2 / 21
前世の記憶1
しおりを挟む
あれはもういつのことだったか、記憶が定かではない。
おそらくは、前世のことだったように思う。ただそれだけ。
どう考えても自分の名前すら思い出せない遠い昔のこと。前世と言うからには、一度死んでいるのだが、どうやって死んだのかさえ覚えていない。
今、はっきりしていることは、サイゴンとしずくは、前世で愛し合っていたということだけ。
サイゴンが学内で美女狩りをしていたのは、しずくを見つけるため。ナンパして、それがしずくでないと見切った途端、学友にその美女を下げ渡していたのに過ぎない。
東帝大生、美人、という条件だけで、愛するしずくを探そうとしていたから。
サイゴンが、前世の記憶を覚醒したのは、高校生になってからである。趣味で始めたスノーボードを同級生とともに、雪崩に巻き込まれたその瞬間、ビバークして難を逃れたのであるが、その時、雪崩と共に一気に前世の記憶がなだれ込んできたのだ。
前世も同じように、スノーボードを趣味にしていた。もう趣味というよりは、オリンピックもプロも目指していたというほうが、正確なほどスノボにのめり込んでいた。
前世、自分の家は、大企業とまでは言えないが、そこそこ名の通った会社を経営していた。でも、親父とは犬猿の仲で、大学を卒業して、すぐ家を出た。早い話が、勘当されてしまったのだ。どうしても会社を継ぐ気になれず、飛び出すように家を出た。
大学は幼稚舎からエスカレーター式で行ける有名私立大学を卒業し、そのまま老舗の商社に入社する。
初めての上司が東帝大卒で、上から目線で嫌な奴だと思った。
それから東帝大卒の奴らを毛嫌いするようになったのだが、その上司もわずか数年で退職していったのだ。勉強はできるかもしれないが、社会常識がまるでないのだ。特にコミュニケーション能力が皆無と言っていいほどに。
サイゴンは、前世でもイケメンで、その外見から女の方から近寄ってくることにうんざりしていた。中学の頃になるとラブレターは当たり前のように毎日届く。LIMEも、女の方から交換を言われる。バレンタインデーになると、もう持ち帰れないほどの量のチョコレートの山に、いつも職員室へ持っていき、そこで処分してもらっていたのだ。
でも会社に入ってからは、その外見の良さでスピード出世し、30代でグループ会社の取締役にまで上り詰める。
誰が見ても、気に入られる外見に加え、有名私立大学卒業は十分すぎるほどの武器になったのだ。
当然、縁談も数多く、中でも社長の娘からはストーカーされるほどの執着をされ、追いかけまわされ、辟易し、とことん女嫌いにさせることになったのだ。
オンナは自分の欲を満足させるためだけの道具としか見られなくなった。
当然、周囲からのやっかみも激しく、陰口で「顔だけ役員」とあだ名されるようになる。
普通に考えれば、上場会社で、顔だけで取締役になることは不可能で、営業成績もピカイチだったのだが、それにもって生まれた外国語のセンスがあり、海外勤務も難なくこなせる。
それに他の取締役は全員ブサメンで、だから「顔だけ役員」など言語道断の陰口だったことが物語られる。
若い時から、女には不自由することなく、順調にエリートコースを上っていたのだが、先輩で退職してから、海外で起業し、軌道に乗せた人物から、会社に内緒で極秘オファーが来たことから、そこで悩みだす。
サイゴンは、独身者だったから、身軽なのだ。これが、妻子がいれば、そんなオファーなど来ても、一蹴するのがオチ。
現在、抱えている仕事は新規事業の責任者が3件、プロジェクト責任者が5件ある。それらすべての仕事を放りだし、社長の右腕の座までも捨て、海外に行くことは事実上不可能なこと。
それで、休憩中に、仕事や人間関係へのうっ憤を現実逃避するかのように、スマホアプリを始めるようになり、のめり込む。
そのアプリは、アパレル関係の仕事をしているサイゴンには、うってつけの着せ替えをメインとしてのゲームで、アバターに自分の好きな着せ替えをして、楽しむものだった。
毎日、隙間時間にINして、無料のガチャを回し、当たったものを適当に配置していく。
フレンド機能はあったけど、チャットをせずとも、無言でも遊べる。
着せ替えがメインなゲームなので、若い女性の登録者が多い。実際は若いだけでなく、小学生から高齢者まで、幅広く女性に支持されている。
そこに目を付けたのが、運営会社で、若い女性との仲を取り持つ恋活アプリに仕様を変更していく。
サイゴンがのめり込むようになってからは、出会い系アプリへと変わって行った後のこと。
ここでも、顔が見えないアプリなのに、サイゴンの仕事がわからなくてもオンナが寄ってくる。
仕事で培われた独特のセンスの良さに。普通のエロ目的のバカ男とは、違って見えるのだろう。
恋活アプリと言っても、出会い系ではなく、バーチャルな恋愛を楽しむゲームで、パートナー機能だけでなく、気に入った相手と結婚できるシステムがあったのだ。
もちろん、実生活で結婚していないサイゴンにとっては、非常にハードルが高い。
若い女性や子供は、年寄りもそうかもしれないが、別に実際に結婚するわけではないのだから、と軽々と何度も結婚、離婚を繰り返していき、アイテム集めに余念がない。
ゲーム内で最愛の人が見つかれば、結婚して、子供はコウノトリが運んでくるという仕組み。
実社会では、絶対にモテない男が多い。うまくいけば、本物の女性とHできるかもしれないという期待を持って、入会してくる。
