オフ会から始まるワンダフルライフ 人生を彩るのはオンラインゲーム!?

佐藤哲太

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第6章

君が笑ってくれるから

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 17時58分。俺とだいもギリギリでチェックインに間に合った。
 車を降りて、俺はあーすの荷物も持って、だいと一緒に宿へ向かう。

 口コミがよかった温泉宿は、ゆめが見つけてくれたところで、外観は老舗感がただよう、くつろげそうな旅館に見えた。

「もうみんな部屋に行ってるって」
「おう」

 だいとの二人の時間もこれで終わりか。
 名残惜しいけど、みんなと泊まりの旅行なんてなかなかあるもんじゃないだろうからな。
 今は今で楽しみますかー。

 だいとあーすの話も聞けたし、あとは、だい次第だし。

「おつかれー」
「みんなとりあえずくつろいでるよ~」

 宿の中に入った俺たちを出迎えてくれたのは、ぴょんとゆめだった。
 何となく居そうな気がしたゆきむらがいないのが、ちょっと不思議。

「うん、お待たせ」
「ちゃんと話せたかー?」
「うん。大丈夫」
「だい、ちょっといい顔になったね~」
「なんだなんだ、やっぱりイチャイチャしてたかー?」
「し、してないわよっ」

 靴を脱いで、手続きを終えてから俺たちは旅館のロビーにあるテーブルを囲んでいた。
 迎えてくれた二人の表情は、だいの表情に安心したのか笑ってた。
 たぶんだいがスマホで何かやりとりしてたのは、この二人だったんだろうな。

「話を聞いた感想は?」
「あーすのこと殴りそう」
「え~、ほんとに~?」
「って、最初は思った」
「お、いっちょ前にびびらせにきたか!」
「でもやっぱゼロやん怒ったんだね~」
「うん、二人の言う通りだった」
「で、今は~?」
「俺が言うことは何もないよ。昔のだいのことは知らないけどさ、俺は今のだいが好きなんだし。今のだいだから出会えたんなら、それでいいかなって」
「おーおー、成長したじゃーん!」
「さらっと好きって言えるようになったね~」
「う、うるせえなっ」

 さらさらと話してた俺だったけど、改めて二人に茶化され、自分の顔が熱くなる。
 でも、嘘はない。

 あ、だい照れてる。可愛い。

「でも、ちょっと気になることもあるっていうか……」
「気になること?」
「あー、ゼロやんちょっと来い」
「え、おおう!?」

 俺の言葉に不思議そうな顔を浮かべただいだったが、その表情は一瞬しか見えなかった。
 いきなり立ち上がって俺の腕を掴んだぴょんに引っ張られ、だいとゆめから離れるように、自販機とかのあるコーナーへ連れてかれたから。
 いきなりなんだよと思ったが、俺の目を見るぴょんは、真剣な顔をしていた。

「あーすからだいへの気持ちの話はあたしらも聞いた。それか?」
「え、あ、うん。一緒だな」
「ゼロやんは、それをあーすに言わせていいのか?」
「え?」
「もし昔のあーすが言ったって言葉があーすの本心じゃなくて、だいの中の誤解が解けたら、だいがあーすにいくかもしれないぞ?」
「……それがだいの気持ちなら、しょうがないんじゃないか?」
「え?」
「もし誤解なんだとしたらさ、それは悲しいことじゃん。せっかく仲が良かったはずなのに、おかしくなったままはダメだろ。誤解は解けた方がいい。その上で、だいが自分の幸せを選べばいいと思うよ」
「いいのか?」
「だいが幸せになってくれるなら、それがいいよ」

 ぴょんに聞かれたことは、だいの話を聞いている時から密かに思っていたことだった。
 直接だいには言えなかったけど、ぴょんに聞かれたことで、この思いが発露する。

 人が誰かを好きになるってことは、すごいことだ。
 ましてそれが1番好きな人同士でなれるんだったら、そんな素晴らしいことあるだろうか。

 だいが俺から離れていくのは、想像するだけで苦しいけれど、でもやっぱり、だいとあーすの関係は何かがおかしい。
 性格が変わってしまうほどのショックを受けるくらい、だいはあーすが好きだったはずなんだ。
 だからこそ、真実が明らかになって欲しいと本心から思う。
 その結果が俺にとってつらいものになっても、それでだいが幸せなら、それでいい。いや、それがいい。

