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このまま逃げ切れるのか?
ベェスチティが押し寄せてくる中で銃で圧倒はしているものの、数では相手の方が多い。物量で押し寄せてきた場合、死体を壁にして近寄り、捕らわれるか殺されるだろう。
銃の発射音が高性能サイレンサーによって、抑えられるためベェスチティのポキポキと動くたびになる音も聞こえていた。近寄られた場合はその音がある方向を注意すると見つけることができ、たとえ建物の中だろうと僕は銃を撃ち、対処した。
視界の隅に映っている生存確率が30%から上がらないままで僕は不安がさらに増していた。いったい何を見落としたのだろうか、自問した時に臓器の塊を撃てなかった自分を思い出した。今のこの状況はもしかしたら違った形になっていたかもしれないと思ったが、それがどういう状況かは想像はできなかった。
――痛いよ。
どこからか声が聞こえた。それは僕だけに聞こえたわけじゃなく、ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリにも聞こえていた。その声を聞いて、各自が銃を撃つのを止めた。するとポキポキという音も消え、かすかに聞こえたような声が再度聞こえた。
――やめて。
聞き覚えのある声だった。
「アカネちゃん?」
マナチが反応し、その声に応えた。僕はこれは罠だと思ったが、罠だとは言えなかった。たった一言、その言葉が口から出なかった。
――マナチ、マナチ……。
ベェスチティが最初に言葉を発した時は、二つの声が重なるような聞き取りずらく、ひどく気味が悪いものだった。しかし、今聞こえてきている声と喋り方は会話が出来るようなものだった。
その声がどこから聞こえているのか、僕はあたりを探していた。どこからでも聞こえるような、まるで全方位から聞こえてくるような感じだったからだ。
「どこ、どこにいるの?」
――一緒に、なろう。
ベェスチティの死体だと思っていたもの、正確には頭が潰されていないものが気が付いたらアカネの顔になっていた。いつ変わったのか気が付かなかった。
「ヨーちゃん、どうする?」
ムッツーが僕に不安げに聞いてきた。僕はすぐには答えが出なかった、本当はわかってるのに、答えを口に出せなかった。
「くっ――」
アカネの顔で、アカネの声を発してるベェスチティの頭部を撃て、と言えなかった。アカネは死んだ、だが、アカネの顔をしたベェスチティはなんだ?
――仲間、あたしたちはネズミを一緒に殺した仲間。
背筋に嫌な汗が流れ、手先が思うように動かない。ヒヤリと全身を襲う冷たさが頭のてっぺんからつま先にかけて流れているようだった。異様に息苦しく、口の中がカラカラに乾いていくようだった。
――生まれかわった。とても気持ちいいよ。
「ヨーちゃん、逃げましょう。ダメよ、聞いちゃ……みんな聞いちゃダメよ」
タッツーが汗だくになっていた。顔は汗が滴っており、髪の毛も汗によって湿っていた。
「タ、タッツー」
彼女はずっとハルミンを背負い、歩いていた。途中、休憩もせずにただひたすら前に進んでいた。今ここで立ち止まるほどの理由はあるのか、いやない。助けなきゃいけないのは、ハルミンや自分たちだ。今聞こえているアカネのようなベェスチティはアカネではない。
僕はクリスベクターカスタムブレイクスルーを構え、ベェスチティのアカネに扮している頭部に向けて撃った。見えている範囲の全てを撃ち続けた。
――やめて、助けて、やめて、助けて。
繰り返される声を無視し、僕は声がする全てのベェスチティの頭部を撃った。
「ヨ、ヨーちゃんっ」
マナチが僕に声をかけた時には、すでにアカネの声を発するベェスチティはいなくなっていた。
「行こう、可能な限り頭を狙って倒そう」
僕たちは立ち止まっていた足をまた一歩一歩と進めた。それと同時に、ポキポキという音と共にベェスチティが包囲を再会してきた。
人ではない別の生物とはいえ、人の顔を撃つというのは思いのほかに息苦しさがした。人を殺した事はないし、人を殺したわけでもないのに、人に扮したものを殺した事が思った以上に重く感じた。これが重く感じるのは何なのか、身体と心が何か締め付けてくるような感じがした。
それでも今は前に進むしかない、ここから生き延びないと思えたのは僕以外にも戦ってくれる仲間がいる事で前に進めた。もしかしたら、ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリも感じている事かもしれない。せめて、僕は彼女たちを支えられるように強くなりたい。
再びベェスチティを倒しつつ、僕たちは前に進んだ。僕はあたりを見渡しながら進み、ベェスチティがなぜあのタイミングでアカネの声で僕たちに接触してきたのか気づいた。
「し、しまった」
全方位、ベェスチティの死体で埋め尽くされていた。平坦な歩く場所がなく、ベェスチティの死体を踏んづけて進まないといけなくなっていた。とてもじゃないがタッツーはハルミンを抱えたまま進むことは困難だろう。また、そんな足場が悪い状態でどうやって気を失ったハルミンを抱えて超えればいいんだ。
ベェスチティの死体を乗り越え、まだ僕たちを包囲しようと迫ってきていた。
「ヨーちゃんどうしたの?」
マナチが銃を撃ちながら聞いてくる。
「何がしまった、なんだ? どうした?」
ムッツーも前に進みながら聞いてきた。
「あ、まさか……」
ムッツーは正面から迫るベェスチティとベェスチティの死体で光りの方に向かうルートが塞がれている事に気づき、左右と後ろも同じ状況であると察したようだった。
「ああ、そのまさかだ……死体で囲まれた」
