オフ会から始まるワンダフルライフ 人生を彩るのはオンラインゲーム!?

佐藤哲太

文字の大きさ
156 / 166
第6章

信じたくない結末

しおりを挟む
『えっ? あ……え? ああ! なっちゃん、聞いてたの……?』

 だいの問いに対し、少し間を置いてから慌てたようなあーすの声が届く。
 これは、どういう感情なんだろうか?
 表情が見えない分、変な想像が膨らむ。

『う、うん。聞こえちゃったから、聞いてた、よ』

 それに対し、さらにだいの声が緊張を帯びる。
 というか、自分のこと嫌い? って聞くのとか、普通にやだよな。
 頑張れだい!

『うわっ、マジかっ』

 だが、思いのほか続いたあーすの声は、暗くなかった。
 ぴょんとゆめも、僅かに眉をひそめていた。

『うーん、あれはさー、なんていうか、みんなが僕に告れ告れって言うからさ、ちょっと嘘ついただけっていうか』
『え?』

 嘘、か。

「ふむ……」
「なるほどね~……」
「嘘は、よくないですよね」

 神妙な顔をする女性陣。
 でもゆきむら、君はちょっと黙っててね。

『だってさ、僕大阪行くの決まってたんだよ? 大阪と千葉なんて、簡単に行ける距離じゃないし、遠距離恋愛なんてさ、できるわけないじゃん?』

 嘘の言い訳、というと言い方が悪いが、あーすの弁解が続く。
 まぁ、中学生の頃の遠距離とか、いつまた会えるかも分からない相手と恋をし続けるなんて、子どもじゃ厳しいよな。
 大人だって難しいってのに。

『う、うん。そうだね』
『だからさ、僕はなっちゃんのこと好きだったけど、何も言わずに行こうって決めてたんだ』
『え?』

 っ!!
 さらっと告げたあーすの「好きだった」発言に、今俺はどんな表情になってるだろうか。

 俺の心中を察したのか、そっとゆきむらが俺の拳に手を重ね、頷いてくれた。

『す、好きだった?』

 だいの声には緊張と驚き。
 そりゃそうだよな。俺はあーすから聞いてたからなんとか声を抑えられたけど、だいからすれば、自分の考えと真逆の言葉だもんな。
 今あいつは相当混乱しているだろう。

 くそ、二人のところに行きたくてしょうがない……!

『え、そうだよ? あれ? もしかして、気付いてなかったの!?』
『う、うん……全然』

 だが、そんなだいの様子にあーすも驚いた様子。

「だいらしいね~……」
「この反応、あーすも分かりやすかったんだろうなー」

 小さな声で少し呆れるゆめとぴょん。
 まぁ、だいは大概だからな……と俺も苦笑い。

 でもやっぱ、ほんとに昔は好き合ってたのかと思うと、ちょっと複雑だな。

『うわ、マジかー……僕は、なっちゃんが僕のこと好きだろうなーって思ってたよ?』
『え、嘘……』

 そして逆にあーすから尋ねられただいは、きっと絶句。
 しかしあいつめ、そんなアピールしてたのか……?

『なっちゃん分かりやすかったからね? みんなに対して呼び捨てなのに、僕のことだけくん付けだったし』
『え、あ、そう、だっけ?』
『うん。しかも僕と話す時、なっちゃん声高くなってたし』

 そう言ってあーすが笑った。だいは、困惑するように「え?」を繰り返してるけど。

 しかしそんな露骨だったんかい!!
 俺に対しては全然そんな感じなかったやないかい!!
 ……これが、だいの性格ビフォーアフターか!

 さすがにこのあーすの言葉に女性陣も意外そう……ではなさそうな?
 あれ?

「昔から分かりやすいやつかー」
「だね~」

 え、なんでですか?

『は、恥ずかしい……』
『だからさ、知ってたからこそ、あの時僕はみんなにああ言って、それを伝えてもらって、嫌われようと思ったんだ』
『え?』
『いつ会えるか分かんない恋愛したって、なっちゃんを縛るだけじゃん』

 ほお……。

「なるほどねー……」
「気持ち分からなくはないね~」
「好きを抑えるのは、難しい気がしますけど……」
「難しいけど、あーすは頑張ったんだね~」

 落ち着いたトーンで言い放たれたあーすの言葉に、女性陣が少し見直した、というような表情を浮かべていた。
 ゆきむらの言うことも間違ってないけど、ゆめの言う通り、その時のあーすは、つらかったろうな。

『う、うん……そう、なんだ』

 そんなあーすの言葉を聞いたからこそ、だいの声のトーンが少し落ちた。
 これはこれで、ショックだよな。
 うーん、やっぱり、あーすのこと、まだ好きって想いあるのかな……。

『うん、だから嫌われようと思って、ああ言ったんだ、ごめんね』
『ううん』
『でも、今なっちゃんに言われるまでそんなこと言ったの、完全に忘れてたんだけどね。ごめんね。今日会った時最初はそんなこと忘れて、ただただテンション上がっちゃったけど、言われたほうはつらかったよね。嘘でもあんなひどいこと言ってごめんね』

 謝るあーすの言葉に、複雑な思いが募る。
 この言葉を聞いて、だいはどう思うだろうか?

