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5.敷地ごと
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卒業式が近づいてきたある日の夜、ジェニファーは家族全員を招集し、重大な発表をすることになった。
「そろそろ、この国を見捨てるつもりなんだけど、いいかな?」
「えっ!それは、どういう意味でしょうか?」
「言葉通りの意味よ。聖女が邪魔になったからと言って、異世界から偽聖女を召喚してまでする国を助ける必要はないと思うの」
「それで女神さまは何をなさるおつもりなのでしょうか?」
「もちろんこの国を潰すわ。そのために、今まで育ててくれた家族を道連れにする気はないの。だからわたくしと共に脱出してほしいとお願いしているのよ」
「具体的に我々は、どうするべきなのでしょうか?とにかく引っ越しの準備をはじめればいいのでしょうか?」
「いいえ、引っ越し準備は不要よ。ただ罪のない使用人とその家族、それに領民は逃げてほしいの。できたら一緒に逃げてくれればありがたいので、その旨公爵様から伝えてくれないかしら?」
「はっ。かしこまりました。すぐにでも使いをやり、明日には全員、タウンハウスに集結させます。ただし、領民は、領地にいるので、どうしたものかと案じています」
「大丈夫よ。領都の方は、まとめて面倒を見るつもりよ」
それからは、使用人全員にジェニファーの正体を明かし、シューベルト国はもう持たないと説明する。使用人に家族がいる場合、急いで屋敷に連れてくることになった。
今からなら路上で流しの馬車も拾えないだろうから、公爵家の馬車を出動させて、全員が今夜中に公爵邸に来られるように手配をする。
公爵から全員そろったとの合図を受け、ジェニファーは地面ごと公爵邸を持ち上げる。とりあえず神の国に一時避難をして、それから行先を決めるつもりでいる。
すると何人かの使用人がそわそわしだした。このまま死んでしまうのかも?と勘違いしているのか。聞いてみると市井の家の中に貴重品を置いたままで持ってくるのを忘れていたという。それならばと取りに行くことにした。いったん上空に公爵邸の土地ごとを浮かせながら、その使用人の手を取り、空から飛び降りる。
「きゃぁっー」
悲鳴が新鮮に聞こえる。
数分後、浮かんでいる公爵邸の横の地面に使用人の家が加わる。その後、何人かの使用人家族が申し出を行い、全員自分の持ち家持参でいったん神の国に行くことに同意する。
それから今度は、公爵を伴って、領地に飛び、同じように領地の地面ごと神の国に設置した。
領民は目を白黒させて驚きを表している。中には泡を吹いて倒れこむ者までいる。ジェニファーは慌てて団扇で風を送り、介抱する羽目になった。
そんなに刺激的なことをしたかしらん?人間として転生して、たかが18年では到底理解できない。
まさかこんなにも女神の存在を喜んでくれている人たちがいるとは思ってもみなかったことだが、ジェニファーは完全に勘違いをしている。喜んで泡を吹いたわけではない。
神の国の天候は年がら年中晴れと決まっている。人間界のように四季がなく、退屈なことこの上ないけど、貧富の差がなく、皆幸せに暮らしている。
このままずっとここにいてもいいけど、そうなると子孫を残すのに血が濃くなってしまうという弊害がある。
それでジェニファーも時々、人間界へ下りて、女神への信仰を促すように尽力している。
長く神様をやっているけど、シューベルト国程酷い国は見たことがなかった。特にハイドン侯爵、あれはもう人間の皮を被った魔物に等しい存在だと認められる。
そうだ。せっかく神の国に一時避難したのだから、いっちょ神の力を知らしめてやるか。ジェニファーは、魔塔の上空に雷雲を発生させ、魔塔目がけて雷を落とした。魔塔の一部は炎に包まれ、ハイドンを黒焦げにしてやった。
次いでだから教会も同じように雷雲を発生させ、雷を落としてやった。あの偽聖女のことも真っ黒けにしたかったけど、それでは卒業式でのお楽しみが半減するので、今はやめておく。
翌朝、王都のタウンハウス街では、ちょっとした騒ぎになっていた。なぜなら昨日まで建っていたはずの公爵邸が敷地ごと無くなっていたからで、公爵邸の周りをぐるりと囲っていた塀もろとも、底なしの崖っぷちになっていたのだ。
当然、王家の耳にも入り、ベルリオーズ家とジェニファー様はどこへ行ってしまわれたか?と恰好の噂の標的となっていた。
アランは蒼い顔をして、ベルリオーズ家の跡地の崖に佇むしか方法がない。あのジェニファーガ自分に一言の相談もなく出奔したことが崖っぷちを覗いてみても、まだ信じられない。
アランはジェニファーとは、一種の戦友のような連帯意識を持っていた。それが今、裏切られたような気分になり、落ち込んでいる。
先に裏切ったのが自分だという意識は全くない。二人の女の間で都合よく立ち回っていたと思い込んでいたのだ。そのことで、どれほどジェニファーを傷つけたか、わかっていない。
