27 / 46
二年目 恋よ、愛てにとって不足はない
26 君も同じだろう?
しおりを挟む
いつもの図書館で、ユウヴィーは戸惑っているリンクに笑いかけていた。一方、リンクは口元を抑えながら困ったような表情をし、沈黙を保っていた。
「君はどうやら気づいていた、ようだね」
「ええ、まあ……」
前世の記憶からピーンと思い出したとは言えないユウヴィーだった。
「その……いや、何でもない」
リンクは急ぎ足でその場を去っていった。ユウヴィーは特段引き留めようとは思わなかった。彼女にはそれよりも気になる事があったからだ。
(さて、動物が瘴気に汚染されて魔物になることと、魔物が浄化されて動物に戻る事について思い返してみる。ベヒーモスを浄化したことで動物に戻ったことが研究区画で盛り上がっていたけれど、ちゃんと調べなおさないと……)
彼女が勤勉であるのは、生死がかかっているからだった。瘴気という意味不明なものが光の魔法によって浄化される。
(他の魔法でも浄化できたりするけれど、光の魔法ほど便利じゃない……)
ユウヴィーは浄化についての本を開き、そこに書かれれている光の魔法以外でも可能な浄化について読み直していた。
そこに書かれている事は、瘴気に汚染された水を浄化する方法だった。水の魔法では汚染された水そのものを魔法で分離させるというもので、水の量に対して力の負荷が高くなり向かないと書かれていた。火は単純に水そのものを沸騰させ、瘴気そのものを火力で浄化すると書かれていた。風、地、影などは汚染された水には実例が存在しないと記載されていた。
(水や火の魔法の使い方を読むと、やっぱり瘴気は視覚化されたウイルスなんじゃないかなとつくづく思う。人間に対して悪意があるウイルスはこの世界では視覚化され、黒い靄のような感じになっている、と思って概ね間違って無さそうだ)
ユウヴィーは瘴気に対して自身の仮説が正しかったと感じていた。
ハマト国のリンクの事はすっかり頭から抜け、彼女はその日勉強に勤しむのだった。
+
翌日、ユウヴィーは昼休みの食堂にて日替わりランチを食べていた。
(乙女ゲームの世界だけあって、食は瘴気という驚異がある中で前世とほとんど変わらないような水準の食べ物であってよかったと思う)
パンとスープと肉野菜炒めを食べながら、彼女は思っていた。
「やぁ、昨日はありがとう。助かったぜ」
「感謝だしー」
ハマト国のリンクとギャル風な婚約者が食事中のユウヴィーの所に現れたのだった。口の中のものを咀嚼し、ナプキンで口元を軽くふいて、彼女は頭を下げた。すると二人は目の前の空いている椅子に座り、話はじめたのだった。
「一週間ほどで使い魔候補の動物が本国から届く事になったよ」
「そぉそ~! めちゃんこかわいいよ。管狐っていうニョロっとしてモフモフしてるの、ユウヴィーの使い魔のしっぽみたいな動物なのよ」
「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ごきげんよう」
ユウヴィーにとって知っている人の声が耳障りに聞こえた。
(絶対、そろそろ来ると思った)
「ごきげんよう、エリーレイド様」
ぴりっとした空気が一瞬だけ形成されるものの、エリーレイドは人懐っこい笑みをリンクとギャル風な婚約者に向けた。
「お久しぶりです、リンク様とその婚約者様」
「お久しぶりです」
「お久~」
ユウヴィーは互いに会釈し合っていた所を見て、すでに関係を持っていたのかと警戒するのだった。
「聞けば、使い魔をご要望と噂を聞きまして、一助になればと航空便を手配させて頂こうかと思いました」
「はっはっはっ、耳が早いね。昨日の事だぜ? 確かにサンシェード家の航空便なら数日もかからないだろうけれど、気長に待つよ。なんたってこれはわがままだしね」
「そぉそ、さすがにそこまでしてもらうのは、なんていうか……気が引けちゃうよぉ」
「あら、余計な気を使わせてしまうとは公爵令嬢として品がありませんでしたね。それは大変失礼いたしましたわ。もし何かあればお気軽にお声掛けしてくださいませ」
ユウヴィーは、彼女が何を企んでいるのか見抜けずにいた。ただの社交辞令の為に来ただけなのか、それとも何か意図があるのか、測れないでいたのだった。
