オフ会から始まるワンダフルライフ 人生を彩るのはオンラインゲーム!?

佐藤哲太

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第2章

天然の刺客

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「おー、ゼロやん! こっちだよーって、え! お前いくらモテ男だからってナンパした子連れてくんなよー」
「ちげぇよ!!」

 17時56分。
 待ち合わせ場所のヨコバシカメラにつくと、知った顔の麗しき我がギルドメンバーが揃っていた。
 ある程度覚悟はしていたが、まぁさっそくぴょんが俺をいじってきた。だがもうこの程度では俺は動じないぞ。

 でも、ゆめとだいの怪訝そうな視線は痛い。

「改札あたりで迷子だった子だ」
「いや、迷子だからってここまで連れてきてどうすんのさ~」
「小さい子ってわけでもないんだから……」
「はい、自己紹介して」

 俺の言葉にあきれ顔のゆめとだいも気にせず、俺は迷子さんに指示を出す。
 ここに来る直前、俺はもう先に聞いてるからな。

「はじめまして、神宮寺優姫じんぐうじゆうきと申します」
「いや、そっちじゃない!」

 迷子さんが深々とお辞儀をすると、それに合わせてさらさらと彼女の黒髪も揺れ動く。
 俺のツッコミに不思議そうな顔を浮かべた迷子さんだったが、俺と彼女のやり取りで、3人は彼女が誰か理解したようだ。

「あ、ゆきむらです」
「そういうことね」
「わか~い」
「いやぁ、あたしゃゼロやんが犯罪に手を染めようとしてんのかと焦ったよ」

 しかしこいつら、思ったよりも驚かないな。
 ゆきむらも女の子だって、分かってたのか……。うーん、どうして気付けるんだ?
 しかしぴょんめ、いい加減にしろ!

「あの、先に一つ、皆さんに謝らせてもらってもいいですか?」
「ん?」

 おずおずと話を切り出す迷子さん改めゆきむらに、俺たちの視線が集まる。
 表情が薄いから、何考えてるか全然わかんねーな。

「私、皆さんに嘘をついておりました」
「なになに~?」
「私、ほんとはここに来る資格はないのかもしれません」
「なんだよ、早くいえよー。あたしたちの仲じゃんかー」

 ゆきむらがギルドに入ってから、だいたい2年くらいだからまぁぴょんの言いたいことは分からなくはない。ぴょんとゆきむらは、だいたい同じ時期だったっけな。

「あの頃は、どうせ最終的にそうなるだろうと思っていたのですが」

 なんだろ、何の話だろ。
 俺たち4人は、揃って不思議そうにゆきむらの言葉を待つ。

「私、まだちゃんと教師じゃないんです。職業詐称してごめんなさい」
「あらー」
「ちゃんと?」
 
 だいが聞き返す言葉は、俺も気になった。ちゃんと、ってどういうことだろ?
 まぁでもみんなそこまで驚いたりは、しない。
 ネット上でプロフィールに嘘つくなんて、ありふれてるからな。

「私、今は塾講師として先生と呼ばれることはありますが、基本的には大学院生をやっております。恥ずかしながら、去年採用試験に落ちてしまいまして……」
「あーそういうことか」
「べつにいいんじゃな~い?」
「そうね、別に証明を求めたわけでもないし」

 俺も3人に合わせて頷く。教採受けたんだったら、教員志望なんだし、塾の先生も、まぁ先生だしな。
 思い返せば仕事の話とかになると、ゆきむらあんまりしゃべってなかったけど、そういうことだったのか。

「今は、院の2年生?」
「あ、いえ、その、1年目です。どうせなると思ってたので……ギルドには大学3年生の頃に入らせていただきました……」
「おーおー! いいね! 意識高いじゃーんっ」
「じゃあ今年23歳なの~?」
「あ、はい。早生まれなので、まだ22ですが」
「わっけーなー」

 今年23ってことは、俺の5個下かー。たしかに若いなー。
 女性陣の中では一番背は高いけど。
 ん、つか、あれ?

「教採って、もうすぐじゃないのか?」
「そういえば、そうよね」
「たしかに!」
「今日来ても大丈夫なの~?」

 俺の言葉に3人も同意する。少なくとも東京の試験は、7月の第2土曜だったような記憶があるのだが……。

「あ、筆記は自信ありますので大丈夫です」
「うわ、かっけえ」
「すごいね~」
「私、不安しかなかったけど……」
「去年も1次は受かりましたので」
「何を受けるんだ?」
「東京の、中高国語です」
「え! あたしの後輩じゃん!」
「ぴょんで受かるなら、ゆっきーもなれるよ~」
「おい、ゆめー!?」

 じゃれつくようにぴょんがゆめに襲い掛かる。こいつらほんと、仲いいなー。

 ちなみに東京都の教員採用試験は、小学校と中高の各教科で分かれてるのだ。中高の試験に受かると、中高いずれかに配属される。希望は出せるけど、高校教師なりたくても必ずしも高校に配属されるかは分からないんだよね。
 俺は倫理専門だから、運よく高校に配属されたと思うけど。

「あ、そういえば私たち誰も名乗ってないけど、もう、わかったかしら?」
「あ、お話の中で、はい。だいさんが巨乳美人と言われてたのも、よく理解しました」
「ちょっと!?」

 ぶっ!
 ぽーっとした表情のまま淡々とそう言い放ったゆきむらに、俺は思わず吹き出してしまった。
 なるほど、こいつ天然か!!

「まな板のぴょんさんに、可愛いゆめさんとイケメンぜろさんですよね」

 だいを華麗に無視して、それぞれに確認を取るゆきむら。
 俺がイケメンかどうかは置いといて、ぴょんのやつに思いっきり睨まれてるの気づいてるかー? ゆめはちょっと嬉しそうだけど。
 触らぬまな板に祟りなし……ここはそっとしておこう。
 年下天然恐るべし……!

「あ~~、その会話にあたしもはいっていいかな~~?」

 周囲の客の視線を受けながら、ヨコバシカメラであーだこーだ話す俺たちに、語尾が伸びた口調の新たな声が届けられる。

 全員がそちらへ視線を向けると同時に、俺がため息をついてしまったのは、言うまでもない。
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