おそらくは、前世のことだったように思う。ただそれだけ。
どう考えても自分の名前すら思い出せない遠い昔のこと。前世と言うからには、一度死んでいるのだが、どうやって死んだのかさえ覚えていない。
今、はっきりしていることは、サイゴンとしずくは、前世で愛し合っていたということだけ。
サイゴンが学内で美女狩りをしていたのは、しずくを見つけるため。ナンパして、それがしずくでないと見切った途端、学友にその美女を下げ渡していたのに過ぎない。
東帝大生、美人、という条件だけで、愛するしずくを探そうとしていたから。
サイゴンが、前世の記憶を覚醒したのは、高校生になってからである。趣味で始めたスノーボードを同級生とともに、雪崩に巻き込まれたその瞬間、ビバークして難を逃れたのであるが、その時、雪崩と共に一気に前世の記憶がなだれ込んできたのだ。
前世も同じように、スノーボードを趣味にしていた。もう趣味というよりは、オリンピックもプロも目指していたというほうが、正確なほどスノボにのめり込んでいた。
前世、自分の家は、大企業とまでは言えないが、そこそこ名の通った会社を経営していた。でも、親父とは犬猿の仲で、大学を卒業して、すぐ家を出た。早い話が、勘当されてしまったのだ。どうしても会社を継ぐ気になれず、飛び出すように家を出た。
大学は幼稚舎からエスカレーター式で行ける有名私立大学を卒業し、そのまま老舗の商社に入社する。
初めての上司が東帝大卒で、上から目線で嫌な奴だと思った。
それから東帝大卒の奴らを毛嫌いするようになったのだが、その上司もわずか数年で退職していったのだ。勉強はできるかもしれないが、社会常識がまるでないのだ。特にコミュニケーション能力が皆無と言っていいほどに。
サイゴンは、前世でもイケメンで、その外見から女の方から近寄ってくることにうんざりしていた。中学の頃になるとラブレターは当たり前のように毎日届く。LIMEも、女の方から交換を言われる。バレンタインデーになると、もう持ち帰れないほどの量のチョコレートの山に、いつも職員室へ持っていき、そこで処分してもらっていたのだ。
でも会社に入ってからは、その外見の良さでスピード出世し、30代でグループ会社の取締役にまで上り詰める。
誰が見ても、気に入られる外見に加え、有名私立大学卒業は十分すぎるほどの武器になったのだ。
当然、縁談も数多く、中でも社長の娘からはストーカーされるほどの執着をされ、追いかけまわされ、辟易し、とことん女嫌いにさせることになったのだ。
オンナは自分の欲を満足させるためだけの道具としか見られなくなった。
当然、周囲からのやっかみも激しく、陰口で「顔だけ役員」とあだ名されるようになる。
普通に考えれば、上場会社で、顔だけで取締役になることは不可能で、営業成績もピカイチだったのだが、それにもって生まれた外国語のセンスがあり、海外勤務も難なくこなせる。
それに他の取締役は全員ブサメンで、だから「顔だけ役員」など言語道断の陰口だったことが物語られる。
若い時から、女には不自由することなく、順調にエリートコースを上っていたのだが、先輩で退職してから、海外で起業し、軌道に乗せた人物から、会社に内緒で極秘オファーが来たことから、そこで悩みだす。
サイゴンは、独身者だったから、身軽なのだ。これが、妻子がいれば、そんなオファーなど来ても、一蹴するのがオチ。
現在、抱えている仕事は新規事業の責任者が3件、プロジェクト責任者が5件ある。それらすべての仕事を放りだし、社長の右腕の座までも捨て、海外に行くことは事実上不可能なこと。
それで、休憩中に、仕事や人間関係へのうっ憤を現実逃避するかのように、スマホアプリを始めるようになり、のめり込む。
そのアプリは、アパレル関係の仕事をしているサイゴンには、うってつけの着せ替えをメインとしてのゲームで、アバターに自分の好きな着せ替えをして、楽しむものだった。
毎日、隙間時間にINして、無料のガチャを回し、当たったものを適当に配置していく。
フレンド機能はあったけど、チャットをせずとも、無言でも遊べる。
着せ替えがメインなゲームなので、若い女性の登録者が多い。実際は若いだけでなく、小学生から高齢者まで、幅広く女性に支持されている。
そこに目を付けたのが、運営会社で、若い女性との仲を取り持つ恋活アプリに仕様を変更していく。
サイゴンがのめり込むようになってからは、出会い系アプリへと変わって行った後のこと。
ここでも、顔が見えないアプリなのに、サイゴンの仕事がわからなくてもオンナが寄ってくる。
仕事で培われた独特のセンスの良さに。普通のエロ目的のバカ男とは、違って見えるのだろう。
恋活アプリと言っても、出会い系ではなく、バーチャルな恋愛を楽しむゲームで、パートナー機能だけでなく、気に入った相手と結婚できるシステムがあったのだ。
もちろん、実生活で結婚していないサイゴンにとっては、非常にハードルが高い。
若い女性や子供は、年寄りもそうかもしれないが、別に実際に結婚するわけではないのだから、と軽々と何度も結婚、離婚を繰り返していき、アイテム集めに余念がない。
ゲーム内で最愛の人が見つかれば、結婚して、子供はコウノトリが運んでくるという仕組み。
実社会では、絶対にモテない男が多い。うまくいけば、本物の女性とHできるかもしれないという期待を持って、入会してくる。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる