
だが、初めの頃は一緒にプレイもしていたんだが、プレイ開始2か月後に訪れた夏休みで、俺と彼女は少しずつすれ違いだした。
寝食を忘れるほどにLAに熱中する彼女に対し、1年後の教員採用試験の勉強や、サークル活動、卒論への準備など、リアルの生活も維持したい俺とでは、プレイスタイルに大きな差が生じてきたのだ。
俺自身も彼女と足並みを揃えるのは難しいと思い始めていたし、きっとそれを察したであろう彼女から、別のギルドに入ってそれぞれ情報を提供し合おうと提案を受けた時は正直ホッとした。
だいと出会ったのは確かこのころだな。
当時はまだギルドも群雄割拠時代だったのだが、俺はもう解散してしまったギルドに、亜衣菜は【Vinchitore】に所属し、LAを続けた。
もちろん亜衣菜だって24時間プレイできるわけじゃないし、時折人肌が恋しいのか俺に甘えてくることもあった。俺も彼女が好きだったから、彼女がプレイしている隣で彼女の世話もしたりしたものだが……そんな関係はなかなか続かないよな。
リアルを大切にしたい俺。ゲームを極めたい亜衣菜。
すれ違っていることを自覚しながら、二人の先が見えないことを理解しながら、彼女との関係に区切りをつける決断が下せなかった俺に、亜衣菜の方から
「今までありがとうね。もう十分だよ。りんりんは、自分の幸せを見つけてね」
そう言って、俺との関係に終わりを告げてくれた。
そう言われた時、彼女と離れたくない気持ちと、ああこれで解放される、という想いと、二つの想いが胸にあったのは、今でも覚えている。
その後俺は教員採用試験に合格し、無事大学を卒業。翌年度から教師として社会人デビューをした。亜衣菜は、残念ながら4年で卒業できず、1年留年後、大学を卒業したらしい。
亜衣菜は就活もしなかったらしいが、彼女のSNSにUPされていた自身のコスプレ写真や、LAでの記事に目を止めた大手ゲーム雑誌から専属契約の話が来て、彼女は今の立場に至ったという。
俺が亜衣菜と別れたあともLAをやめられなかったのは、彼女との思い出が残っていたからかもしれないな。
ゲームの中では、たまに彼女に会うこともあるし。
亜衣菜がこんな顔がいいよー、と笑いながらキャラメイクした〈Zero〉の姿。
最初は格闘武器を選んだくせに、俺が銃を使うと言ったら、私も! と言って銃使いをかぶせてきたこと。
新コンテンツに率先して挑戦し、クリアしたときに浮かべていたあの笑顔。
女々しいのは重々承知だが、このゲームには彼女との思い出が詰まっているのだ。
もちろん、彼女だけじゃなくだいやもこさんなど、ゲーム内で出会った大事な仲間たちや、もう引退してしまった仲間との思い出もたくさんある。
彼女と別れてからもずっと一人暮らしを続けている俺にとって、彼女の紹介で初めたLAは大事な居場所の一つになっていることは間違いない。
これが、俺と亜衣菜、セシルとの関係だ。
〈Pyonkichi〉『うーん、まぁゲームやるのは自由だし、別に女々しくはないんじゃね?』
〈Jack〉『そうだねーーーー。また1からキャラ育てろって言われるのは、しんどいもんねーーーー』
〈Pyonkichi〉『だなー。我が子みたいなもんだしなぁ』
〈Pyonkichi〉『とりあえず、ゼロやんが学生時代リア充満喫してたのはよくわかったw』
〈Pyonkichi〉『ちなみにそっから彼女は?w』
〈Zero〉『いねーよ!』
〈Daikon〉『ふーん』
〈Daikon〉『ちょっと今日先に落ちるわ』
〈Daikon〉『素材でたら送っといて』
〈Daikon〉『おやすみ』
〈Jack〉『お、おーーーー? おやすみー』
〈Zero〉『お、おやすみ』
〈Pyonkichi〉『まさかだいはセシルファンでショックだったのか?w』
転移魔法でさっさとだいがホームタウンに戻り、あっという間にログアウトしてしまった。
なんだあいつ? 珍しくなんか、そっけなかったな。まさか、ほんとにぴょんの言う通り……?
