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4 ブタバスト国へ
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エリザベスは、転移魔法で、両親とともにさっさと公爵邸に帰る。
エリザベスだけではなく、両親も国外退去をするつもりでいるのだ。
聖女様は、どこの国へ行っても歓迎される。
聖女様がいる国は、栄えることが保証されるのである。何を植えても収穫量が倍近く跳ねあがり、天候も穏やかになり、疫病も減る。
もし、だれか王族と結婚すれば、どんな愚王であっても賢王とうたわれる。
もう明日には、エリザベスがロバート様から婚約破棄されたという噂が世界中を駆け巡るだろう。
さすれば、縁談が殺到する。縁談が来てから、次の行き先を決めてもいいんだけど、ずっと今まで司祭様のお目付けの元に過ごしてきたので、しばらくはゆっくり骨休みをしたいところである。
とりあえず、司祭様の目の届かないところへ行こう。エリザベスは今夜中に、領地へ引っ込むことにしたのである。王都にいると、司祭様がうるさく言う。
王都にあるブルーフォード公爵邸の使用人たちもエリザベスと行動を共にする気でいる。たとえクビになろうとも誰一人、他の貴族屋敷の使用人にはならない、妙な結束力がある。
エリザベスは、全員に転移魔法をかけて、ブルーフォード領へ送る。
あらかたの引っ越しが終わった頃に、王家より国外追放処分を取り消しにしたいとの意向が届けられるものの、あーそうですか。と返事できるような話ではない。
とにかく今は、ゆっくりしたいのである。5歳の頃より、聖女様と崇められて、身も心もくたくたなのである。
エリザベスと両親は、先に帰ったので、その後のロバート様たちの処分は知らずにいたのである。
使いは、死罪になったという話を何もせず、ただ「ご返答を」繰り返すばかりで、埒が明かない。
あまりにもうるさく言うので、両親は、
「エリザベスは、もう旅立った後です。陛下には、そのようにお伝えください。」
使いは、ガックリとうなだれ、すごすごと引き返して行ったのである。
使いが帰った後、大急ぎで公爵邸を異空間に仕舞うエリザベス、そして両親とともにブルーフォード領へ転移したのである。
ここまでくれば、まずは一安心である。今夜は、領地で一泊して、明日、国境までひとっ飛びで行くつもりである。
領地の領民は、皆、聖女様と行動を共にしたいと願い出てくるものばかりであったのだ。みんなと一緒に行きたいけれど、ちょっとした大所帯、いくら聖女付きといえども受け入れてくれるところがあるだろうか?
「わかりましたわ。わたくしと一緒に行ってくださる方は、できるだけ早く荷造りをしてくださいませ。」
領民の家ごと、異空間に仕舞えるのだが、そのことは言わない。もしかすれば、流れに応じて流されて一緒についていきたいと言っているものがいるだろうと配慮をしたのである。
朝になるとみな大八車?などに思い思いの荷物を載せている。
そうか領地の領民は、全員一致で本気で聖女様と行動を共にしたいようだったので、エリザベスは、領地にある民家もろとも異空間に仕舞い、全員に国境までの転移魔法をかける。そこを超えると隣国ブタバスト国である。
国境付近では、やはりテーラー国の警備兵の先回りがあったが、全員に隠蔽魔法をかけて転移させたので、事なきを得たのである。
なぜ、ブタバスト国を選んだかというと、以前、巡礼で行ったとき、果物が豊富で美味しかったから。ここで、あの果物を栽培して売れば、領地の全員を養うことができるだろうとの思いから、ブタバスト国を最初に選んだのだ。
ブルーフォード公爵邸の執事にブタバスト国の国王陛下宛ての書簡を持たせて、挨拶に行かせたところ、そんな国境付近ではなく、王都までの招待状が届く。
王都には、もう全員が宿泊できる広い土地の用意がしてあったのだ。
ありがたくエリザベス一行はその土地の住民になったのは、言うまでもないことである。その土地の上にテーラー国から持参した公爵邸や領民の民家などを次々と出していき、通路と用水路を整備して、街を作り上げていく。
その頃、テーラー国の王都では、大騒ぎになっていたのである。一夜にして、王都に建っていたはずのブルーフォード公爵邸が忽然と姿を消したのだから。
王家が日を改めて、朝になってから再び、詫びを入れにブルーフォード公爵家を訪ねようとしたら、いつの間にか消えているので発覚したのだ。
昨夜、使いの者が来たときは、確かにあったのだ。あの時、すでにエリザベス聖女様は旅立たれた後、と聞いていたが、あの後すぐに……だったのだろうか?どちらにしても、家が一軒まるまる消えることなど、聖女でなければできない技である。
司祭様に聞き合わせるも、司祭様もエリザベスが小さい時から、行動を共にしてきたが、首をひねるばかりで何も思い当たらない。
だいたい若い女性が考えることなど、オジサンに思い当たるわけがないのである。
ロバートに聞こうにも、ロバートもエリザベスとまともに行動を共にしたことがないから、国外追放処分を真に受けたとしか考えられない。ロバートも自分が言い出したことなのに、ほとんど他人事である。
国家の存亡の危機という意識がなさすぎる。
とにかく国境付近を見張らせることぐらいしかできないが、今のところ聖女様が国境を越えたという情報は入ってこない。
そうなると領地か?ブルーフォードの隣の領地に連絡を入れ、見に行ってもらうと、領地に建っていたはずの民家もろとも消えていたそうだ。