「では、ご歓談中の所失礼いたしますわ、ごきげんよう」
優雅な一礼をし、エリーレイドは去っていった。いつもならクドクドと嫌味ったらしい説教をしていくのだが、今日は去れなかった事にユウヴィーは何か肩透かしをくらうのだった。
「あ、待って待って~あーしも一緒に行く、ちょっと聞きたい事あるんだ」
ギャル風な婚約者は席を立ち、エリーレイドの方に着いていったのだった。
皇子と二人っきりになり、他愛のない話をすることになり、ユウヴィーはやはり何か違和感を感じていた。彼がなぜ演じているのか、思い出そうとするが思い出せない事にモヤモヤを募らせていた。
リンクはそれに気づき、困った顔をしたが、表情だけはいつもの明るい顔で内面を吐露するのだった。
「私は、愛想がないって言われてね。継承権がないのだから、外交役として国を支えるのが責務なのだから、愛想よくしろと言われたんだ。そこからみんなが望むような人を演じてるんだ」
この時ユウヴィーは前世でプレイした時に、リンクが悲しそうな顔をし、演じている理由を吐露したスチル絵を思い出すのだった。
だが、今の表情は周りに見られてもバレないように明るい表情をして内面を吐露していた。
(そうだったこいつ、不器用真面目だ!! 真面目な性格だが不器用をこじらせて無理やり明るいキャラを作って、心を疲弊して、瞑想してる攻略対象者だ!!)
だが、肝心なイベントが思い出せずにいた。
「それは今まで並々ならぬ努力をされ、皆の期待を背負い、戦ってきたのですね」
「君も光の魔法を使える、という事でそうじゃないのか?」
ユウヴィーは自分自身が光の魔法を使えると言う事で徹底した貴族教育を受けてこの学園に王命で通わされている。国からかなり期待されている事もあり、入学前まではプレッシャーと不安がいっぱいだった事を思い出した。だが、前世の記憶を思い出した事によって、過労死して死んで今度は特定の人と恋愛して成就したら愛が故に死ぬ事でそれどころじゃなかったのだった。
「あ、そういえばそうでした。あはは」
「へっ」
「あっ、失礼しました」
ユウヴィーは思わず、素で答えてしまい。反省するのだった。その表情がリンクとの恋愛フラグであったが、本人は知る由もなかった。
「君はどうやら気づいていた、ようだね」
「ええ、まあ……」
前世の記憶からピーンと思い出したとは言えないユウヴィーだった。
「その……いや、何でもない」
リンクは急ぎ足でその場を去っていった。ユウヴィーは特段引き留めようとは思わなかった。彼女にはそれよりも気になる事があったからだ。
(さて、動物が瘴気に汚染されて魔物になることと、魔物が浄化されて動物に戻る事について思い返してみる。ベヒーモスを浄化したことで動物に戻ったことが研究区画で盛り上がっていたけれど、ちゃんと調べなおさないと……)
彼女が勤勉であるのは、生死がかかっているからだった。瘴気という意味不明なものが光の魔法によって浄化される。
(他の魔法でも浄化できたりするけれど、光の魔法ほど便利じゃない……)
ユウヴィーは浄化についての本を開き、そこに書かれれている光の魔法以外でも可能な浄化について読み直していた。
そこに書かれている事は、瘴気に汚染された水を浄化する方法だった。水の魔法では汚染された水そのものを魔法で分離させるというもので、水の量に対して力の負荷が高くなり向かないと書かれていた。火は単純に水そのものを沸騰させ、瘴気そのものを火力で浄化すると書かれていた。風、地、影などは汚染された水には実例が存在しないと記載されていた。
(水や火の魔法の使い方を読むと、やっぱり瘴気は視覚化されたウイルスなんじゃないかなとつくづく思う。人間に対して悪意があるウイルスはこの世界では視覚化され、黒い靄のような感じになっている、と思って概ね間違って無さそうだ)
ユウヴィーは瘴気に対して自身の仮説が正しかったと感じていた。
ハマト国のリンクの事はすっかり頭から抜け、彼女はその日勉強に勤しむのだった。
+
翌日、ユウヴィーは昼休みの食堂にて日替わりランチを食べていた。
(乙女ゲームの世界だけあって、食は瘴気という驚異がある中で前世とほとんど変わらないような水準の食べ物であってよかったと思う)
パンとスープと肉野菜炒めを食べながら、彼女は思っていた。