一番親しいと思っているフレンドの、見たことがなかった対応に俺は一抹の不安を覚えたが、だいがログアウトしてしまった以上何か出来ることはない。
〈Jack〉『とりあえず、せっかく来たんだから素材1Dくらいは目指して頑張りますかーーーー』
〈Pyonkichi〉『そうなー』
〈Zero〉『あ、二人もさっきの技については次の月間MMO出るまで内密でよろしくな』
〈Jack〉『まかされよーーーーw』
〈Pyonkichi〉『ゼロやんがセシルに怒られる展開も面白そうだけどw』
〈Zero〉『やめろw』
〈Zero〉『つーか俺ばっかリアルの話させやがって』
〈Zero〉『二人とも、彼女とかいないの?』
亀狩りを再開しながら、俺がお返しとばかりに二人に質問をしてみるが。
二人は何も言わず、ただただ亀へ攻撃を仕掛けるばかり。
ああ……。
〈Zero〉『な、なんかごめん……』
俺の謝罪に対して二人ががーがー文句を言った後、俺たちはしばらくまた他愛もない話をつづけながら目標の素材を集め終え、23時少し過ぎくらいに、パーティを解散するのであった。
〈Pyonkichi〉『あのくっそ可愛いセシルと付き合ってたとか、これはゼロやんイケメンか!?』
〈Jack〉『わー、それは確かに秘密にしたがるわけだねーーーー』
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〈Jack〉『違うプレイだったねーーーーwww』
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〈Zero〉『おいやめろ』
〈Zero〉『もう何年も前の話だからな?』
〈Pyonkichi〉『いつの話なんだよーw』
〈Zero〉『あー』
完全に狩りをする空気でもなくなってしまった俺たちは、モンスターが徘徊する洞窟の中のセーフティゾーンでただただチャットするだけという不思議な状態になってしまった。
だが下手にはぐらかせて変なことを言われるのも何なので、俺はみんなにセシルとの過去を話すことにした。
と言っても、別れたのは大学3年の春休み前だったから、もう6年以上前の話だ。
俺が彼女と付き合い始めたのは俺たちが大学1年の秋だったから、期間にして2年ちょいってとこか。
東北出身の俺は都会に憧れて大学は都内の教育学部のある大学を選んだわけだが、同じ大学の文学部に在籍していたのがセシルこと、武田亜衣菜だった。
俺と彼女の出会いはバイト先。大学1年の5月頃に某ファミレスでバイトを始めた俺に続いて、亜衣菜がバイト先に入ってきた。
正直一目見た時から可愛いなとは思ってたし、俺のバイト先は俺が住んでたアパートから近く、大学とは少し離れていたため、同じ大学の学生がいなかったことから、自然と俺たちが仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
亜衣菜も北海道からの上京だったし、何となく田舎出身仲間って感じで最初からなんか気楽だったんだよな。
俺は大学で男子ソフトボールサークルに入っており、割とアクティブな方だったんだが、亜衣菜はかなりのゲーマーで、彼女のお勧めのゲームを俺もやり始めた1年の夏頃から、俺たちはかなり仲良くなっていった。
一緒のゲームを始めてからは大学内でも割と一緒に行動することが増えていったし、この流れならいけるだろうと思い、俺は秋の文化祭前に彼女に告白し、OKをもらった。
高校2年以来の彼女で、しかもかなり可愛いこともあり、あの時の俺はまぁ、幸せだったね。
付き合ってからは亜衣菜とはほぼ半同棲のような形で俺のアパートで一緒に過ごし、そこで一緒にゲームしたり、ゲームのモデルとなった場所に旅行にいったり、某ゲームショーに行ったり、某遊園地にデートしに行ったり、俺の試合の応援に来てもらったり。
完全にリア充を満喫していたと思う。
そんな中だったから、大学3年の6月、LAのサービス開始に合わせ彼女から一緒にやろうと勧められた時も、何も考えずにOKをした。彼女と一緒ならなんでも楽しいと思ってたからな。
事実、LAは楽しかった。俺も亜衣菜も初めてのMMORPGだったんだが、二人だけの世界じゃないその空間に、俺たちは魅了された。
だが、初めの頃は一緒にプレイもしていたんだが、プレイ開始2か月後に訪れた夏休みで、俺と彼女は少しずつすれ違いだした。
寝食を忘れるほどにLAに熱中する彼女に対し、1年後の教員採用試験の勉強や、サークル活動、卒論への準備など、リアルの生活も維持したい俺とでは、プレイスタイルに大きな差が生じてきたのだ。
