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プロローグ
1.断頭台
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ついにこの日が来てしまった。
いや、もうさっさと終わらせてしまいたいというのが本音だろうか。今日は、記念すべきアンジェリーヌが処刑される当日の朝を迎えたところ、もう美しかったプラチナブロンドの髪の毛はボサボサになり、完全に輝きを失ってしまい、それどころか髪の毛を掴まれて引きずられながら移動させられるので、ところどころ抜け落ち、右側は腰まであったはずの長さが、耳が見えるまでに散切りにされている。
よく言えば、夏に涼しいショートカットと言えるが、この世界で男のような髪の長さは貴族令嬢として認められない。
両手は脇から下を斬られ何も手にすることができない。手がないから。両足も足の付け根から失ったままで、左目は失明している。
これらすべては聖女リリアーヌの命を受けた騎士団が行ったもので、婚約者だった王太子殿下のご下命でもあるから困ったものである。
家族からは、汚物を見るような目で蔑まれ、マキャベリ家の名を貶めた大罪人として扱われるに至っている。
家族でさえそうなのであるから、使用人からの扱いはもっと酷い。
今まで媚びへつらってきた使用人全員が、手のひら返しをして、あの日を境に使用人から鞭を打たれることになろうとは思ってもみなかったこと。
聖女リリアーヌが現れてから、娼婦以下の扱いしかされず、何百、何千人の男と閨を共にしたかわからない。男たちの中には、嗜虐的な趣味の者がいて、アンジェリーヌを犯すだけでなく、アンジェリーナのカラダに暖炉の熱い火掻き棒をアンジェリーヌのカラダに押し付け、背中が爛れているところを犯す趣味の男がいた。
「痛い。熱い!」と悲鳴を上げることにより、快感を得ている変態がいた。そういう男たちは、日ごろの鬱憤をアンジェリーヌに向けることで辛うじて、自尊心を保っているのだろう。
抵抗すれば、いつの間にか両腕はおろか両足まで切断されてしまい、顔面を拳で思い切り殴られ、美しく高い鼻は折れ曲がり、片目は失明したのだ。
5歳の頃より王太子殿下の婚約者として、厳しいお妃教育が修了し、後半年で結婚式となった時に、突然リリアーヌが現れ、アンジェリーヌの周りの人間すべてが目つきが変わり、アンジェリーヌは公女としての立場を失ってしまったのだ。
それからは、地獄の日々で生まれてこの方、築いてきた人間関係がもろくも崩れ去ってしまった。
学園の3年生の夏休みの時、国教会で催し物があり、王太子妃予定として、公務を行ったついでに、「聖女様」との認定を受けたのだが、どうせなら発表は、結婚式の時にした方がいいと言われ、教皇と一部の教会関係者だけの秘密となってしまったことが災いしたのであろうか……。
その秋に、リリアーヌが現れ、公女である身分も、家名も、聖女であることも、すべてリリアーヌに持って行かれてしまった。
あれだけ毎日、愛を囁いてくれていた王太子殿下も、家族も、すべてそっぽを向かれてしまったのだ。
聖女様の判定をしてくれた国教会でさえも、リリアーヌの言葉を真実と鵜呑みにし、アンジェリーヌは「魔女」として断罪されてしまう。
でも、その苦痛も今日で終わりになるかと思えば、自然と笑みを浮かべてしまう。
今度、生まれ変わったら、もう誰も信じない。まったく別の人間となって、幸せに穏やかに暮らしたいとそのことだけを願って、断頭台の前に引きずり出された。
民衆は、ボロボロになったアンジェリーヌに石を投げ、貴族との貧富の差を嘆きながら、それまでも元・貴族令嬢だったアンジェリーヌに対し憎悪の念を抱き野次り、今や遅しとアンジェリーヌが処刑される瞬間を楽しみにしているようだ。
銅鑼の音が鳴り響き、時刻を知らせる。