「やぁ、昨日はありがとう。助かったぜ」
「感謝だしー」
ハマト国のリンクとギャル風な婚約者が食事中のユウヴィーの所に現れたのだった。口の中のものを咀嚼し、ナプキンで口元を軽くふいて、彼女は頭を下げた。すると二人は目の前の空いている椅子に座り、話はじめたのだった。
「一週間ほどで使い魔候補の動物が本国から届く事になったよ」
「そぉそ~! めちゃんこかわいいよ。管狐っていうニョロっとしてモフモフしてるの、ユウヴィーの使い魔のしっぽみたいな動物なのよ」
「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ごきげんよう」
ユウヴィーにとって知っている人の声が耳障りに聞こえた。
(絶対、そろそろ来ると思った)
「ごきげんよう、エリーレイド様」
ぴりっとした空気が一瞬だけ形成されるものの、エリーレイドは人懐っこい笑みをリンクとギャル風な婚約者に向けた。
「お久しぶりです、リンク様とその婚約者様」
「お久しぶりです」
「お久~」
ユウヴィーは互いに会釈し合っていた所を見て、すでに関係を持っていたのかと警戒するのだった。
「聞けば、使い魔をご要望と噂を聞きまして、一助になればと航空便を手配させて頂こうかと思いました」
「はっはっはっ、耳が早いね。昨日の事だぜ? 確かにサンシェード家の航空便なら数日もかからないだろうけれど、気長に待つよ。なんたってこれはわがままだしね」
「そぉそ、さすがにそこまでしてもらうのは、なんていうか……気が引けちゃうよぉ」
「あら、余計な気を使わせてしまうとは公爵令嬢として品がありませんでしたね。それは大変失礼いたしましたわ。もし何かあればお気軽にお声掛けしてくださいませ」
ユウヴィーは、彼女が何を企んでいるのか見抜けずにいた。ただの社交辞令の為に来ただけなのか、それとも何か意図があるのか、測れないでいたのだった。
「では、ご歓談中の所失礼いたしますわ、ごきげんよう」
優雅な一礼をし、エリーレイドは去っていった。いつもならクドクドと嫌味ったらしい説教をしていくのだが、今日は去れなかった事にユウヴィーは何か肩透かしをくらうのだった。
「あ、待って待って~あーしも一緒に行く、ちょっと聞きたい事あるんだ」
ギャル風な婚約者は席を立ち、エリーレイドの方に着いていったのだった。
皇子と二人っきりになり、他愛のない話をすることになり、ユウヴィーはやはり何か違和感を感じていた。彼がなぜ演じているのか、思い出そうとするが思い出せない事にモヤモヤを募らせていた。
リンクはそれに気づき、困った顔をしたが、表情だけはいつもの明るい顔で内面を吐露するのだった。
「私は、愛想がないって言われてね。継承権がないのだから、外交役として国を支えるのが責務なのだから、愛想よくしろと言われたんだ。そこからみんなが望むような人を演じてるんだ」
この時ユウヴィーは前世でプレイした時に、リンクが悲しそうな顔をし、演じている理由を吐露したスチル絵を思い出すのだった。
だが、今の表情は周りに見られてもバレないように明るい表情をして内面を吐露していた。
(そうだったこいつ、不器用真面目だ!! 真面目な性格だが不器用をこじらせて無理やり明るいキャラを作って、心を疲弊して、瞑想してる攻略対象者だ!!)
だが、肝心なイベントが思い出せずにいた。
「それは今まで並々ならぬ努力をされ、皆の期待を背負い、戦ってきたのですね」
「君も光の魔法を使える、という事でそうじゃないのか?」
ユウヴィーは自分自身が光の魔法を使えると言う事で徹底した貴族教育を受けてこの学園に王命で通わされている。国からかなり期待されている事もあり、入学前まではプレッシャーと不安がいっぱいだった事を思い出した。だが、前世の記憶を思い出した事によって、過労死して死んで今度は特定の人と恋愛して成就したら愛が故に死ぬ事でそれどころじゃなかったのだった。
「あ、そういえばそうでした。あはは」
「へっ」
「あっ、失礼しました」
ユウヴィーは思わず、素で答えてしまい。反省するのだった。その表情がリンクとの恋愛フラグであったが、本人は知る由もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる