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入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛

18_昔から対策していたのに?

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 お互いのペットと戯れ、ペット自慢大会に実質なってしまった先日。今日もサロンの個室に二人がいた。
「お互い、生き残るために協力していけないかな?」
 幼少の頃から、記憶を取り戻していて何かしら対策をしているのなら、何とかなるのではないかとユウヴィーは一日経って思ったのだった。
 
「この世界の未来がどうなるのか、国同士の関係や根本的な原因となる瘴気とは何かについて、ユウヴィーは知ってるの?」
「うぐっ」
 質問され、前世の記憶からどの攻略対象者とくっついても殉愛という死が待ち受け、その後で世界は平和になったというざっくりとした事しか思い出せていなく、言葉が詰まってしまったのだった。ドはまりしていたとはいえ、世界設定をちゃんと把握していたわけではない。思い出したとしても、キャラクターやシナリオの事くらいだろう。それはエリーレイド自身もそうであった。
 
「私も人の事は言えません、ですがやれることはし続けてきました。ですがどうにもならない強制力が働いている気がしています。なので、私は腹をくくりました」
 
 エリーレイドはキッとし、強い目力を込めたまなざしをユウヴィーに向けた。
 
「悪役令嬢として、ヒロインの引き立て役として役を演じきります!」
 
 それは紛れもない宣戦布告であった。エリーレイドはすでにいろいろとしているが、ユウヴィーはあまり理解してないため、これが初めて「生死をかけた喧嘩」を売られたという事を彼女の中で意味するものだった。
 
「私にだって策がありますし!」
 ユウヴィーは負けじと言い返す。
「ふっ、ブラフね」
 あっさり嘘だとバレる。策などなく、場当たりかつ感情的な行動であった。
(即バレした。恥ずかしい)
「くぅぅぅ……」
 
 そこでユウヴィーは、悪役令嬢のエリーレイドがどうなるのかを思い出す。
 
「あれそういえば、今婚約中のアライン殿下とくっつくと殉愛……」
 エリーレイドの目元がピクピクン動いたのだった。
 
「結婚の予定は、確か原作だと卒業後……つまり私が誰ともくっつかなかった時だ!」
 
「チィッ!」
 令嬢とは思えない舌打ちをするエリーレイドとヒロインとは思えない悪どい表情をするユウヴィーだった。
 
「そうだとしても何も問題はないわ、爵位が違えば、政治的な根回しによる政略結婚を攻略対象者とさせることだって出来ることをお忘れなくゥゥゥ」
 そんなことが可能であった場合、学園に入学前にすでに対策としてエリーレイドはしていた為、嘘である。
「ふ、ふ~ん。も、ももしそうなっても瘴気問題を解決して殉愛そのものを回避してやるんだから!」
 ユウヴィーは動揺していた。とても動揺していた。
「あっら~、そんなことをしなくても殉愛パワーで世界の瘴気を消滅させてくれた方がせ界平和になるけれどぉ?」
「死んでたまるかー!」
「こっちこそ死んでたまるもんですか!」
 
 お互いの決意表明をし合い、意思疎通もれた事で解散となった。
 どのシナリオエンドも死に直結しているため、何としても避けたい二人だった。ヒロインの方が攻略対象者分の死亡フラグが存在している為、不利ではあるが、ユウヴィーは残念な事に気づけないでいた。
 
 前世の記憶を完璧に思い出せていなかったからだ。
 
+
 
 サロンの個室を出て、自分の部屋に戻るさなか、ユウヴィーは貴族教育で刷り込まれた貴族の表情と仕草に切り替わっていた。
(せっかく一緒に協力してって誘ったのに、くそぉ……なんとしても回避してやるんだから!)
 
 ユウヴィーの熱い思いは、前世の虐げられたブラックな仕事環境の時の感情だった。理不尽な要求、現場改善の提案の一蹴、度重なる終電と泊まり込みなどの記憶が周りの風景にポスターのように現れたのだった。
 
(負けない、負けてたまるものか、過労死じゃなくて、寿命を全うして生を謳歌するんだ)
 
 前世の記憶と今の記憶が混じり合い、転生してきてからの狩猟経験や領地内の浄化活動といった弱肉強食の経験が彼女を強くさせていた。
 
 それは幼少の頃から記憶を取り戻したエリーレイドと違う強さであった。
 
 光の魔法を使い、瘴気汚染末期の領民を完全浄化した時のアドレナリンの分泌は彼女の中でとてつもなく達成感があり、またそういった状況は彼女の中で強くさせていた。瘴気汚染された動物が完全に魔物と化し、領地の村を襲っている所に彼女はかりだされ、貴族としての責務を幼少の頃からおこなってきていた。
 
 貧乏貴族特有の人を雇うお金がないから、自分たちが出向いて解決しないと回らないというものだったが、ユウヴィーを強くしていたのだった。それも光の魔法というチートを持っていたのもあるが、前世の鬱憤を晴らすような形で、転生後のパワーになったといっても過言ではなかった。
 
 だが、本人は気づいていない。
 
(でも、恋愛は諦めたくないィィィ! 恋してェェ!)
 
 その心の叫びの感情だけは、斜め後ろからついてきてる使い魔のスナギモは察知し、びくりと震えたのだった。 

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