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「いらっしゃいませ~」
 
 目元をベールで隠した女性店員が接客対応をしてくれた。中に入ると目に映る調度品や室内の造形はきらびやかで圧倒される豪華さがあり、こういうのと縁がなかった自分でもすごいと感じられた。
 
「彼に魅了をしてもらいたいのだけど」
 
「え、え~っと・・・当店では、特定の者を魅了させ惚れさせるといったサービスは行っておりません」
 
 店員は案内人の方を一瞬見て、何か思う所があるのだろう。多分、厄介な客を連れてきてふざけるんじゃないという感じなのだろうか。
 
「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて、普通に彼へ魅了をしてもらいたいの、いつもやってる仕事をしてもらいたいのよ。私はただの付き添い」
 
「勘違いさせてすまない」
 
 一応、俺も謝っておく事にする。
 
「では、こちらへどうぞ」
 
 店員に通された場所は、テーブルと椅子があったので座ると要望を明記する紙とペンを渡された。そして、魅了についての説明をされ、時間制限が必ずあり時間内に夢心地になってもらうことをサービスとしているとのことだった。
 激しい痛みや死に至るような魅了行為はしていない、また魅了されたものに命の危険性があった場合は魅了は中止される。そして、魅了によって死亡した場合は一切責任を負わないため、その条件に抵抗がある方はご利用しないでくださいと言われた。
 説明を聞いた後に、俺たちはこの世界の文字を書けないので、案内人に詳しい要望を書いてもらった。ほとんどナミの要望だったので、これから自分がその魅了をかけられると思うとなんだか嫌だなと思った。
 
 何か言おうとしたが、有無を言わさない笑みをしていたので了承せざる得なかった。
 
「では、要望を拝見させていただきますね」
 
 ナミが記載した要望は、べた惚れ状態にし、求愛行動を触れずに行うことであった。
 
 ナミは俺のことをどう思ってるんだろうか、実験動物か何かだと思っているのだろうか?それに今までそういった機会が無かったのではたして自分でもどういう行動になるのかわからないのが怖い。
 
「かしこまりました。では、個室へと移動いたしますのでご案内します」
 
 店員さんは、にっこりした表情で案内をしてくれた。個室に到着するとそこにはリラックスできるようなソファやベッド、長椅子、そしてお香がたかれていた。
 
「なんだか楽しみね」
 
「では、こちらでお待ちください」
 
 待たされること数分すると、ドアがノックされどうぞと促すと入ってきたのは下半身が蛇の人だった。いや人なのか?角は三本生えているから人か?いやどうなんだろう?
 
「はじめまして、この度の魅了を行う蛇鬼の者でございます」
 
「え、あ、よろしくおねがいします」
 
 上半身だけ見ると普通の角がある鬼だが、下半身だけ蛇なので気になった。街中では見かけなかったからもあるが、威圧感というか今まで相対してきた敵に下半身が蛇だったものはいないのもあり、警戒してしまった。
 
「さ、こちらにおかけになってください。魅了をお掛け致しますが大丈夫でしょうか?」
 
 ナミの方を見るが顎でさっさとやれとジェスチャーを受けた。くっ
 
「お願いします」
 
「では、私の眼を見続けてください。行きますね」
 
 魅了を確認、無効化されます。
 
 ナビのアナウンスが脳内に響いた。

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