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3 ロバート視点
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「なぜだ?なぜだ?」
俺の名前は、ロバート・フォン・テーラー、テーラー国の王太子だった俺が何故、断頭台の前に立たされている?
事の発端は、俺が5歳になる年の初めに、聖女様が亡くなられた。
聖女様が亡くなられて初めて、次の聖女様が生まれるのである。生まれるというのは、誕生という意味ではない、元から聖女の素質があった者が次の聖女として決まるということである。
お妃選定会だから、一応、俺と同じ年に生まれた貴族の娘が出席する。そこで、聖女候補がいればいいが、いなくてもだれか適当に、というか俺がこの娘がいいと指名すると、その娘が妃となり、婚約する運びである。
言い換えれば、俺に権利があるはずだったのに、エリザベスが選ばれてしまったのだ。それもエリザベスが聖女認定されて、俺は置いてけぼりになった感がある。
それで俺は、エリザベスを疎んじるようになったのだ。エリザベスばかりがどこへ行っても、ちやほやされることが我慢できなかったのである。
俺は第1王子だぜ。なぜ、俺より目立つ?
聖女様の地位は、国王陛下より上だと聞いたことがあるが、相手は俺と同い年の子供ではないか?
両親も祖父母もエリザベスが婚約者と決まってからは、
「ロバートちゃんのお嫁さんが、エリザベス聖女様で良かったわね。おめでとう。」
こう言われるたびに、俺はふくれっ面をしたのだが、それは俺が照れ隠しにしていたわけではない。
俺は本当にエリザベスのことが嫌いだったのである。あんな生意気な女、消えてなくなればいいと本気で思っていたのである。
学園に入ってから、俺は真実の愛に目覚めたのである。相手は男爵令嬢のリリアーヌ・ドイル、つい近頃まで、市井で暮らしていた娘らしく、天真爛漫な笑顔が可愛い。
笑いたいときは、奥歯まで見えるぐらいに大口を開けて笑う。泣きたいときは、顔をしわくちゃにして、鼻水を垂らして泣く。その姿に衝撃を受けたのだ。
先に俺の側近だったダントンやディヴィッドと仲良くなったのは、癪に障ったが、もう俺たち4人は一心同体みたいなものであったから、気にもならなくなったのだ。
ある日、そんなリリアーヌから悲しそうな顔をして、エリザベスのことを相談されたときは、はらわたが煮え切るぐらいの思いをしたのである。
「なんだとぉ、許さん!」
今すぐにでも、エリザベスのところへ行って、エリザベスを切り殺しに行きたいぐらい腹が立ったのだ。
小さい時から、エリザベスのことをよく見ていなかったから、それが嘘だとは、思わず信じてしまったのだが。
大嫌いなエリザベスが、俺の愛するリリアーヌを虐めている。この構図が頭にへばりついたのである。
あとから、よくよく考えれば、不自然なところだらけであったのだが、当時、盲目の恋をしていた俺は、リリアーヌの言うことをそのまま信じた。
国外追放にして、国境線でエリザベスを切り殺すつもりでいたのだ。
エリザベスが聖女様であることなんて、すっかり抜け落ちていたのだ。ダントンやディヴィッドは知っていただろう。なぜ、言ってくれなかった?
エリザベス聖女様に俺が投げかけた言葉、淫乱女、性悪女はリリアーヌのほうだった。
俺はただ騙されていただけなのに、俺まで死罪となるとは。王族たるもの、むやみに人を信じてはならない。その言葉が頭をよぎる。先代の王、祖父がよく行っていた言葉。
祖父の教えを守らなかった罰が、今ここにいる俺である。
まさか、あんな映像が残っていたとは、つゆほども信じられなかったのである。
リリアーヌが嘘を吐いていたところだけではなく、映像の中にはリリアーヌとダントンが睦んでいるところ、ディヴィッドとしているところまでもが、鮮明に映し出されたのである。
そして、俺がエリザベス聖女様に対して、殺意を抱いているところまでもが、あの日、映し出されたのだ。
もう、死罪に対して言い逃れができなかったのである。聖女様を支え、盛り立てて行かなければならない立場の俺が、聖女様を国外追放にして、その国境線の上で、聖女様を切り殺そうと企てているところが、映像と音声にあったのだ。
いくら聖女様であったことを失念していたとはいえ、自分の婚約者に対し、そこまでのことを企てれば、タダでは済まないことぐらい、よくわかっている。
しょせん、ロバートにとって、エリザベスは婚約者でもなければ、聖女様でもなかった単なる憎いライバルに過ぎなかったのである。
銅鑼の音が響き渡る。見渡す限り、民衆は悪意に満ちた顔で俺を睨んでいる。
聖女様を追放した俺をだ。
「エリザベス、すまない。戻ってきておくれ。」その声はもう永遠に届かない。
目の前に木の枠、3つ穴が開いている。
真ん中に頭を抑えられ、入れられ、両側の穴二つに手首をこれまた押さえつけられ、入れられた。
それから後の記憶が全くない。ギロチンの刃物の重さも覚えていない。
ずっと暗闇の中で寒さをこらえながら、さまよっている状態である。俺のほかには、誰もいない。
もう人間に生まれかわることさえ許されない世界にいるのだった。
俺の名前は、ロバート・フォン・テーラー、テーラー国の王太子だった俺が何故、断頭台の前に立たされている?