俺自身も彼女と足並みを揃えるのは難しいと思い始めていたし、きっとそれを察したであろう彼女から、別のギルドに入ってそれぞれ情報を提供し合おうと提案を受けた時は正直ホッとした。
だいと出会ったのは確かこのころだな。
当時はまだギルドも群雄割拠時代だったのだが、俺はもう解散してしまったギルドに、亜衣菜は【Vinchitore】に所属し、LAを続けた。
もちろん亜衣菜だって24時間プレイできるわけじゃないし、時折人肌が恋しいのか俺に甘えてくることもあった。俺も彼女が好きだったから、彼女がプレイしている隣で彼女の世話もしたりしたものだが……そんな関係はなかなか続かないよな。
リアルを大切にしたい俺。ゲームを極めたい亜衣菜。
すれ違っていることを自覚しながら、二人の先が見えないことを理解しながら、彼女との関係に区切りをつける決断が下せなかった俺に、亜衣菜の方から
「今までありがとうね。もう十分だよ。りんりんは、自分の幸せを見つけてね」
そう言って、俺との関係に終わりを告げてくれた。
そう言われた時、彼女と離れたくない気持ちと、ああこれで解放される、という想いと、二つの想いが胸にあったのは、今でも覚えている。
その後俺は教員採用試験に合格し、無事大学を卒業。翌年度から教師として社会人デビューをした。亜衣菜は、残念ながら4年で卒業できず、1年留年後、大学を卒業したらしい。
亜衣菜は就活もしなかったらしいが、彼女のSNSにUPされていた自身のコスプレ写真や、LAでの記事に目を止めた大手ゲーム雑誌から専属契約の話が来て、彼女は今の立場に至ったという。
俺が亜衣菜と別れたあともLAをやめられなかったのは、彼女との思い出が残っていたからかもしれないな。
ゲームの中では、たまに彼女に会うこともあるし。
亜衣菜がこんな顔がいいよー、と笑いながらキャラメイクした〈Zero〉の姿。
最初は格闘武器を選んだくせに、俺が銃を使うと言ったら、私も! と言って銃使いをかぶせてきたこと。
新コンテンツに率先して挑戦し、クリアしたときに浮かべていたあの笑顔。
女々しいのは重々承知だが、このゲームには彼女との思い出が詰まっているのだ。
もちろん、彼女だけじゃなくだいやもこさんなど、ゲーム内で出会った大事な仲間たちや、もう引退してしまった仲間との思い出もたくさんある。
彼女と別れてからもずっと一人暮らしを続けている俺にとって、彼女の紹介で初めたLAは大事な居場所の一つになっていることは間違いない。
これが、俺と亜衣菜、セシルとの関係だ。
〈Pyonkichi〉『うーん、まぁゲームやるのは自由だし、別に女々しくはないんじゃね?』
〈Jack〉『そうだねーーーー。また1からキャラ育てろって言われるのは、しんどいもんねーーーー』
〈Pyonkichi〉『だなー。我が子みたいなもんだしなぁ』
〈Pyonkichi〉『とりあえず、ゼロやんが学生時代リア充満喫してたのはよくわかったw』
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〈Zero〉『いねーよ!』
〈Daikon〉『ふーん』
〈Daikon〉『ちょっと今日先に落ちるわ』
〈Daikon〉『素材でたら送っといて』
〈Daikon〉『おやすみ』
〈Jack〉『お、おーーーー? おやすみー』
〈Zero〉『お、おやすみ』
〈Pyonkichi〉『まさかだいはセシルファンでショックだったのか?w』
転移魔法でさっさとだいがホームタウンに戻り、あっという間にログアウトしてしまった。
なんだあいつ? 珍しくなんか、そっけなかったな。まさか、ほんとにぴょんの言う通り……?
一番親しいと思っているフレンドの、見たことがなかった対応に俺は一抹の不安を覚えたが、だいがログアウトしてしまった以上何か出来ることはない。
〈Jack〉『とりあえず、せっかく来たんだから素材1Dくらいは目指して頑張りますかーーーー』
〈Pyonkichi〉『そうなー』
〈Zero〉『あ、二人もさっきの技については次の月間MMO出るまで内密でよろしくな』
〈Jack〉『まかされよーーーーw』
〈Pyonkichi〉『ゼロやんがセシルに怒られる展開も面白そうだけどw』
〈Zero〉『やめろw』
〈Zero〉『つーか俺ばっかリアルの話させやがって』
〈Zero〉『二人とも、彼女とかいないの?』
亀狩りを再開しながら、俺がお返しとばかりに二人に質問をしてみるが。
二人は何も言わず、ただただ亀へ攻撃を仕掛けるばかり。
ああ……。
〈Zero〉『な、なんかごめん……』
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