「ジェニー、俺を置いてどこへ行ってしまったんだ。戻ってきてほしい」
今更後悔したって、後の祭りですよ。
「そろそろ、この国を見捨てるつもりなんだけど、いいかな?」
「えっ!それは、どういう意味でしょうか?」
「言葉通りの意味よ。聖女が邪魔になったからと言って、異世界から偽聖女を召喚してまでする国を助ける必要はないと思うの」
「それで女神さまは何をなさるおつもりなのでしょうか?」
「もちろんこの国を潰すわ。そのために、今まで育ててくれた家族を道連れにする気はないの。だからわたくしと共に脱出してほしいとお願いしているのよ」
「具体的に我々は、どうするべきなのでしょうか?とにかく引っ越しの準備をはじめればいいのでしょうか?」
「いいえ、引っ越し準備は不要よ。ただ罪のない使用人とその家族、それに領民は逃げてほしいの。できたら一緒に逃げてくれればありがたいので、その旨公爵様から伝えてくれないかしら?」
「はっ。かしこまりました。すぐにでも使いをやり、明日には全員、タウンハウスに集結させます。ただし、領民は、領地にいるので、どうしたものかと案じています」
「大丈夫よ。領都の方は、まとめて面倒を見るつもりよ」
それからは、使用人全員にジェニファーの正体を明かし、シューベルト国はもう持たないと説明する。使用人に家族がいる場合、急いで屋敷に連れてくることになった。
今からなら路上で流しの馬車も拾えないだろうから、公爵家の馬車を出動させて、全員が今夜中に公爵邸に来られるように手配をする。
公爵から全員そろったとの合図を受け、ジェニファーは地面ごと公爵邸を持ち上げる。とりあえず神の国に一時避難をして、それから行先を決めるつもりでいる。
すると何人かの使用人がそわそわしだした。このまま死んでしまうのかも?と勘違いしているのか。聞いてみると市井の家の中に貴重品を置いたままで持ってくるのを忘れていたという。それならばと取りに行くことにした。いったん上空に公爵邸の土地ごとを浮かせながら、その使用人の手を取り、空から飛び降りる。
「きゃぁっー」
悲鳴が新鮮に聞こえる。
数分後、浮かんでいる公爵邸の横の地面に使用人の家が加わる。その後、何人かの使用人家族が申し出を行い、全員自分の持ち家持参でいったん神の国に行くことに同意する。
それから今度は、公爵を伴って、領地に飛び、同じように領地の地面ごと神の国に設置した。
領民は目を白黒させて驚きを表している。中には泡を吹いて倒れこむ者までいる。ジェニファーは慌てて団扇で風を送り、介抱する羽目になった。
そんなに刺激的なことをしたかしらん?人間として転生して、たかが18年では到底理解できない。
まさかこんなにも女神の存在を喜んでくれている人たちがいるとは思ってもみなかったことだが、ジェニファーは完全に勘違いをしている。喜んで泡を吹いたわけではない。
神の国の天候は年がら年中晴れと決まっている。人間界のように四季がなく、退屈なことこの上ないけど、貧富の差がなく、皆幸せに暮らしている。
このままずっとここにいてもいいけど、そうなると子孫を残すのに血が濃くなってしまうという弊害がある。
それでジェニファーも時々、人間界へ下りて、女神への信仰を促すように尽力している。
長く神様をやっているけど、シューベルト国程酷い国は見たことがなかった。特にハイドン侯爵、あれはもう人間の皮を被った魔物に等しい存在だと認められる。
そうだ。せっかく神の国に一時避難したのだから、いっちょ神の力を知らしめてやるか。ジェニファーは、魔塔の上空に雷雲を発生させ、魔塔目がけて雷を落とした。魔塔の一部は炎に包まれ、ハイドンを黒焦げにしてやった。
次いでだから教会も同じように雷雲を発生させ、雷を落としてやった。あの偽聖女のことも真っ黒けにしたかったけど、それでは卒業式でのお楽しみが半減するので、今はやめておく。
翌朝、王都のタウンハウス街では、ちょっとした騒ぎになっていた。なぜなら昨日まで建っていたはずの公爵邸が敷地ごと無くなっていたからで、公爵邸の周りをぐるりと囲っていた塀もろとも、底なしの崖っぷちになっていたのだ。
当然、王家の耳にも入り、ベルリオーズ家とジェニファー様はどこへ行ってしまわれたか?と恰好の噂の標的となっていた。
アランは蒼い顔をして、ベルリオーズ家の跡地の崖に佇むしか方法がない。あのジェニファーガ自分に一言の相談もなく出奔したことが崖っぷちを覗いてみても、まだ信じられない。
アランはジェニファーとは、一種の戦友のような連帯意識を持っていた。それが今、裏切られたような気分になり、落ち込んでいる。
先に裏切ったのが自分だという意識は全くない。二人の女の間で都合よく立ち回っていたと思い込んでいたのだ。そのことで、どれほどジェニファーを傷つけたか、わかっていない。
「ジェニー、俺を置いてどこへ行ってしまったんだ。戻ってきてほしい」
今更後悔したって、後の祭りですよ。
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