 あーすへの想いを引きずったまま、俺のそばにいさせるなんて、させられない。

「はぁ」
「え? どうした?」

 そんな俺の言葉を聞いたぴょんが、わざとらしく大きくため息をつく。
 こいつにため息なんて似合わねぇなぁ、なんて思ってると。

「って!」

 何故かいきなり思い切り俺の背中を叩くぴょん。
 でも、ぴょんは、笑っていた。

「ったく、ゆめからも聞いてたけど、ゼロやんほんと、変に周りに気を遣いすぎだろ」
「え、ゆめから? え!?」
「それで自分の幸せ逃して、だいが笑うか?」
「え、あ、いや」
「そこは堂々と奪わせねーよって言ってもいいんだぞ?」
「いや、でもやっぱだいが――」
「――どいつもこいつも心配性の馬鹿ばっかだな!」
「え?」

 真剣に答えたつもりなのに、なぜぴょんはこうも笑ってるのか。
 ダメだ、何考えてるか全然わからん。

「ま、大丈夫だと思うけどさ!」
「へ?」
「でも、ゼロやんがだいがどうしたいかを気にしてるように、だいもゼロやんがどうしたいかを気にしてるんだからな?」
「え、あ、う、うん」
「そこは分かっとけよー?」
「お、おう」
「まぁないと思うけど、万が一、いや億が一フラれたらあたしがもらってやるよ!」
「はぁ? って、ぴょんは大和とは――」
「あたしのことはどーでもいいだろっ」

 笑ったぴょんに流された感じになったけど、とりあえず俺は言いたいことは言えた。
 ぴょんが大和をどう思ってるのかも聞きたかったけど、まぁこればっかはしょうがない。
 人の恋愛事情に首を突っ込めるほど、俺は恋愛が得意じゃないし。

「うし。勝負は夕飯食ったらだな」
「お、おう。って、それはだい次第だろ」
「まぁそうだけどさー」

 再びロビーに戻ると、だいとゆめは少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
 この二人は何を話してたんだろう?
 ぴょんがあーすから聞いたことは、ゆめも知ってるだろうし、まさか、言ったのか?

「こっちはおっけー」
「お~、よかった~。じゃあ、だいは今日の態度のお詫びに、後であーすと話してみよ~」
「う、うん。頑張る」

 何がよかったなのかよくわからないが、ゆめの言葉にだいは緊張した面持ちで返事を返していた。

「せっかくリアルでみんなと会えたんだしな。どうせなら明日はみんなで楽しめるようにしようぜ」
「そう、だね」
「あたしはワガママなだいも見てみたいけどねー」
「ちょ、ちょっと、やめてよっ」
「それそれ~。明日はみんなで笑って話そ~」

 ぴょんとゆめがだいを茶化したことで、俺たちの空気が軽くなる。
 ほんと、この二人には感謝だなー。
 こんなに心配してくれる友達、俺の人生で今までいただろうか。

 女性陣の部屋へと3人並んで歩いて行く仲間たちを後ろから眺めつつ、改めていい仲間に出会えたことに、俺たちを繋ぎ合わせてくれたLAに、俺は感謝するのだった。



「ただいまー」
「おっかえり~~」
「おかえりなさい」
「よっ」
「あ、ゼロやんおかえりっ」
「あれ、ゆきむらとジャックもこっちにいたのか」
「そだよ~~。せんかんがトランプあるっていうから、みんなで大富豪やってた~~」
「おー。あ、ほらあーす荷物」
「あ、ありがとー」

 俺が入ったのは12畳くらいの和室で、部屋の奥には椅子が二つとテーブルがある、よくあるタイプの客室だった。
 その部屋の真ん中で、大和とあーすだけでなく、ゆきむらもジャックもトランプで遊んでいた。
 テーブルを使わずわざわざ畳の上でやってるのは何故なのだろうか。

「ゼロさん、何を出せばいいと思いますか?」
「んー?」

 洗面台で手洗いうがいを終えた俺へ、ゆきむらが尋ねてくる。

「いやー、何も出せないかな……」
「むむ」
「ゆっきー激よわなんだよ~~」
「いきなり攻勢かけてくるから、後半何もできなくなってるんだよなー」
「革命待ちゆっきーだねー」
「私、このゲーム初めてです」

 大富豪かー。学生の頃は部活のやつらと合宿とかでやったなー。大学の頃は、酒飲みながら負けた奴が一気とかね、懐かしい。
 あ、くれぐれもアルコールの一気飲みはやめとけよ。良い子は真似しちゃダメだからな。

 ちなみに全員手札はもう5,6枚だったけど、ゆきむらの手札は全て5以下のカードだった。
 これじゃもう自分の番を持ってくるのは、厳しいだろうな……。

「ルールは?」
切りと11イレブンバック、しばりに階段、スペさんだよ~~」
「ほうほう」

 地域によってローカルルールがあったりするけど、とりあえず知ってるやつだけみたいだな。
 でも、ゆきむらのカードじゃちょっと厳しい。あ、でもスペードの3にハートの3,4,5あるじゃん。革命でも起きれば、勝てるか?

