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プロローグ
2.目覚め
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ドーン!
重い衝撃と共に意識が薄れていく。これでやっと楽になれる。
ふと気づくと、首のあたりがヒリヒリする。でも……?なんだか様子が変なことに気づく。
胴体と頭が繋がっているような?
ああ、そうか。ここはきっと黄泉の国に行ったのに違いない。死んだらどんなに死体が損傷していても、大病で死んだとしても黄泉の国では、それらの傷がすべて癒え元通りの五体満足なカラダに戻れるとどこかで聞いたことがある。
このままここに横たわっていても、誰かが天国へ導いてくれるのだろうか?果たして罪人として処刑された我が身では、その誰かが来てくれるかどうかもわからない。
力なくむっくりと起き上がると、妙にカラダが軽い、ひょっとして土葬ではなく荼毘に付されたのかもしれない。
魂だけなので、カラダが軽いのかもしれない。
でも、ふと見た掌のいかに小さいことに少々驚く。
何? 死んで18歳のわたくしが2歳児ぐらいの手の大きさになった!?ということは2歳児の大きさになったということかしらね?
一人でブツブツ呟くも誰も返事をする者はいない。そりゃそうだ。だって、ここは黄泉の国だもの。きっと精神世界なのだろうと納得することにした。
幸いなことに全裸ではなくベビー服らしきものを身につけているようだ。2歳だと勝手に決めつけたけど、ひょっとすれば、もっと若いのかもしれない?それでも前世でカラダの動かし方、バランスのとり方を覚えているので、なんとか立ち上がろうと試みる。
今までうすぼんやりしていた視覚が急にはっきりと物体をとらえるようになってくる。
ん?
ここ、どこかで見たことがあるような?……、ああ、そうか。前世の記憶が見せてくれている幻影なのだろう。
寝かされていた寝台から、ひょこっと降りて、辺りを見回す。そこは懐かしい乳母メリージェーンと暮らしてきた部屋と同じ配置がしてある。
そういえば、この頃が一番幸せだったのかもしれない。人は死んだら無意識のうちに一番幸せだった時のことを思い出し、その場に帰ろうとするものだと何かの本で読んだ記憶がある。
王子のお妃になった時よりも、この時代が幸せだと感じていたのなら、それはそれでよかったと思える。死んでまで、あの王子の蔑むような視線を向けられ、思い出したくない辱めを受けた黒歴史に苛まれるのはごめんだから。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
メリージェーンの懐かしい鼻歌が聴こえ、これも幻聴なのだろうか……?部屋に入ってくる音が聞こえる。
メリージェーンは、昨日までつかまり立ちもままならなかったお嬢様が突如、二足歩行をしていることに驚きを隠せず、しかも「メリージェーン?」と自分の名を呼んでいることにも驚愕して、顎が外れそうになるのをグっと堪え目を見開きガタガタと震えだした。
そして今、自分が入ってきた扉に向かい後退り、扉を閉めることも忘れ、大声を上げて廊下を走っていく音が聞こえてきた。
部屋には、アンジェリーヌただ一人を残したまま……。
え?なに、今の反応?
黄泉の国でも、わたくしが来たことが不思議なのかしらね?でも、メリージェーンのことだから、これで天国への案内人を呼びに行ってくれることなのかもしれない。
ああ。早く生まれかわりたいなぁ。次も女の子になるのかしら?今度は平民でもいいから、穏やかな人生を歩み幸せになりたい。
アンジェリーヌは簡易応接セットのソファにきちんと座り、そういえば前世、死ぬ間際に聖女様に覚醒したんだっけ?ということを思い出していた。今なら聖女魔法が使えるかもしれない。あの時は、それを練習する時間すら与えられていなくて、朝から晩まで、ひっきりなしに誰かから拷問のように犯され続けていたのだから。
サディスト趣味の男からは、両手足をもぎ取られ、焼き鏝をカラダに押し付けられ、皮膚は爛れ、もう痛感があるようなないような?あるはずだけど、痛すぎて気を失ってばかりだったので、あの頃のアンジェリーヌには心が完全に折れていて壊れていたものだから覚えていないということも、また事実である。
その辱めの記憶からも完全に解放された今、安らかに天国への階段を上ろうと準備万端なのだが、さっきのメリージェーンの態度があまりにも滑稽すぎて、笑えてくる。
重い衝撃と共に意識が薄れていく。これでやっと楽になれる。
ふと気づくと、首のあたりがヒリヒリする。でも……?なんだか様子が変なことに気づく。
胴体と頭が繋がっているような?
