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養子
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京都駅に到着したしずくは、南側の八条口の方から出ずに、正面から出て地下鉄に乗ったほうが早いという。
京都駅正面玄関には吹き抜けになっており、巨大なクリスマスツリーが観光客を出迎える。
羅生門の再建を思わせるような駅ビルは、建築当時様々な疑念を呼ぶが、いざ建ってしまったら、大阪の高層ビルを見慣れている京都市民からは、「なんだ、これぐらいのものか。」と安堵と言うより、がっかりしたというのが、本音の大半を占めた。
京都駅の地下街でケーキを買い、地下鉄に乗ること5分で京都市の中心地まで行く。
元は、公家の屋敷だったところを買い取り、改築を重ねて、現在も現役で使用している立派な門をくぐる。
京都特有のウナギの寝床になっているらしく、すこし小さな庭があり、その先に玄関があった。
「ただいまー。」
「おかえり。早かったんやなぁ。」
「蹴上ホテルのケーキ売ってたさかい、買うてきたで。」
サイゴンは、緊張した面持ちで、靴をそろえ座敷で待つ。
しばらくすると、明らかに顔が怒っているしずくの父親が入ってきた。
サイゴンは座布団を外し、土下座して結婚の許しを請う。
しずくの母親としずくは、その姿にくすくすと笑いながら、サイゴンの横で同じ姿勢を取る。
しずく父は、開口一番
「お前、娘に何をした?」
「抱きました。」
あなたのベッドで、とは言わない。
「な、な、なんだと?大事な娘を抱いたと?娘は心臓が悪いのだぞ。それをよくもぬけぬけと抱いたなどと……。」
「だって、サイゴンちゃんのことが好きだったんだもん。私からお願いして、抱いてもらったのよ。そしたら、サイゴンちゃんったら、責任を取るとか言い出して……、現在に至るってこと。」
「それで、どうだったんだカラダの方は?大丈夫か?」
「それがね、すっごく良かったの。サイゴンちゃんは優しくて、大きくて硬くて、いっぱい愛してくれたの。だから私、サイゴンちゃん以外の人と結婚したくない。」
「そういう意味で聞いたのではない。まぁ、元気ならいいが。」
しずく父は顔を赤くしながら、汗を拭いている。
「娘は一人娘だということを承知で、今日来たのか?」
「……。」
「つまり我が家へ養子に来るのか?と聞いているのだ。」
「はい、そのつもりです。」
「そちらのご両親は納得されているのか?」
「勘当になりました。私がどうしても親の会社を継ぐことにためらいがあったもので、家を出ました。」
「ほぅ。それならば帰る家がないということだな。わかった。結婚を許可しよう。ただし、条件がある。」
その条件は驚くべき内容で、ちょっと考えさせてくれと言いたかったのだが、とても言える雰囲気ではない。
その条件とは、一つは今すぐ結婚の入籍をしろ。というもので、京都に養子に入るのであれば、早めに京都の習慣を身に着けたほうが何かと利便性がある。ということ。これに異存はない。
もう一つが問題なのだ。もし、しずくが子供を産んでも産まなくても、亡くなってしまった後は、新たな女性を娶り、その再婚相手との間に子供を作り、この家の後継ぎとすること。
独身主義者だから、と言う言い訳ができない。
サイゴンは、養子縁組として、しずくの家に迎え入れられたのである。
サイゴンにとてもそんな体力はない。しずく以外の女性を抱いて、その女性との間に子を設けるなど考えただけで、萎えてしまう。
親父から勘当された身だから、家を捨てしずくの家に入ることは、異論はない。しかし、後継ぎに対して、責任は取れない。
サイゴンは、結婚について、甘い考えを持っていたことを思い知らされる。
「どうだ?できぬか?できぬなら、娘はやれん。」
短い間で、自問自答していると、しずく父から脅迫めいた視線を向けられる。
「やります。……謹んで、その条件をお受けします。」
「そうか、引き受けてくれるか。婿殿よ。祝いに一杯やろうではないか?イケる口だろ?」
しずく父は、途端に上機嫌になり、相好を崩す。
「いやぁ、婿殿、ありがとう。娘の病気がわかってから、家内とハッスルして、もうひとり子供を作ろうかと思っていたんだが、婿殿のほうが、儂より若い。この重労働から解放させてくれて、ありがとう。儂の代で、この家を途絶えさせることになれば、ご先祖様に申し訳が立たなくてな。いやぁ、良かった。めでたい。」
それから、しずくの家がどれだけ由緒正しい家柄かをトクトクと説明され、あくびをかみ殺すのに、必死になってしまう。
しずく父から解放されたのは、もう深夜になってからのこと。今から婚姻届けを出すにしても時間が遅い。
それに、しずくは待ちくたびれて、寝ている。
しずくの布団をかけなおしてやり、サイゴンも寝ようとベッドにもぐりこむタイミングで、またもやしずくに襲われる。
「ダメだよ。明日、婚姻届けを出すんだから、明日まで待ってよ。」
「だってぇ、ひとりで寂しくって……。」
嘘だろ?さっきまで、すやすやと寝息を立てていたじゃないか?
