魔女と呼ばれ処刑された聖女は、死に戻り悪女となる

青の雀

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断罪後

20.ざまあ1

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民衆によるワァッー!という歓声は、銅鑼の音によって静まり返る。

断頭台広場には、マキャベリの家族一同、使用人も来ている。そして新しい国王となったクリストファー陛下とリリアーヌ王妃と共に。
アンジェリーヌと何かしら関係があった人たちは、運命に導かれるような感覚で、本人の意思と全く関係がなく、断頭台広場に連れてこられた。

「別にこんなもの見物したくもない」


ドーーーン!


ざわついていた民衆が静まり返る。そして、もう終わったとばかりに回れ右して、帰り出そうとしている民衆。

王妃リリアーヌはにやりと口角を上げる。

クリストファー国王は、なぜか胸を押さえ苦しそうな表情を浮かべる。
マキャベリ公爵も夫人も、シャーロックも、セバスチャンも真っ青な顔をして苦しそうに悶えている。
学園で同級生だったジュリエンヌ、キャサリン、エリーゼも同様の反応を示し、エリーゼに至っては嘔吐までしている。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



それぞれがそれぞれの反応を示している断頭台広場に、突如、真上から声が響いた。

「聖女様を殺したのは誰だ?聖女様を辱めたのは誰だ?聖女様を裏切ったのは誰だ?聖女様を苦しめたのは誰だ?」

頭上から、何度もこの言葉を投げかけられ、思わず人々は上空を見上げる。

先ほどまで真っ青な空が広がっていて、「今日は処刑日和だ」という冗談もささやかれていたというのに、今や真っ黒な雲で覆われている。いつ、ポツリときてもおかしくはない空模様に人々は早く帰りたい。だが、どうしても足が動かないでいる。

リリアーヌは、先ほどまでの上機嫌から一転して、「チッ!」と舌打ちをしている。横にいるクリストファー陛下は、そんな妻の変化も知らずに苦しみから、のたうち回っている。

王の側近は、オロオロし、とにかく王を安全なところに避難させたい。だが、側近の足も一歩も動けないでいる。

「もう一度聞く。聖女様を殺したのは誰だ?聖女様を汚し辱めたのは誰だ?聖女様を裏切ったのは誰だ?聖女様を苦しめたのは誰だ?」

「……」

民衆は、王妃の方を見て、聖女様ならここにいるではないか?という顔をしている。

「仕方がない。犯人の目星はついている。犯人は、リリアーヌ魔女だ!」

「えっえー!」

民衆から、悲鳴が上がる。

ショックを受けたのか、マキャベリ公爵がぶっ倒れてしまい、夫人が、セバスチャンが、エリーゼが口元を覆う扇子で扇いで介抱をしている。

「リリアーヌよ。なぜ?アンジェリーヌ聖女様を狙って、すべてを奪おうとした?」

「ムカつくからよ」

「ムカツク?」

「だって、アイツはアタイがどんなに手に入れたがっても手に入れない物をすべて持っている女だからさ。生まれも贅沢も美貌も婚約者としての地位も」

「まさかと思うが、そんなくだらない理由で聖女様を殺してしまったのか?」

「アタイは孤児なんだよ」

「そうさ、それがどうした?リリアーヌ、お前は自分の名前に疑問を持ったことがないのか?なぜ平民の百姓風情の娘がリリアーヌなどという貴族名がつけられているかということに疑問を持たなかったのか?」

「そんなこと知らないよ。おっ父が捨てるとき、お前は俺たちの子供じゃねえ。だから好きに生きろ。と言ったんだ」

「お前は貴族の娘だ」

「へ?嘘だーい」

「本当だ。貴族の娘でも庶子と言って、外にできた子供なのだ。貴族が侍女に手を出し生まれたのがお前で、貴族夫人がそれに嫉妬して、お前の母とお前を殺そうとしていた。お前の養い親の農夫は、当時、その貴族のところで下男をしていて、殺されかけているお前を見て、咄嗟に自分の家に連れ帰って、匿うつもりだったようだ。時が過ぎ、お前の父親の貴族は亡くなり、ご落胤探しが本格的に激しくなったので、お前を捨てて自由に生きさせようと思ったのだ」

「嘘よ嘘。そんなデタラメどうして信じろって言うのよ?」

「お前の養い親の農夫は死んだ。お前を護るために」

「嘘!やめて!」

「どうやら悪魔に魂を売り渡してもなお、人間らしい心も残っていたのだな?だからと言って、お前がしたことは許されるものではない。そろそろ本当の姿になってもらおうか」

神様が雷を落としたと思ったら、そこに現れたのは、王冠を被ったヒキガエルの魔物で、その醜さから誰もが顔をしかめる。

「捨てられ、魔物に食われた娘リリアーヌよ。聖女様を殺し、人々を誑かした罪は大きい。よって二度と人間に生まれ変わらせない、覚悟せよ」

「承知しました」

そのヒキガエルの魔物はポロポロと涙をこぼしながら、闇のかなたに消えていく。


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