もう聖女様は領民を連れてすでに出奔された後としか思えない状態であったが、どこへ行かれたかは、皆目見当がつかない。
エリザベスだけではなく、両親も国外退去をするつもりでいるのだ。
聖女様は、どこの国へ行っても歓迎される。
聖女様がいる国は、栄えることが保証されるのである。何を植えても収穫量が倍近く跳ねあがり、天候も穏やかになり、疫病も減る。
もし、だれか王族と結婚すれば、どんな愚王であっても賢王とうたわれる。
もう明日には、エリザベスがロバート様から婚約破棄されたという噂が世界中を駆け巡るだろう。
さすれば、縁談が殺到する。縁談が来てから、次の行き先を決めてもいいんだけど、ずっと今まで司祭様のお目付けの元に過ごしてきたので、しばらくはゆっくり骨休みをしたいところである。
とりあえず、司祭様の目の届かないところへ行こう。エリザベスは今夜中に、領地へ引っ込むことにしたのである。王都にいると、司祭様がうるさく言う。
王都にあるブルーフォード公爵邸の使用人たちもエリザベスと行動を共にする気でいる。たとえクビになろうとも誰一人、他の貴族屋敷の使用人にはならない、妙な結束力がある。
エリザベスは、全員に転移魔法をかけて、ブルーフォード領へ送る。
あらかたの引っ越しが終わった頃に、王家より国外追放処分を取り消しにしたいとの意向が届けられるものの、あーそうですか。と返事できるような話ではない。
とにかく今は、ゆっくりしたいのである。5歳の頃より、聖女様と崇められて、身も心もくたくたなのである。
エリザベスと両親は、先に帰ったので、その後のロバート様たちの処分は知らずにいたのである。
使いは、死罪になったという話を何もせず、ただ「ご返答を」繰り返すばかりで、埒が明かない。
あまりにもうるさく言うので、両親は、
「エリザベスは、もう旅立った後です。陛下には、そのようにお伝えください。」
使いは、ガックリとうなだれ、すごすごと引き返して行ったのである。
使いが帰った後、大急ぎで公爵邸を異空間に仕舞うエリザベス、そして両親とともにブルーフォード領へ転移したのである。
ここまでくれば、まずは一安心である。今夜は、領地で一泊して、明日、国境までひとっ飛びで行くつもりである。
領地の領民は、皆、聖女様と行動を共にしたいと願い出てくるものばかりであったのだ。みんなと一緒に行きたいけれど、ちょっとした大所帯、いくら聖女付きといえども受け入れてくれるところがあるだろうか?
「わかりましたわ。わたくしと一緒に行ってくださる方は、できるだけ早く荷造りをしてくださいませ。」
領民の家ごと、異空間に仕舞えるのだが、そのことは言わない。もしかすれば、流れに応じて流されて一緒についていきたいと言っているものがいるだろうと配慮をしたのである。
朝になるとみな大八車?などに思い思いの荷物を載せている。
そうか領地の領民は、全員一致で本気で聖女様と行動を共にしたいようだったので、エリザベスは、領地にある民家もろとも異空間に仕舞い、全員に国境までの転移魔法をかける。そこを超えると隣国ブタバスト国である。
国境付近では、やはりテーラー国の警備兵の先回りがあったが、全員に隠蔽魔法をかけて転移させたので、事なきを得たのである。
なぜ、ブタバスト国を選んだかというと、以前、巡礼で行ったとき、果物が豊富で美味しかったから。ここで、あの果物を栽培して売れば、領地の全員を養うことができるだろうとの思いから、ブタバスト国を最初に選んだのだ。
ブルーフォード公爵邸の執事にブタバスト国の国王陛下宛ての書簡を持たせて、挨拶に行かせたところ、そんな国境付近ではなく、王都までの招待状が届く。
王都には、もう全員が宿泊できる広い土地の用意がしてあったのだ。
ありがたくエリザベス一行はその土地の住民になったのは、言うまでもないことである。その土地の上にテーラー国から持参した公爵邸や領民の民家などを次々と出していき、通路と用水路を整備して、街を作り上げていく。
その頃、テーラー国の王都では、大騒ぎになっていたのである。一夜にして、王都に建っていたはずのブルーフォード公爵邸が忽然と姿を消したのだから。
王家が日を改めて、朝になってから再び、詫びを入れにブルーフォード公爵家を訪ねようとしたら、いつの間にか消えているので発覚したのだ。
昨夜、使いの者が来たときは、確かにあったのだ。あの時、すでにエリザベス聖女様は旅立たれた後、と聞いていたが、あの後すぐに……だったのだろうか?どちらにしても、家が一軒まるまる消えることなど、聖女でなければできない技である。
司祭様に聞き合わせるも、司祭様もエリザベスが小さい時から、行動を共にしてきたが、首をひねるばかりで何も思い当たらない。
だいたい若い女性が考えることなど、オジサンに思い当たるわけがないのである。
ロバートに聞こうにも、ロバートもエリザベスとまともに行動を共にしたことがないから、国外追放処分を真に受けたとしか考えられない。ロバートも自分が言い出したことなのに、ほとんど他人事である。
国家の存亡の危機という意識がなさすぎる。
とにかく国境付近を見張らせることぐらいしかできないが、今のところ聖女様が国境を越えたという情報は入ってこない。
そうなると領地か?ブルーフォードの隣の領地に連絡を入れ、見に行ってもらうと、領地に建っていたはずの民家もろとも消えていたそうだ。
もう聖女様は領民を連れてすでに出奔された後としか思えない状態であったが、どこへ行かれたかは、皆目見当がつかない。
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