仕方なく、ちゅっとキスだけして、さっさと寝返りを打って、狸寝入りする。
京都駅正面玄関には吹き抜けになっており、巨大なクリスマスツリーが観光客を出迎える。
羅生門の再建を思わせるような駅ビルは、建築当時様々な疑念を呼ぶが、いざ建ってしまったら、大阪の高層ビルを見慣れている京都市民からは、「なんだ、これぐらいのものか。」と安堵と言うより、がっかりしたというのが、本音の大半を占めた。
京都駅の地下街でケーキを買い、地下鉄に乗ること5分で京都市の中心地まで行く。
元は、公家の屋敷だったところを買い取り、改築を重ねて、現在も現役で使用している立派な門をくぐる。
京都特有のウナギの寝床になっているらしく、すこし小さな庭があり、その先に玄関があった。
「ただいまー。」
「おかえり。早かったんやなぁ。」
「蹴上ホテルのケーキ売ってたさかい、買うてきたで。」
サイゴンは、緊張した面持ちで、靴をそろえ座敷で待つ。
しばらくすると、明らかに顔が怒っているしずくの父親が入ってきた。
サイゴンは座布団を外し、土下座して結婚の許しを請う。
しずくの母親としずくは、その姿にくすくすと笑いながら、サイゴンの横で同じ姿勢を取る。
しずく父は、開口一番
「お前、娘に何をした?」
「抱きました。」
あなたのベッドで、とは言わない。
「な、な、なんだと?大事な娘を抱いたと?娘は心臓が悪いのだぞ。それをよくもぬけぬけと抱いたなどと……。」
「だって、サイゴンちゃんのことが好きだったんだもん。私からお願いして、抱いてもらったのよ。そしたら、サイゴンちゃんったら、責任を取るとか言い出して……、現在に至るってこと。」
「それで、どうだったんだカラダの方は?大丈夫か?」
「それがね、すっごく良かったの。サイゴンちゃんは優しくて、大きくて硬くて、いっぱい愛してくれたの。だから私、サイゴンちゃん以外の人と結婚したくない。」
「そういう意味で聞いたのではない。まぁ、元気ならいいが。」
しずく父は顔を赤くしながら、汗を拭いている。
「娘は一人娘だということを承知で、今日来たのか?」
「……。」
「つまり我が家へ養子に来るのか?と聞いているのだ。」
「はい、そのつもりです。」
「そちらのご両親は納得されているのか?」
「勘当になりました。私がどうしても親の会社を継ぐことにためらいがあったもので、家を出ました。」
「ほぅ。それならば帰る家がないということだな。わかった。結婚を許可しよう。ただし、条件がある。」
その条件は驚くべき内容で、ちょっと考えさせてくれと言いたかったのだが、とても言える雰囲気ではない。
その条件とは、一つは今すぐ結婚の入籍をしろ。というもので、京都に養子に入るのであれば、早めに京都の習慣を身に着けたほうが何かと利便性がある。ということ。これに異存はない。
もう一つが問題なのだ。もし、しずくが子供を産んでも産まなくても、亡くなってしまった後は、新たな女性を娶り、その再婚相手との間に子供を作り、この家の後継ぎとすること。
独身主義者だから、と言う言い訳ができない。
サイゴンは、養子縁組として、しずくの家に迎え入れられたのである。
サイゴンにとてもそんな体力はない。しずく以外の女性を抱いて、その女性との間に子を設けるなど考えただけで、萎えてしまう。
親父から勘当された身だから、家を捨てしずくの家に入ることは、異論はない。しかし、後継ぎに対して、責任は取れない。
サイゴンは、結婚について、甘い考えを持っていたことを思い知らされる。
「どうだ?できぬか?できぬなら、娘はやれん。」
短い間で、自問自答していると、しずく父から脅迫めいた視線を向けられる。
「やります。……謹んで、その条件をお受けします。」
「そうか、引き受けてくれるか。婿殿よ。祝いに一杯やろうではないか?イケる口だろ?」
しずく父は、途端に上機嫌になり、相好を崩す。
「いやぁ、婿殿、ありがとう。娘の病気がわかってから、家内とハッスルして、もうひとり子供を作ろうかと思っていたんだが、婿殿のほうが、儂より若い。この重労働から解放させてくれて、ありがとう。儂の代で、この家を途絶えさせることになれば、ご先祖様に申し訳が立たなくてな。いやぁ、良かった。めでたい。」
それから、しずくの家がどれだけ由緒正しい家柄かをトクトクと説明され、あくびをかみ殺すのに、必死になってしまう。
しずく父から解放されたのは、もう深夜になってからのこと。今から婚姻届けを出すにしても時間が遅い。
それに、しずくは待ちくたびれて、寝ている。
しずくの布団をかけなおしてやり、サイゴンも寝ようとベッドにもぐりこむタイミングで、またもやしずくに襲われる。
「ダメだよ。明日、婚姻届けを出すんだから、明日まで待ってよ。」
「だってぇ、ひとりで寂しくって……。」
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仕方なく、ちゅっとキスだけして、さっさと寝返りを打って、狸寝入りする。
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