聖女召喚された科捜研の女~異世界科学捜査で玉の輿を狙う

青の雀

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勢い込んで、街に出たものの、行き交う人々からの視線が痛い。

マリアの恰好はと言えば、科捜研からの通勤服なのだが、今日は合コンが入っていたので、いつもよりはややおしゃれ目なピンクのカットソーに黒のタイトスカート、手には黒のジャケット。
いかにもデキる女を装いつつも、あさましくならないように気を付けたコーディネートをしたつもり。
首からは斜めがけのポシェットをかけている。出かけに邸宅の使用人がお小遣いを持たせてくれたので、ポシェットの中にしまい込んでいる。

でも町並みは、というと……、まるっきり中世ヨーロッパの街並みでパンストを履いているとはいえ、誰もひざ下やくるぶしを見せている女性はいない。

ははーん。この格好はやっぱりマスイか?今更ながらに気づくも、ここは観光客を装うことにして、堂々としていればいいと思い直すことにした。

何事も度胸よ。度胸さえあれば乗り切れるはず。これならいつものパンツスーツの方がまだマシだったかと思うも、このいでたちで召喚されたのだから仕方がない。

相変わらずジロジロ見られるが、誰も何も言ってこないので、しばらくするとその視線にも慣れてくる。

そして気が付けば、お上りさんよろしくスマホで街並みを写しまくっていた。だって帰り道がわからなくなると困るもの。なんて妙な屁理屈を付けて、でもただ美しい街並みを科捜研のみんなに自慢したくて、プチ海外旅行気分を満喫する。

一通り散歩をして、買い物をしようにもどこに行けばいいのかわからず、結局その日は何も買わずに家路についた。

「ただいま」

家の中から何やらいい匂いがしてくる。

なんと、使用人はまりあのためにご飯を作ってくれていたのだ。

「嬉しい」

喜んで食卓に着くと、温かいスープとパン、それに肉をソテーしたものが出てきた。

「いい匂い。美味しそう」

一口食べたら、見事にその期待は裏切られてしまった。

何というか、全体に味が薄いというか……?スープは、お湯に野菜を浮かべ、塩で味付けしたもののようだった。パンは硬くて、なかなか歯ごたえがあるもので、まりあからすれば、いわゆる雑穀パンでふすまが入っている精製していない粉で焼いたものだとわかる。お肉も硬くて、いっぺんにさっきまであった食欲がなくなっていくことを感じてしまう。でも異世界に来たからには、郷に入れば、郷にしたがう。で食べなければ飢え死にしかねない。ここは、必死に咀嚼して顎が痛くなろうとも、ものともせずワインで飲み下す。

今までの生活が飽食ニッポンだったということの贅沢さを改めて身に染みて感じる。

今まで、ずいぶん食べ物を粗末にしてきたかとここへ来てつくづく反省し後悔する。

レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐なんかけっこういいものを食べているように思えるけど、実はあれもこの程度の味付けのものを食べていたのだろうか?

逆に言えば、この世界でこれだけ食べ物がマズイということは、食べ物屋さんを開けば、必ずもうかるということを表しているように思える。

そうだレストランを開店しよう!

マリアは、京都理科大学での4年間プラス科捜研での半年間、毎日自炊をしてきたから、そこそこ大抵のものは作れる。たまに学食や職食、合コンなどで外食することはあっても基本自炊だったから、この世界よりは格段に美味しいものが作れるはずだという自負がある。

研究もしたいけど、まずは食事が大切。食べることは人生を豊かに変えてくれる。元の世界へ還れる日まで元気でいなければ意味がない。

食べ終わった食器を給仕の人が下げてくれる前に厨房へ持って行くことにして、厨房で今、作れるものは何かということの確認をすることが急務のような気がした。

マリアは、真っ先に目を付けたものは、野菜くず。これがあれば、スープの出汁がとれる。寸胴鍋に野菜くずを放り込み、先ほどの肉のガラのうち、内臓を除いたものを同じように入れていき、水をいっぱい張り火にかける。
なるべく弱火でコトコト煮ること3時間。火の用心もあるので今日の作業はここまでとし、明朝一番に続きをする旨を使用人に伝え、その日は寝ることにした。

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