 他の3人のカードがどんどん減る中。

「はい、階段革命からのー、あがり~~」
「えっ!?」
「な、なんだってー!?」
「お、チャンスだぞ」
「むむ?」

 ジャックがジョーカーを含めたダイヤの8,9,10,11を出し、最後にクラブの7を出して上がり宣言。
 それに対し悲鳴をあげるあーすと大和。
 大富豪はジャックだけど、順番的に次のゆきむらは富豪は狙える手札が揃っている。

「これ出して」
「はい」
「うわ、3!?」
「つよー」

 ゆきむらの後ろでしゃがんだ俺の指示に従い、ゆきむらが手札を出す。
 そのカードに大和とあーすが泣き言を喚く。

「で、次この3枚」
「あ、3枚でいいんですか?」
「うん、これはマーク揃ってて連番だから、大丈夫」
「おいおい、ここで階段!?」
「って、ゆっきーあと1枚じゃーん!」

 為す術なくゆきむらが切っていく手札に嘆く男ども。

「最後、これで終わり」
「おお」

 最後にゆきむらがスペードの5を切って、富豪2位抜け確定。
 ジャックの革命ありきだったけど、革命後はもうゆきむらの独壇場で、男ども二人は見ているだけだった。
 しかし最後の方にあの手札を残していたとは、ゆきむらのセンスは絶望的だな。
 例えるなら5連戦の中ボス後に本命ボスがいるのに、1,2体目で全MPやアイテムを使い切る戦い方だ。
 さすがゆきむらというかなんというか……。

「初めてビリじゃありませんでした」
「あ、そうなん?」
「ゼロさんのおかげです。ありがとうございます」

 座ったまま振り返ったゆきむらが、俺を見上げるように嬉しそうな笑顔を浮かべる。
 その笑顔は、いつもの表情じゃなく、相変わらずずるい笑顔。
 
 っと、あぶねぇ! 「おめでと」ってあやうく頭ぽんってするとこだった!

「って、ずっと負けてたんかい」
「あとで一緒にやりましょうね」
「おー、そうな。みんなで勝負するか」
「っと、ゼロやんがきたってことは、だいも来たんだよね~~。ゆっきー1回戻ろうか~~」
「あ、はい。分かりました」
「え、ジャック勝ち逃げ!?」
「結局勝てなかったよー」

 ジャックが立ち上がり、ゆきむらがそれに続く。

「何戦やってたの?」
「8戦くらいかな~~」
「ジャックが全部大富豪で、ゆっきーがずっと大貧民だぜ?」
「ゲーマーをなめちゃあかんぜよ~~」

 大和とあーすがあまりに悔しそうにしているものだから、何回勝負したか聞いた俺だったけど、なんと。
 たしかにジャックはLAでも屈指のプレイヤーだけど、まさかトランプも強いとは。恐るべし。

「じゃ、18時半から夕食だからね~~」
「おー」
「ゼロさん、またあとで」
「はいはい」

 そう言って二人が男子部屋から退散する。
 勝負の途中で残された二人は、不毛にも大貧民と貧民決めを続け、あーすが勝利を収めたようだった。どうでもいいけど。

「車借りてくれてありがとねっ」
「まぁ、俺もだいと二人でドライブできたから、無問題もーまんたい
「明日の班分けどうすっかねー」

 あーすのお礼に適当に答えつつ、トランプを片付ける大和がそんなことを聞いてきた。
 たしかに8人いるんだから、4・4に分けてもいいだろうし、また俺とだいの二人でもいい。

「ぴょんが言ってたけど、ご飯食べて、買い出し行って、温泉入ったあとみんなで飲むんでしょ? 飲みながら決めればいいんじゃないかな?」
「あ、そんな予定なってんだ」
「コンビニ近いみたいだしさ、そうしようってさ」
「じゃあ、その流れに従いますか」

 となると、だいはいつあーすと話せばいいんだ?
 夕飯後ってぴょんは言ってたけど、買い出し中にってことか?
 
 まぁ、そのへんの流れは俺が心配しなくても大丈夫だろうけど。

 ぴょんたちなら、なんか上手い進めてくれるだろ、たぶん。

 あーすの様子も、特に何か変わった様子もないし、普通にだいと話してくれそうだな。

 今後の予定を何となく確認した俺たちは、その後布団のポジションを決めたりとかしながら、しょうもない話を男だけでしつつ、夕食までの時間をつぶすのだった。
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