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プロローグ
3.死に戻り
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アンジェリーヌは精神を集中して、指先に魔力を集めることに夢中になっていて、メリージェーンが戻ってきたことに気づかないでいた。
メリージェーンは、一人で戻ってきたわけではなかった。両親と兄、執事に家令に侍女長まで伴って。
「お嬢様!」
「アンジェリーヌ!」
「公女様!」
唖然とした表情で、扉の前に勢ぞろいしている面々にようやく気付いた。あれ?みんな死んじゃったの?
前世ではまるで他人を見るような目で、汚物を見るような目をして名前すらも呼んでくれなかった家族や公爵邸の面々が揃いも揃って、入り口付近に突っ立っている。
死んだからといっても絶対に許してあげない!今更何をしに来たって言うのよ?
アンジェリーヌは、ソファからすくっと立ち上がり、入り口までテクテクと歩いていき、見事なカーテシーを決めて挨拶をした。
「お父様、お母様、ごきげんよう」
これには両親のみならず、その場に居並ぶ全員の顎が外れた。
最初に立ち直りを見せたのは、父で
「さすがは俺の娘だ!アンジェリーヌでかしたぞ」
何が俺の娘よ?他人同然に捨てたくせに、今更死んだからと言って許されるものではないわ!
「昨日までのお嬢様は、ハイハイしかできなく言葉もマンマということだけで……」
「天才は一夜にして生まれるということが証明されたのだ!」
メリージェーンの話から推察すると、このカラダは1歳半というところか?
そこで初めて、気が付く。このカラダは1歳半とずいぶん若返っているように見えるけど、メリージェーンをはじめ、家族全員も若返っているという事実に……!
これは、ひょっとして、この頃が一番幸せであったという表れなのかしら?でも、何か変な感じがする。
さっき練習したばかりの魔法をお兄様に向けて放つ。途端にお兄様は、「冷たい!」と騒ぎ出して、その場にしゃがみこんで泣き出してしまわれた。
前世、わたくしをイジメた罰よ。汚いと言って、アンジェリーヌに唾を吐きかけたくせに。
父親は怒るどころか、アンジェリーヌを褒めたたえる。
「おお!やっぱりすごい天才だ!それにしてもシャーロックはこんなことぐらいで泣くとは……、男のくせに情けない。少しはアンジェリーヌを見習って爪の垢でも煎じて飲むように」
「そんな……、シャーロックはまだ5歳の幼子ですわ。妖精のようなアンジェリーヌと比べられたら、かわいそうというものですわ」
これで事態をハッキリ把握することができた。アンジェリーヌは、ここは黄泉の国などではなく、アンジェリーヌだけが死に戻ったという事実を思い知ることになるとは思ってもみなかったこと。
自分のほっぺをつねって確かめてみてもよかったことだけど、それでは痛い。だからお兄様を狙ったのだ。
それに前世では気づかなかった事実が今なら手に取るようにわかることも喜ばしいこと。それは昔から、お母様はお兄様を贔屓にしていたということ。
将来、お兄様が公爵家の後を継ぐということを見越しての贔屓だったことが分かったのだ。
同じ悪戯をして叱られることがあっても、お兄様に対しては激アマでアンジェリーヌは女の子のくせに、とこっぴどく叱られた記憶がある。
死に戻ったことは悲しいけれど、お母様の弱点が見つかり、今後の復讐劇の一助となることがわかり重畳というもの。
アンジェリーヌは秘かに黒い微笑みを湛えているが、元から美乳児であったことから、悪い微笑みも天使の微笑みのごとき美しさで、大人たちは気づかないでいる。
「それにしてもアンジェリーヌのカーテシーは見事であった。大人でもバランスを崩し、片足で立つところがなかなかうまくいかないものなのに、歩きはじめたばかりですでに完ぺきなカーテシーができるとは……。ひょっとすれば、この娘は女神さまの生まれ変わりかもしれんぞ」
親ばかも、ここまでくればめでたい。
メリージェーンは、一人で戻ってきたわけではなかった。両親と兄、執事に家令に侍女長まで伴って。
「お嬢様!」
「アンジェリーヌ!」
「公女様!」
唖然とした表情で、扉の前に勢ぞろいしている面々にようやく気付いた。あれ?みんな死んじゃったの?
前世ではまるで他人を見るような目で、汚物を見るような目をして名前すらも呼んでくれなかった家族や公爵邸の面々が揃いも揃って、入り口付近に突っ立っている。
死んだからといっても絶対に許してあげない!今更何をしに来たって言うのよ?
アンジェリーヌは、ソファからすくっと立ち上がり、入り口までテクテクと歩いていき、見事なカーテシーを決めて挨拶をした。
「お父様、お母様、ごきげんよう」
これには両親のみならず、その場に居並ぶ全員の顎が外れた。
最初に立ち直りを見せたのは、父で
「さすがは俺の娘だ!アンジェリーヌでかしたぞ」
何が俺の娘よ?他人同然に捨てたくせに、今更死んだからと言って許されるものではないわ!
「昨日までのお嬢様は、ハイハイしかできなく言葉もマンマということだけで……」
「天才は一夜にして生まれるということが証明されたのだ!」
メリージェーンの話から推察すると、このカラダは1歳半というところか?
そこで初めて、気が付く。このカラダは1歳半とずいぶん若返っているように見えるけど、メリージェーンをはじめ、家族全員も若返っているという事実に……!
これは、ひょっとして、この頃が一番幸せであったという表れなのかしら?でも、何か変な感じがする。
さっき練習したばかりの魔法をお兄様に向けて放つ。途端にお兄様は、「冷たい!」と騒ぎ出して、その場にしゃがみこんで泣き出してしまわれた。
前世、わたくしをイジメた罰よ。汚いと言って、アンジェリーヌに唾を吐きかけたくせに。
父親は怒るどころか、アンジェリーヌを褒めたたえる。
「おお!やっぱりすごい天才だ!それにしてもシャーロックはこんなことぐらいで泣くとは……、男のくせに情けない。少しはアンジェリーヌを見習って爪の垢でも煎じて飲むように」
「そんな……、シャーロックはまだ5歳の幼子ですわ。妖精のようなアンジェリーヌと比べられたら、かわいそうというものですわ」
これで事態をハッキリ把握することができた。アンジェリーヌは、ここは黄泉の国などではなく、アンジェリーヌだけが死に戻ったという事実を思い知ることになるとは思ってもみなかったこと。
自分のほっぺをつねって確かめてみてもよかったことだけど、それでは痛い。だからお兄様を狙ったのだ。
それに前世では気づかなかった事実が今なら手に取るようにわかることも喜ばしいこと。それは昔から、お母様はお兄様を贔屓にしていたということ。
将来、お兄様が公爵家の後を継ぐということを見越しての贔屓だったことが分かったのだ。
同じ悪戯をして叱られることがあっても、お兄様に対しては激アマでアンジェリーヌは女の子のくせに、とこっぴどく叱られた記憶がある。
死に戻ったことは悲しいけれど、お母様の弱点が見つかり、今後の復讐劇の一助となることがわかり重畳というもの。
アンジェリーヌは秘かに黒い微笑みを湛えているが、元から美乳児であったことから、悪い微笑みも天使の微笑みのごとき美しさで、大人たちは気づかないでいる。
「それにしてもアンジェリーヌのカーテシーは見事であった。大人でもバランスを崩し、片足で立つところがなかなかうまくいかないものなのに、歩きはじめたばかりですでに完ぺきなカーテシーができるとは……。ひょっとすれば、この娘は女神さまの生まれ変わりかもしれんぞ」
親ばかも、ここまでくればめでたい。
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