ベェスチティが押し寄せてくる中で銃で圧倒はしているものの、数では相手の方が多い。物量で押し寄せてきた場合、死体を壁にして近寄り、捕らわれるか殺されるだろう。
銃の発射音が高性能サイレンサーによって、抑えられるためベェスチティのポキポキと動くたびになる音も聞こえていた。近寄られた場合はその音がある方向を注意すると見つけることができ、たとえ建物の中だろうと僕は銃を撃ち、対処した。
視界の隅に映っている生存確率が30%から上がらないままで僕は不安がさらに増していた。いったい何を見落としたのだろうか、自問した時に臓器の塊を撃てなかった自分を思い出した。今のこの状況はもしかしたら違った形になっていたかもしれないと思ったが、それがどういう状況かは想像はできなかった。
――痛いよ。
どこからか声が聞こえた。それは僕だけに聞こえたわけじゃなく、ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリにも聞こえていた。その声を聞いて、各自が銃を撃つのを止めた。するとポキポキという音も消え、かすかに聞こえたような声が再度聞こえた。
――やめて。
聞き覚えのある声だった。
「アカネちゃん?」
マナチが反応し、その声に応えた。僕はこれは罠だと思ったが、罠だとは言えなかった。たった一言、その言葉が口から出なかった。
――マナチ、マナチ……。
ベェスチティが最初に言葉を発した時は、二つの声が重なるような聞き取りずらく、ひどく気味が悪いものだった。しかし、今聞こえてきている声と喋り方は会話が出来るようなものだった。
その声がどこから聞こえているのか、僕はあたりを探していた。どこからでも聞こえるような、まるで全方位から聞こえてくるような感じだったからだ。
「どこ、どこにいるの?」
――一緒に、なろう。
ベェスチティの死体だと思っていたもの、正確には頭が潰されていないものが気が付いたらアカネの顔になっていた。いつ変わったのか気が付かなかった。
「ヨーちゃん、どうする?」
ムッツーが僕に不安げに聞いてきた。僕はすぐには答えが出なかった、本当はわかってるのに、答えを口に出せなかった。
「くっ――」
アカネの顔で、アカネの声を発してるベェスチティの頭部を撃て、と言えなかった。アカネは死んだ、だが、アカネの顔をしたベェスチティはなんだ?
――仲間、あたしたちはネズミを一緒に殺した仲間。
背筋に嫌な汗が流れ、手先が思うように動かない。ヒヤリと全身を襲う冷たさが頭のてっぺんからつま先にかけて流れているようだった。異様に息苦しく、口の中がカラカラに乾いていくようだった。
――生まれかわった。とても気持ちいいよ。
「ヨーちゃん、逃げましょう。ダメよ、聞いちゃ……みんな聞いちゃダメよ」
タッツーが汗だくになっていた。顔は汗が滴っており、髪の毛も汗によって湿っていた。
「タ、タッツー」
彼女はずっとハルミンを背負い、歩いていた。途中、休憩もせずにただひたすら前に進んでいた。今ここで立ち止まるほどの理由はあるのか、いやない。助けなきゃいけないのは、ハルミンや自分たちだ。今聞こえているアカネのようなベェスチティはアカネではない。
僕はクリスベクターカスタムブレイクスルーを構え、ベェスチティのアカネに扮している頭部に向けて撃った。見えている範囲の全てを撃ち続けた。
――やめて、助けて、やめて、助けて。
繰り返される声を無視し、僕は声がする全てのベェスチティの頭部を撃った。
「ヨ、ヨーちゃんっ」
マナチが僕に声をかけた時には、すでにアカネの声を発するベェスチティはいなくなっていた。
「行こう、可能な限り頭を狙って倒そう」
僕たちは立ち止まっていた足をまた一歩一歩と進めた。それと同時に、ポキポキという音と共にベェスチティが包囲を再会してきた。
人ではない別の生物とはいえ、人の顔を撃つというのは思いのほかに息苦しさがした。人を殺した事はないし、人を殺したわけでもないのに、人に扮したものを殺した事が思った以上に重く感じた。これが重く感じるのは何なのか、身体と心が何か締め付けてくるような感じがした。
それでも今は前に進むしかない、ここから生き延びないと思えたのは僕以外にも戦ってくれる仲間がいる事で前に進めた。もしかしたら、ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリも感じている事かもしれない。せめて、僕は彼女たちを支えられるように強くなりたい。
再びベェスチティを倒しつつ、僕たちは前に進んだ。僕はあたりを見渡しながら進み、ベェスチティがなぜあのタイミングでアカネの声で僕たちに接触してきたのか気づいた。
「し、しまった」
全方位、ベェスチティの死体で埋め尽くされていた。平坦な歩く場所がなく、ベェスチティの死体を踏んづけて進まないといけなくなっていた。とてもじゃないがタッツーはハルミンを抱えたまま進むことは困難だろう。また、そんな足場が悪い状態でどうやって気を失ったハルミンを抱えて超えればいいんだ。
ベェスチティの死体を乗り越え、まだ僕たちを包囲しようと迫ってきていた。
「ヨーちゃんどうしたの?」
マナチが銃を撃ちながら聞いてくる。
「何がしまった、なんだ? どうした?」
ムッツーも前に進みながら聞いてきた。
「あ、まさか……」
ムッツーは正面から迫るベェスチティとベェスチティの死体で光りの方に向かうルートが塞がれている事に気づき、左右と後ろも同じ状況であると察したようだった。
「ああ、そのまさかだ……死体で囲まれた」
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