「これで、やっと楽になれる」そう思った瞬間、鉄の塊が衝撃を加えてきた。
いや、もうさっさと終わらせてしまいたいというのが本音だろうか。今日は、記念すべきアンジェリーヌが処刑される当日の朝を迎えたところ、もう美しかったプラチナブロンドの髪の毛はボサボサになり、完全に輝きを失ってしまい、それどころか髪の毛を掴まれて引きずられながら移動させられるので、ところどころ抜け落ち、右側は腰まであったはずの長さが、耳が見えるまでに散切りにされている。
よく言えば、夏に涼しいショートカットと言えるが、この世界で男のような髪の長さは貴族令嬢として認められない。
両手は脇から下を斬られ何も手にすることができない。手がないから。両足も足の付け根から失ったままで、左目は失明している。
これらすべては聖女リリアーヌの命を受けた騎士団が行ったもので、婚約者だった王太子殿下のご下命でもあるから困ったものである。
家族からは、汚物を見るような目で蔑まれ、マキャベリ家の名を貶めた大罪人として扱われるに至っている。
家族でさえそうなのであるから、使用人からの扱いはもっと酷い。
今まで媚びへつらってきた使用人全員が、手のひら返しをして、あの日を境に使用人から鞭を打たれることになろうとは思ってもみなかったこと。
聖女リリアーヌが現れてから、娼婦以下の扱いしかされず、何百、何千人の男と閨を共にしたかわからない。男たちの中には、嗜虐的な趣味の者がいて、アンジェリーヌを犯すだけでなく、アンジェリーナのカラダに暖炉の熱い火掻き棒をアンジェリーヌのカラダに押し付け、背中が爛れているところを犯す趣味の男がいた。
「痛い。熱い!」と悲鳴を上げることにより、快感を得ている変態がいた。そういう男たちは、日ごろの鬱憤をアンジェリーヌに向けることで辛うじて、自尊心を保っているのだろう。
抵抗すれば、いつの間にか両腕はおろか両足まで切断されてしまい、顔面を拳で思い切り殴られ、美しく高い鼻は折れ曲がり、片目は失明したのだ。
5歳の頃より王太子殿下の婚約者として、厳しいお妃教育が修了し、後半年で結婚式となった時に、突然リリアーヌが現れ、アンジェリーヌの周りの人間すべてが目つきが変わり、アンジェリーヌは公女としての立場を失ってしまったのだ。
それからは、地獄の日々で生まれてこの方、築いてきた人間関係がもろくも崩れ去ってしまった。
学園の3年生の夏休みの時、国教会で催し物があり、王太子妃予定として、公務を行ったついでに、「聖女様」との認定を受けたのだが、どうせなら発表は、結婚式の時にした方がいいと言われ、教皇と一部の教会関係者だけの秘密となってしまったことが災いしたのであろうか……。
その秋に、リリアーヌが現れ、公女である身分も、家名も、聖女であることも、すべてリリアーヌに持って行かれてしまった。
あれだけ毎日、愛を囁いてくれていた王太子殿下も、家族も、すべてそっぽを向かれてしまったのだ。
聖女様の判定をしてくれた国教会でさえも、リリアーヌの言葉を真実と鵜呑みにし、アンジェリーヌは「魔女」として断罪されてしまう。
でも、その苦痛も今日で終わりになるかと思えば、自然と笑みを浮かべてしまう。
今度、生まれ変わったら、もう誰も信じない。まったく別の人間となって、幸せに穏やかに暮らしたいとそのことだけを願って、断頭台の前に引きずり出された。
民衆は、ボロボロになったアンジェリーヌに石を投げ、貴族との貧富の差を嘆きながら、それまでも元・貴族令嬢だったアンジェリーヌに対し憎悪の念を抱き野次り、今や遅しとアンジェリーヌが処刑される瞬間を楽しみにしているようだ。
銅鑼の音が鳴り響き、時刻を知らせる。
「これで、やっと楽になれる」そう思った瞬間、鉄の塊が衝撃を加えてきた。
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