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入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛
20_避けて避けて避けて避けて、回って回って回って。
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次の日、ユウヴィーは図書館ではなく、対魔物区画に居た。学園長に許可をとり、不本意ながら悪役令嬢のエリーレイドに何のために利用するのか限りなく嘘のような本当のことを説明したのだった。
「自分の領地に居た頃の光の魔法や身体の感覚を取り戻したいと思い、申請許可を出しました。いざという時に身体が鈍っていてはダメだと考えまして」
訝しげな表情をしたエリーレイドだったが、ちゃんと報告をしたことに評価し、応援してくれたのだった。
(クックックッ、これで舞踏会に向けて訓練が出来る)
舞踏会であって、武道会ではない。
対魔物区域は、瘴気に汚染された動物が完全な魔物をしとめる訓練場だ。魔物となった場合、殺すしかないため、その魔物をしとめるのを学ぶ区画である。実戦をおこなう場所であるため、非情に危険であり必ず各国の騎士在住し、訓練時には付き添うようになっている。
学生のみでの利用は禁止されており、無許可での使用は即刻退学処分、かつ所属している国からも何かしら処分が下る区域となっていた。
ユウヴィーはここで訓練し、舞踏会に備えるつもりだった。
実際に、彼女は自分のの領地で魔物との戦闘経験があるため、身体の感覚を取り戻すというのは正しかったのだった。回避や実際に接触した際の受け身、ステップの確認を重点的におこなっていた。
付き添いの騎士は最初はユウヴィーが何をしているのか理解できず、自殺行為をしているのかと叱ったが彼女が無傷であり、肩で息をしておらず、しかも全く怖がってない事から次第に底知れない力量を感じ恐怖するのだった。
この一件でユウヴィーという彼女の存在は対魔物区域の騎士たちの間で「戦乙女」「戦聖女」「不可侵の君」などと噂されたのだった。
(よし、これで転ばされても「空中」で受け身もとれるし、ダンプカークラスの突進でも受け身が出来るわね)
対魔物区域には、様々な魔物化したものが厳重に保管されている。手のひらに乗るようなネズミから、大の大人が五人くらい並べたくらいのとてつもない大きなクマや牛の魔物も保管されていた。ユウヴィーは小さい魔物から訓練し、次第に対魔物区域に在住している全騎士が付き添わないといけない巨大な魔物も難なく対応したのだった。
それが彼女がダンプカークラスの突進でも受け身できると思っている自信だった。
そして、そんな危険な魔物は対魔物区域に保管されているのは稀有だった。単純にそこまで成長した魔物は瘴気が強く、通常の処理では瘴気が拡散し、別の魔物を強化させたり、瘴気汚染が発生する。しかし、ユウヴィーの場合は光の魔法の浄化があるため、特別に許可が降りているのだった。
円形の闘技場のような場所で、瘴気が漏れ出ないように結界が張られている中、いつでも全騎士が助けに入れる陣形と体制を維持しながらも、ユウヴィーの華麗な動きは見ているものを魅了していた。特別に許可が降りた巨大なクマと牛を掛け合わせたようなベヒーモス種と呼ばれる魔物だった。皮膚が非情に固く、体毛がはえているもののまばらで固い。ナイフより切れ味のあるとされる体毛は、触れただけでも腕など引き裂かれると言われてた。また頭部からうねりのある角、口から生えた牙、前足と後ろ足の爪、意思をもったような鞭のように動く尾を持っていた。
「ふふっ、やっぱり身体を動かすのって気持ちいい」
彼女のいい笑顔は、見ている騎士たちの度肝を抜いていた。息をするのを忘れるほど、美しく舞いながら溢す笑みは騎士たちの目に焼き付けていた。
そして、わざとと思える動きから、魔物と接触し、吹き飛ばされるユウヴィーに周りの騎士たちは助けに入ろうとする者もいたが、空中でまるでそれが予定調和のように回転し、地面にぶつかると思いきや綺麗に着地し、優雅にお辞儀をしたのだった。