事の発端は、俺が5歳になる年の初めに、聖女様が亡くなられた。
聖女様が亡くなられて初めて、次の聖女様が生まれるのである。生まれるというのは、誕生という意味ではない、元から聖女の素質があった者が次の聖女として決まるということである。
お妃選定会だから、一応、俺と同じ年に生まれた貴族の娘が出席する。そこで、聖女候補がいればいいが、いなくてもだれか適当に、というか俺がこの娘がいいと指名すると、その娘が妃となり、婚約する運びである。
言い換えれば、俺に権利があるはずだったのに、エリザベスが選ばれてしまったのだ。それもエリザベスが聖女認定されて、俺は置いてけぼりになった感がある。
それで俺は、エリザベスを疎んじるようになったのだ。エリザベスばかりがどこへ行っても、ちやほやされることが我慢できなかったのである。
俺は第1王子だぜ。なぜ、俺より目立つ?
聖女様の地位は、国王陛下より上だと聞いたことがあるが、相手は俺と同い年の子供ではないか?
両親も祖父母もエリザベスが婚約者と決まってからは、
「ロバートちゃんのお嫁さんが、エリザベス聖女様で良かったわね。おめでとう。」
こう言われるたびに、俺はふくれっ面をしたのだが、それは俺が照れ隠しにしていたわけではない。
俺は本当にエリザベスのことが嫌いだったのである。あんな生意気な女、消えてなくなればいいと本気で思っていたのである。
学園に入ってから、俺は真実の愛に目覚めたのである。相手は男爵令嬢のリリアーヌ・ドイル、つい近頃まで、市井で暮らしていた娘らしく、天真爛漫な笑顔が可愛い。
笑いたいときは、奥歯まで見えるぐらいに大口を開けて笑う。泣きたいときは、顔をしわくちゃにして、鼻水を垂らして泣く。その姿に衝撃を受けたのだ。
先に俺の側近だったダントンやディヴィッドと仲良くなったのは、癪に障ったが、もう俺たち4人は一心同体みたいなものであったから、気にもならなくなったのだ。
ある日、そんなリリアーヌから悲しそうな顔をして、エリザベスのことを相談されたときは、はらわたが煮え切るぐらいの思いをしたのである。
「なんだとぉ、許さん!」
今すぐにでも、エリザベスのところへ行って、エリザベスを切り殺しに行きたいぐらい腹が立ったのだ。
小さい時から、エリザベスのことをよく見ていなかったから、それが嘘だとは、思わず信じてしまったのだが。
大嫌いなエリザベスが、俺の愛するリリアーヌを虐めている。この構図が頭にへばりついたのである。
あとから、よくよく考えれば、不自然なところだらけであったのだが、当時、盲目の恋をしていた俺は、リリアーヌの言うことをそのまま信じた。
国外追放にして、国境線でエリザベスを切り殺すつもりでいたのだ。
エリザベスが聖女様であることなんて、すっかり抜け落ちていたのだ。ダントンやディヴィッドは知っていただろう。なぜ、言ってくれなかった?
エリザベス聖女様に俺が投げかけた言葉、淫乱女、性悪女はリリアーヌのほうだった。
俺はただ騙されていただけなのに、俺まで死罪となるとは。王族たるもの、むやみに人を信じてはならない。その言葉が頭をよぎる。先代の王、祖父がよく行っていた言葉。
祖父の教えを守らなかった罰が、今ここにいる俺である。
まさか、あんな映像が残っていたとは、つゆほども信じられなかったのである。
リリアーヌが嘘を吐いていたところだけではなく、映像の中にはリリアーヌとダントンが睦んでいるところ、ディヴィッドとしているところまでもが、鮮明に映し出されたのである。
そして、俺がエリザベス聖女様に対して、殺意を抱いているところまでもが、あの日、映し出されたのだ。
もう、死罪に対して言い逃れができなかったのである。聖女様を支え、盛り立てて行かなければならない立場の俺が、聖女様を国外追放にして、その国境線の上で、聖女様を切り殺そうと企てているところが、映像と音声にあったのだ。
いくら聖女様であったことを失念していたとはいえ、自分の婚約者に対し、そこまでのことを企てれば、タダでは済まないことぐらい、よくわかっている。
しょせん、ロバートにとって、エリザベスは婚約者でもなければ、聖女様でもなかった単なる憎いライバルに過ぎなかったのである。
銅鑼の音が響き渡る。見渡す限り、民衆は悪意に満ちた顔で俺を睨んでいる。
聖女様を追放した俺をだ。
「エリザベス、すまない。戻ってきておくれ。」その声はもう永遠に届かない。
目の前に木の枠、3つ穴が開いている。
真ん中に頭を抑えられ、入れられ、両側の穴二つに手首をこれまた押さえつけられ、入れられた。
それから後の記憶が全くない。ギロチンの刃物の重さも覚えていない。
ずっと暗闇の中で寒さをこらえながら、さまよっている状態である。俺のほかには、誰もいない。
もう人間に生まれかわることさえ許されない世界にいるのだった。
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