ああ、そうか。ここはきっと黄泉の国に行ったのに違いない。死んだらどんなに死体が損傷していても、大病で死んだとしても黄泉の国では、それらの傷がすべて癒え元通りの五体満足なカラダに戻れるとどこかで聞いたことがある。
このままここに横たわっていても、誰かが天国へ導いてくれるのだろうか?果たして罪人として処刑された我が身では、その誰かが来てくれるかどうかもわからない。
力なくむっくりと起き上がると、妙にカラダが軽い、ひょっとして土葬ではなく荼毘に付されたのかもしれない。
魂だけなので、カラダが軽いのかもしれない。
でも、ふと見た掌のいかに小さいことに少々驚く。
何? 死んで18歳のわたくしが2歳児ぐらいの手の大きさになった!?ということは2歳児の大きさになったということかしらね?
一人でブツブツ呟くも誰も返事をする者はいない。そりゃそうだ。だって、ここは黄泉の国だもの。きっと精神世界なのだろうと納得することにした。
幸いなことに全裸ではなくベビー服らしきものを身につけているようだ。2歳だと勝手に決めつけたけど、ひょっとすれば、もっと若いのかもしれない?それでも前世でカラダの動かし方、バランスのとり方を覚えているので、なんとか立ち上がろうと試みる。
今までうすぼんやりしていた視覚が急にはっきりと物体をとらえるようになってくる。
ん?
ここ、どこかで見たことがあるような?……、ああ、そうか。前世の記憶が見せてくれている幻影なのだろう。
寝かされていた寝台から、ひょこっと降りて、辺りを見回す。そこは懐かしい乳母メリージェーンと暮らしてきた部屋と同じ配置がしてある。
そういえば、この頃が一番幸せだったのかもしれない。人は死んだら無意識のうちに一番幸せだった時のことを思い出し、その場に帰ろうとするものだと何かの本で読んだ記憶がある。
王子のお妃になった時よりも、この時代が幸せだと感じていたのなら、それはそれでよかったと思える。死んでまで、あの王子の蔑むような視線を向けられ、思い出したくない辱めを受けた黒歴史に苛まれるのはごめんだから。
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メリージェーンの懐かしい鼻歌が聴こえ、これも幻聴なのだろうか……?部屋に入ってくる音が聞こえる。
メリージェーンは、昨日までつかまり立ちもままならなかったお嬢様が突如、二足歩行をしていることに驚きを隠せず、しかも「メリージェーン?」と自分の名を呼んでいることにも驚愕して、顎が外れそうになるのをグっと堪え目を見開きガタガタと震えだした。
そして今、自分が入ってきた扉に向かい後退り、扉を閉めることも忘れ、大声を上げて廊下を走っていく音が聞こえてきた。
部屋には、アンジェリーヌただ一人を残したまま……。
え?なに、今の反応?
黄泉の国でも、わたくしが来たことが不思議なのかしらね?でも、メリージェーンのことだから、これで天国への案内人を呼びに行ってくれることなのかもしれない。
ああ。早く生まれかわりたいなぁ。次も女の子になるのかしら?今度は平民でもいいから、穏やかな人生を歩み幸せになりたい。
アンジェリーヌは簡易応接セットのソファにきちんと座り、そういえば前世、死ぬ間際に聖女様に覚醒したんだっけ?ということを思い出していた。今なら聖女魔法が使えるかもしれない。あの時は、それを練習する時間すら与えられていなくて、朝から晩まで、ひっきりなしに誰かから拷問のように犯され続けていたのだから。
サディスト趣味の男からは、両手足をもぎ取られ、焼き鏝をカラダに押し付けられ、皮膚は爛れ、もう痛感があるようなないような?あるはずだけど、痛すぎて気を失ってばかりだったので、あの頃のアンジェリーヌには心が完全に折れていて壊れていたものだから覚えていないということも、また事実である。
その辱めの記憶からも完全に解放された今、安らかに天国への階段を上ろうと準備万端なのだが、さっきのメリージェーンの態度があまりにも滑稽すぎて、笑えてくる。
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