田村大和>北条倫『買い出し完了。今から宿に戻る。ちなみに話はジャックから聞いた。あとで詳細報告よろ』20:15

 っと、俺が緊張していると、ブブッとポケットの中が震えた。
 通知を確認すれば、大和からの返信。
 そうか、大和もジャックもこの展開を知ってるのか。
 知っててなお、自然を装うためジャックは買い出しに行ってくれてるとか、ありがたいな。

『それじゃあね、あの態度は納得だよ。僕、嫌われようとして、嫌われてたんだもんね』
『嫌いになってた、わけじゃないけど……』
『でも、やっと言えるね』
『え?』

 今、あーすはどんな表情だったのだろうか。
 だいの声が、わずかに上擦った、ような気がした。

『僕、昔は君のことが好きでした』

「おお……」
「いったね~……」
「争奪戦、ですね……」

 そうならないことを願うばかりだが、やはり自分の彼女相手に違う男が告白するという状況は、くるものがあった。
 胸が苦しいというか、落ち着かなくてしょうがない。

 だいの答え次第では、戻ってきただいの表情次第では、俺は、あーすにだいの隣を譲ることになる、のか。
 ……あいつが望むなら、しょうがないけどさ。

『え、あ、ありがと……』

 答えただいの声は、嬉しさと戸惑いがあるような、そんな声に聞こえた気がした。
 その声に何か思うところがあったのか、ぴょんが俺の方に苦笑いを浮かべてくる。

「でもさ~」
「ん?」
「昔から、ならまだしも、昔は、って、わざわざ言う~?」
「え?」
「あ」
「たしかに」

 一人冷静なゆめがそのフレーズに気づく。
 たしかに、改めて告白するなら、付ける必要はない言葉、だよな?
 今のフレーズに込められた意味とは?

 え、この会話どうなるんだ!?

『でもさ、なっちゃん変わっちゃったねー』
『え?』

 ん?
 
 さっきまでのトーンとは打って変わって、あーすの声が弾む。
 たぶん、半分笑いながら言っているような……?

 え? どういう展開?
 
 この流れに、ゆめとぴょんも不思議そうな顔に変わっていた。

『あの頃はもっとこう、お姫様というか、みんなを振り回す子だったのに』
『あ、うん、そうだったよね……恥ずかしい』
『ううん、僕そんななっちゃんが好きだったんだよー?』
『え?』

 え?

「んー?」
「お~?」
「むむ?」

それは、“今の”なっちゃんじゃないってこと、か?
言葉だけだと判断がつかないが、何か、何か変な感じがした。

『え、どしたの?』
『え、だって、え?』
『ああ、僕が他の男子に言ったの、僕がなっちゃんの好きだったところだよ?』
『は?』

 ……ん?

「おい?」
「え~……」
「言ったのは悪口、でしたよね……」

 まさかの言葉に、この会話を聞く俺たちも唖然茫然。
 これを目の前で聞かされただいは、どんな表情なんだろうか……?

『僕さー、ちょっとみんな理解してくれないけど、振り回されるのが好きっていうか』

 ん?

『え、え、え?』
『ワガママで自己中な子にあれこれ言われたいんだよねっ』
『はい?』
『ちょっとM気質っていうのかなー』

 えええええええええええええ!?
 何ですって!?!?!?

 え!? 今、そのカミングアウト!?

「マジかよ……」
「これ、だいに言うこと~?」
「Mって何ですか?」
「後で教えてあげるからなー」

 まさかのあーすの言葉に俺はツッコミもままならず。
 え? あれ? 何この展開?
 あれ、俺の覚悟は? あれ?
 だいの覚悟は? え?

 しかし、あーすの声は相変わらず楽しそうなまま。
 昔好きだった人から、これ目の前で聞かされるだいの気持ちやいかに……。

『そういう点では、ゆめちゃんなんかすごいタイプだったんだよ! いきなり腕組まれた時はドキッとしちゃったなー』

「ひっ」

 あーすの言葉に、ゆめの顔が引きつる。そんなゆめの顔、初めて見ました。
 いや、たしかにこの流れで言われたらな! やだよな!
 何あのイケメン!?

『え、あ、はい』
『ぴょんもいいけど、ああ見えてぴょんってちょっとみんなに気を遣うタイプっぽかったし。あ、でもぐいって肩組んでくるせんかんとか、ズバズバ言ってくるゼロやんも素敵だったなー』
『……え?』

「は?」
「何こいつ……」
「ゼロさん、モテモテですね」

 空気が、凍った。
 既に引いた表情のゆめは、もはや絶句状態。

 っていうか……
 いやいやいやいやいや!?
 何言ってんのこいつ!?

 え、何!? そっち系!?

『ほら、愛に性別って関係ないじゃん?』
『あ、はい』

 返すだいの言葉から、感情が消えた。
 さっきまではきっと多少胸が高鳴っていたのかもしれないだろうが、これを言われては、もはや影も形もあるまい。

 無論俺も、背筋に何か寒いものを感じる。

『僕、どっちもいけるから!』
『そ、そうなんですね』
『え、敬語!?』
『ううん、なんでもないです』
『いや、なっちゃん敬語!?』
『いえ、ありがとうございました』
『え、あれ!? なっちゃん!?』

 そしてそこで会話は途絶え、だいが通話を切ったのか、ゆめのスマホの通話状態が終わった。

 こんな結末、誰が予想しただろうか?
 だいの心中やいかに……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...