異世界転移したけれど、今までの世界と比べて平和でした。

犬宰要

文字の大きさ
27 / 64

27

しおりを挟む
 ナビの目覚ましによって起き、軍用レーションをさらに不味くした朝食をとりながらげんなりしつつ、ナミと今日も外で狩りをして食事を楽しむ方向になっていた。
 
「昔は気にならなかったけれど、味に慣れてくるとどうしても気になってしまうわね・・・はぁ」
 
「それは俺も同じだ」
 
 朝食を食べた後に、ナビが精神安定剤を投与してきたのには驚きだった。自身の精神状態が飯の味で左右されっぱなしだった。今まで特段気にしていなかったが、この世界にきてからサバイバルして食に対する欲求がかなり変わった。
 
「レンツさんにナミさん! 昨日はどこ行ってたんですかー!?」
 
 朝食の味にげんなりしていると、バーべが現れた。
 
「狩りに出かけたんだが、狩ったやつの肉を捌いて振舞う事になったら宴会になったんだよ。それが食材が無くなるまで続いてな」
 
「え、私も参加したいのだが」
 
 バーべも参加したいと言い出し、今日も宴会騒ぎになるのだろうなと思った。
 
「どうするナミ?」
 
「別にいいんじゃない? あの大きさじゃ食べきれないし」
 
「じゃあ、一緒に行くか」
 
 こうして三人で都市の外で宴会することになった。狩りに出かける準備を行い、都市外に向かう途中で他のハンターたちはどこに行くんだ? 今日もあの湖畔にいるのか? などしきりに聞かれたのでその予定だと答えるとハンターたちは満足したのか、どこかに行ってしまった。
 
「ねぇ、もしかして・・・」
 
 ナミが察していた。俺も同じ答えだ。
 
「だろうな」
 
「え、どういうことですか?」
 
「宴会することになる」
 
 バーべに先日の状況を話すとそれなら車出します、という事になった。そして、どうせなら飲み物買っていきましょうとナミが言い出し、酒場で酒樽を購入することになった。ついでに調味料とかも買い出しを行って、市場をぶらついていると複数の鬼人などに絡まれる事になった。
 
「あんたか、魔核ランキングにのっていたレンツという角無しの凄腕料理人は」
 
 料理人・・・?
 
「そうよ、何か文句ある? うちの料理人に文句あるなら出るとこ出るわよ」
 
 ナミ、俺はいつから料理人になったんだ? あとちょっと待ってくれ話をややこしくしないでくれ。
 
「こいつのせいで、ハンターたちが店に寄り付かなくなった。聞けば今まで食っていたものにいちゃもんはつけるわ、腐ってるわけじゃねぇのに腐ってるもの出すなとか、お前ら何してくれてんだ? ああん?」
 
 とんだ逆切れだった。
 
「ふん、不味い物出してる自覚がなかったのかしら?」
 
 おい、煽るなナミと目くばせするものの、任せて頂戴と頷いた。これ絶対わかってない。
 
「あっち側にある湖近くで本当の料理というのを見せてあげるから、来なさい。まあ、どうせ客も来ないだろうし暇だから、来れるわよね? もしかして、怖くてお外に出れないならハンターたちと一緒に来ればいいわ」
 
「なんだとゴルァ!」「行ってやろうじゃねえか!!」
 
 険悪な雰囲気の中、ナミは煽るだけ煽った。
 
「じゃあ、先に行って準備するから、あとでね。暇なあんた達と違うから~」
 
 ナミは絶好調だった。ふと、俺が冷静というかここまでカッカしていないのは、精神安定剤を投与されたからだと気づいた。生身のサイキッカーのナミはサイボーグではないので、ストレスをもしかしたらため込んでいたのかもしれない。
 
「あ、あの・・・大丈夫なんですか?」
 
 バーべが心配になり、俺に聞いてきた。知らん。
 
「さぁな、なんとかなるだろう」
 
 適当に返事をし、車に諸々詰め込み、場所を指示して湖がある場所へ向かった。途中巨大生物がこちらを見つけ、襲い掛かろうとしたが、ナミのぶち切れオーラに当てられ進路変更していく姿を見た時は引いた。これはナミに美味い物を食わせないとサイキックが暴走するか爆発してヤバそうだと思った。
 
 湖につくと、すでにハンターたちがいた。見知らぬハンターたちが大半で、狩場を先にとられたのかと思い確認することにした。
 
「な、なぁ・・・あんたたちが凄腕料理人レンツさんたち一行かい?」
 
 今まで見てきた鬼人の中で大きく、角も太く、筋肉もなかなかすばらしいものを持っていた。俺もあんな筋肉を着たい。
 
「凄腕かは知らないが、俺はレンツだ。何かようか? もしかしてここで狩ったりしちゃダメなのか?」
 
「いやとんでもねぇ! ここに狩った獲物を持って来れば捌いて特上の料理を出してくれるって昨日聞いてな。あれを料理するなんて嘘だと思っていたんだが、本当にあのでかいやつを捌いて食うのか?」
 
「ああ、そうだが」
 
 その返答に見知らぬハンターたちは驚愕していた。
 
「レンツ~、そちらの方々は? なに喧嘩?」
 
 まて、ややこしくしないでくれ。喧嘩じゃない、話し合いしてるだけだ。ナミは早く美味しい物を食べたいのか、機嫌が悪くなっていた。その雰囲気に当てられたのか見知らぬハンターたちは半歩後ろに下がるぐらいだった。
 
「先日の宴会で料理について、聞いてきただけだ。問題ない」
 
「そ、じゃあ、ここで別に狩りをしてもいいってことよね?」
 
 ナミと話しをしてるのに、ナミの目線は見知らぬハンターたちの方に向いていた。これはお前らどっか行けよ、邪魔するならヤるぞ? っていう感じだ。その相手に俺も入ってそうなくらいに身体が重い。サイキックで圧もかけてきてる。
 
「「「「はい、問題ないです!」」」
 
 そして、見知らぬハンターたちは、そそくさとどこかへ行ってしまった。それにしてもなんだったんだろう、と思った。気を取り直して、さっさと巨大生物を狩って、捌いて飯にしないとな。
 
「昨日の湖から出てきた巨大生物はもういないのかしら? ちょっとレンツ上空から湖を見て大きな影とかないか見てみて」
 
「え」
 
 俺は心の準備もなく、上空に飛ばされた。ものすごい重力が身体にかかるが、サイボーグなので問題はない。
 
 ストレス感知、精神安定剤を投与します。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...