ドレスを着ていないのに、まるでドレスを着てスカートを摘まみ上げ、お辞儀していた。その姿にドレスを着ている幻を見る騎士も居たのだった。
その姿に激高する魔物は大きな雄たけびを上げ、結界そのものが揺れた。
「よし、次は光の魔法でどんな事が出来るか再確認と検証ね」
ユウヴィーは気合を込めた表情で魔物と向き合った。その余裕ある表情を見たベヒーモスの表情は憤怒にまみれていた。知能があるため、ユウヴィーが手加減し、遊んでいるとわかっていた。
「グオオオオオォォォ!!!」
ベヒーモスは吠えた。
ユウヴィーは武器も装備せず、防具も最低限の皮であしらった軽装だった。そこに突進してくるベヒーモスに対して、彼女は無防備に立っているだけだった。
騎士たちもその様子に困惑していた。今までそんな風に隙だらけな状態を見た事がなかったからだ。
誰かが消え去るような声で言った。
「あ、危ない」
それはもうすでにベヒーモスの角がユウヴィーに突き刺さった時の事だった。
「あ、ああっ!」
騎士の誰かが悲鳴のような声を上げた。
だが、その瞬間に突き刺さったと思われるユウヴィーが霧散したのだ。まるで最初からそこに居なかったかのように消えた。突き刺した感触が無かったベヒーモスは、突き刺した後に首を振り、ユウヴィーを探した。だが、どこにも見当たらなかった。それは騎士たちも同じで、彼女の姿が見つけられなかった。
「こっちよ、こっち」
彼女は、光の魔法で幻を見せ、自身を光の屈折で周りから見えないようにしていたのだった。
(光を屈折させる事がやっぱり出来た。あとは光そのものの光量調整、効果範囲、色彩変化、浄化力の検証ね)
魔法の訓練をベヒーモス相手におこない、自身の光の魔法を確認していった。
一通り訓練し終えた後、ベヒーモスは完全に浄化され、人への害意が無くなっていた。初の人畜無害のベヒーモスが誕生し、知能もあり、人に対して従順な状態になっていた。顔つきもどこか愛らしくなっており、凶悪さは無くなっていたのだった。研究区画から状態確認の依頼時にも着ぐるみで誰かが中に人が入っていて、謀っているのではないかと言わしめる程であった。
この一件でユウヴィーは騎士たちから「ベヒーモス殺し」やら「浄化調教師」といった風に影で言われる事になった。
ユウヴィーがその事を知らないのは言うまでもない。
「自分の領地に居た頃の光の魔法や身体の感覚を取り戻したいと思い、申請許可を出しました。いざという時に身体が鈍っていてはダメだと考えまして」
訝しげな表情をしたエリーレイドだったが、ちゃんと報告をしたことに評価し、応援してくれたのだった。
(クックックッ、これで舞踏会に向けて訓練が出来る)
舞踏会であって、武道会ではない。
対魔物区域は、瘴気に汚染された動物が完全な魔物をしとめる訓練場だ。魔物となった場合、殺すしかないため、その魔物をしとめるのを学ぶ区画である。実戦をおこなう場所であるため、非情に危険であり必ず各国の騎士在住し、訓練時には付き添うようになっている。
学生のみでの利用は禁止されており、無許可での使用は即刻退学処分、かつ所属している国からも何かしら処分が下る区域となっていた。
ユウヴィーはここで訓練し、舞踏会に備えるつもりだった。
実際に、彼女は自分のの領地で魔物との戦闘経験があるため、身体の感覚を取り戻すというのは正しかったのだった。回避や実際に接触した際の受け身、ステップの確認を重点的におこなっていた。
付き添いの騎士は最初はユウヴィーが何をしているのか理解できず、自殺行為をしているのかと叱ったが彼女が無傷であり、肩で息をしておらず、しかも全く怖がってない事から次第に底知れない力量を感じ恐怖するのだった。
この一件でユウヴィーという彼女の存在は対魔物区域の騎士たちの間で「戦乙女」「戦聖女」「不可侵の君」などと噂されたのだった。
(よし、これで転ばされても「空中」で受け身もとれるし、ダンプカークラスの突進でも受け身が出来るわね)
対魔物区域には、様々な魔物化したものが厳重に保管されている。手のひらに乗るようなネズミから、大の大人が五人くらい並べたくらいのとてつもない大きなクマや牛の魔物も保管されていた。ユウヴィーは小さい魔物から訓練し、次第に対魔物区域に在住している全騎士が付き添わないといけない巨大な魔物も難なく対応したのだった。
