異世界から召喚された聖女様が悪役令嬢で~偽聖女の烙印を押された聖女様は女神の化身だった

青の雀

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1.誕生

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「待ってくれ。行かないでくれ。ジェニー!捨てないでくれ」
「あら?わたくしを捨てたのは、殿下の方が先でしてよ?」
「俺は、捨ててなどいない。愛しているジェニファー、君だけをずっと前から、そして今後も」
「嘘ばっかり言わないで。それなら二股をかけていたということですね。神罰をくらえ!」

 ジェニファーは無詠唱で転移魔法を展開し、まばゆいばかりの光と共にシューベルト国から旅立った。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 ジェニファー・ベルリオーズが生まれたのは、今からおよそ18年前のこと。分娩室で、ジェニファーのアタマが出た途端、まばゆいばかりの光が放たれ、深夜のお産だったにもかかわらず、辺りは煌々と輝き、昼間のような明るさだったと言われている。

 生まれてから3時間後には、もう精霊がジェニファーの周りを飛び交っていて、まるであやすような仕草を見せていたという。

 1週間後には、ジェニファーがベビーベッドの上で、指を天井に向けて、くるりと回すと光の輪が現れては消えるを繰り返すようになった。

 1か月後には、自身に浮遊魔法をかけ、宙に浮かぶようになる。初めて、その姿を目の当たりにした乳母は、ショックで寝込む騒ぎとなった。

 3か月後には、ハイハイをはじめ簡単な言葉を発するようになったので、まさしく神童だとの噂が独り歩き始めた。

 まあ、その噂はまんざら嘘でもなかったということが後に証明されることになるのだが、とにかくベルリオ-ズ家は、ジェニファーのお陰で、ずいぶん国内での評判が上がる。

 聖女の呼び声も早いうちからあり、教会の教皇と司祭は何度もベルリオーズ家へ訪ねてくるもののジェニファーにはなかなか会わせてもらえず、無駄足を踏まされた。後にこのことがあんな事件を引き起こすことになろうとは、ベルリオーズ家の誰もが疑いもしなかったこと。

 ジェニファーの生後1年の誕生日には、噂の神童を一目見たいと大勢の招待客で溢れかえり、中には招待されていない者まで押しかけてきた。

 そして案の定、国教会の教皇と司祭もまた、その中に含まれていることは確かなことで。

「今日こそは、ジェニファー嬢の聖女判定をさせていただきますぞ」
「しかし、ジェニーはまだ1歳の誕生日を今日迎えたばかりですので、早すぎではないでしょうか?」
「何を言われる。聖女様になるのに早いも遅いもござらぬ。聖女様というものは、持って生まれた資質がすべてだからだ」

 そこへ薄いピンク色のフリルがあしらわれた上品な小さなドレスを着た可愛らしい公女様が登場する。当然、ハイヒールではないスリッポンタイプの靴を履いていらっしゃる。

「本日は、わたくしの誕生日のために、多くの方が祝福してくださり、まことにありがとう存じます」

「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」
「公女様は、まだ1歳というのに、こんなきちんとした挨拶ができるなんて……、うちのチビはまだおむつをしているぞ」
「うちの子供は、まだハイハイを始めたばかりだ」
「信じられない!まさしく神童だ」
「それに聖女様の素質もあると言われている。もしそれが本当なら、我がシューベルト国もこの先、安泰というものだな」

 いつの間にか、呼んでもいないはずなのに、国王陛下までもが招待客に混じっていらっしゃる。

 招待客が口々にジェニファーへの賛辞を送っている中、教皇と司祭は、この日という幸運を逃したくはない。

 聖騎士に命じて、水晶玉をベルリオーズ家の広間に持ってこさせる。ギャラリーが多ければ多いほど公爵は断りづらいだろうと踏んでいるのだ。

 ベルリオーズ家は、ジェニファーに聖女判定をさせるつもりはない。目の前に置かれている水晶玉に手を翳させる気はないのだ。どうやって、教会の顔を潰さずに断ろうかと苦心惨憺しているのに、ジェニファーがのこのこ出てきて、挨拶までしたとなれば、断る余地などないではないか!

 しかし、ジェニファーの有能さを他の貴族たちに自慢したいという気もある。だから、ここは悩みどころというもので、このままジェニファーを抱いて、子供部屋に引っ込みたい衝動に駆られて仕方がない。

「ささ、公女様、準備が調いました。まずは魔力量から測定させていただきましょうか?」

「せっかくでございますが、……お花を摘みに行ってまいりとう存じます」
「これは、気が利きませんでした。どうぞ、ごゆるりと」

 ジェニファーは、広間を出るとすぐに転移魔法を発動し、自室に戻った。別にトイレに行きたかったわけではなく、なんとなく父の顔色をうかがってみた。

 父は苦虫をかみつぶしたような顔をしていたから、ここは魔力判定もしない方がよさそう。

 それに最近になって、なんとなく前世の記憶を思い出した。前世、ジェニファーは人間ではなかった。前世、というのが正しいかどうかわからないけど、ジェニファーは前の世では、女神をしていたことを思い出してしまった。

 この国シューベルトは、近年、女神信仰が廃れている。他の国は、それほどでもないのに、このシューベルト国だけが、女神を敬わない。それで、ベルリオーズ家の娘として、女神ジェニファーがわざわざ来てやったというのに、何故今更、魔力測定や聖女判定をしなければならないか、甚だ疑問に思う。

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