それが彼女がダンプカークラスの突進でも受け身できると思っている自信だった。
そして、そんな危険な魔物は対魔物区域に保管されているのは稀有だった。単純にそこまで成長した魔物は瘴気が強く、通常の処理では瘴気が拡散し、別の魔物を強化させたり、瘴気汚染が発生する。しかし、ユウヴィーの場合は光の魔法の浄化があるため、特別に許可が降りているのだった。
円形の闘技場のような場所で、瘴気が漏れ出ないように結界が張られている中、いつでも全騎士が助けに入れる陣形と体制を維持しながらも、ユウヴィーの華麗な動きは見ているものを魅了していた。特別に許可が降りた巨大なクマと牛を掛け合わせたようなベヒーモス種と呼ばれる魔物だった。皮膚が非情に固く、体毛がはえているもののまばらで固い。ナイフより切れ味のあるとされる体毛は、触れただけでも腕など引き裂かれると言われてた。また頭部からうねりのある角、口から生えた牙、前足と後ろ足の爪、意思をもったような鞭のように動く尾を持っていた。
「ふふっ、やっぱり身体を動かすのって気持ちいい」
彼女のいい笑顔は、見ている騎士たちの度肝を抜いていた。息をするのを忘れるほど、美しく舞いながら溢す笑みは騎士たちの目に焼き付けていた。
そして、わざとと思える動きから、魔物と接触し、吹き飛ばされるユウヴィーに周りの騎士たちは助けに入ろうとする者もいたが、空中でまるでそれが予定調和のように回転し、地面にぶつかると思いきや綺麗に着地し、優雅にお辞儀をしたのだった。
ドレスを着ていないのに、まるでドレスを着てスカートを摘まみ上げ、お辞儀していた。その姿にドレスを着ている幻を見る騎士も居たのだった。
その姿に激高する魔物は大きな雄たけびを上げ、結界そのものが揺れた。
「よし、次は光の魔法でどんな事が出来るか再確認と検証ね」
ユウヴィーは気合を込めた表情で魔物と向き合った。その余裕ある表情を見たベヒーモスの表情は憤怒にまみれていた。知能があるため、ユウヴィーが手加減し、遊んでいるとわかっていた。
「グオオオオオォォォ!!!」
ベヒーモスは吠えた。
ユウヴィーは武器も装備せず、防具も最低限の皮であしらった軽装だった。そこに突進してくるベヒーモスに対して、彼女は無防備に立っているだけだった。
騎士たちもその様子に困惑していた。今までそんな風に隙だらけな状態を見た事がなかったからだ。
誰かが消え去るような声で言った。
「あ、危ない」
それはもうすでにベヒーモスの角がユウヴィーに突き刺さった時の事だった。
「あ、ああっ!」
騎士の誰かが悲鳴のような声を上げた。
だが、その瞬間に突き刺さったと思われるユウヴィーが霧散したのだ。まるで最初からそこに居なかったかのように消えた。突き刺した感触が無かったベヒーモスは、突き刺した後に首を振り、ユウヴィーを探した。だが、どこにも見当たらなかった。それは騎士たちも同じで、彼女の姿が見つけられなかった。
「こっちよ、こっち」
彼女は、光の魔法で幻を見せ、自身を光の屈折で周りから見えないようにしていたのだった。
(光を屈折させる事がやっぱり出来た。あとは光そのものの光量調整、効果範囲、色彩変化、浄化力の検証ね)
魔法の訓練をベヒーモス相手におこない、自身の光の魔法を確認していった。
一通り訓練し終えた後、ベヒーモスは完全に浄化され、人への害意が無くなっていた。初の人畜無害のベヒーモスが誕生し、知能もあり、人に対して従順な状態になっていた。顔つきもどこか愛らしくなっており、凶悪さは無くなっていたのだった。研究区画から状態確認の依頼時にも着ぐるみで誰かが中に人が入っていて、謀っているのではないかと言わしめる程であった。
この一件でユウヴィーは騎士たちから「ベヒーモス殺し」やら「浄化調教師」といった風に影で言われる事になった。
ユウヴィーがその事を知らないのは言うまでもない。
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