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お貴族様の使っていたベッドか何か知らないけど、このベッドもなかなか寝心地が悪い。
これならワンルームマンションの自室のベッドの方が柔らかいし、寝やすい。
あーあ、帰りたいなぁ。
食べ物はマズイし、なんか文化が違うというか……、そういうところヤダなぁ。服も1着しか持ってきてないから着替えもない。寝巻は使用人が用意をしてくれたネグリジェがあるものの、いつものパジャマからすれば、すーすーして落ち着かない。
そうだ!今日は金曜日だから……明日、明後日は休みだけど、科捜研にはなんて言い訳をしようか……電話をするにしても通じないだろうし、ましてやメールも無理っぽいもんな。
まりあは夏季休暇もロクにとらず、自身の研究に没頭していたので振り替え休日や代休の未申請だけで、10日はあり、有給休暇の10日も手つかずのままだから、1か月間ぐらいは、それでしのげるとは思うものの。問題はその後で……、せっかく入職できた科捜研を辞めなければならないかと思うと心苦しい。
それにお給料も受け取れない。家賃、水道光熱費は銀行口座引き落としだから大丈夫だとしても、親や職場に連絡がつかないことはどうすればいいかわからなくて落ち込んでしまう。
せめて死んだものとして扱ってくれればいいのだけど……、そうなるとマンションの部屋に置いてある私物の置き場が困る。
トランクルームを借りたくても、異世界からでは手続きができない。
本当っに、あのバカ王子?王弟殿下?には困ったものだわ!面白半分で魔方陣など描くな!
ああ、でも困った。
翌朝、早朝から昨日のスープの続きを作り始め、お日様がすっかり高く上がった頃に、噂の顔だけイケメン王子がやってきた。
「どう?うまくやっている?」
「スープを作ってみました。お味見してくださいますか?」
「へえ!これ、マリアが作ったの?すごく美味しいのだけど……、これ売れるよ」
「はい。そのつもりで作りました。お口に合ってよかったですわ」
先に使用人たちにも味見を済ませた結果、皆、一様に「美味しい」と言ってくれたことに気を良くし、とりあえずレストランでスープとパンだけを売ることにしてみた。
午前中だけで用意していた100食を完売し、お客様の中にはスープだけを何度もお代わりされる方までいた。
なんと、お客様の中には、使用人の姿もチラホラ、聞けば家人への土産にするそうな。言ってくれたら、その分はタダであげるのに……、でも王家からきちんと賃金が支払われているのだから、何もないまりあよりははるかに裕福なことは確かで、これからは使用人だけをターゲットにして、料理をこしらえるとするか?どちらが使用人かわからなくなるけど……。
ちゃんと出汁を取れば、美味しいので売れることが証明されたわけだが、それではレシピが駄々洩れになり、複製を作られ売られてしまいかねない!ここは、やはり主従の関係を明確にしておかなければ、すぐに真似でもされてしまったら、たちまちこの世界で生きていけなくなってしまう。
昼食も売り物のスープとパン、サラダで済ませ王宮からの馬車で教会に向かう。昨日のうちにもう一つのお願いを伝えておいたおかげで、今日から毎日、午後は教会で聖女様の魔法を勉強させてもらえることになったのだ。
聖女魔法さえ使えられるようになれば、ここでの暮らし向きもずいぶん助かると言えるだろう。
教会の司祭様に教えていただくことになり、最初に魔力判定が行われる。
まりあは普通のニッポン人だったので、おそらく魔力は皆無だと思うが、言われるままに水晶玉に手をかざしてみた。
水晶玉はキラキラと七色に輝きだす。これは全魔法に適性があるということらしい。魔法にも学問と同じように経済、法学、医学、理学、文学などのように自然の生業をもとにした属性というものが存在する。
まりあは、その属性すべてに適応しているらしく、さすがは聖女様!と褒められたけど、ちっとも嬉しくない。
これならワンルームマンションの自室のベッドの方が柔らかいし、寝やすい。
あーあ、帰りたいなぁ。
食べ物はマズイし、なんか文化が違うというか……、そういうところヤダなぁ。服も1着しか持ってきてないから着替えもない。寝巻は使用人が用意をしてくれたネグリジェがあるものの、いつものパジャマからすれば、すーすーして落ち着かない。
そうだ!今日は金曜日だから……明日、明後日は休みだけど、科捜研にはなんて言い訳をしようか……電話をするにしても通じないだろうし、ましてやメールも無理っぽいもんな。
まりあは夏季休暇もロクにとらず、自身の研究に没頭していたので振り替え休日や代休の未申請だけで、10日はあり、有給休暇の10日も手つかずのままだから、1か月間ぐらいは、それでしのげるとは思うものの。問題はその後で……、せっかく入職できた科捜研を辞めなければならないかと思うと心苦しい。
それにお給料も受け取れない。家賃、水道光熱費は銀行口座引き落としだから大丈夫だとしても、親や職場に連絡がつかないことはどうすればいいかわからなくて落ち込んでしまう。
せめて死んだものとして扱ってくれればいいのだけど……、そうなるとマンションの部屋に置いてある私物の置き場が困る。
トランクルームを借りたくても、異世界からでは手続きができない。
本当っに、あのバカ王子?王弟殿下?には困ったものだわ!面白半分で魔方陣など描くな!
ああ、でも困った。
翌朝、早朝から昨日のスープの続きを作り始め、お日様がすっかり高く上がった頃に、噂の顔だけイケメン王子がやってきた。
「どう?うまくやっている?」
「スープを作ってみました。お味見してくださいますか?」
「へえ!これ、マリアが作ったの?すごく美味しいのだけど……、これ売れるよ」
「はい。そのつもりで作りました。お口に合ってよかったですわ」
先に使用人たちにも味見を済ませた結果、皆、一様に「美味しい」と言ってくれたことに気を良くし、とりあえずレストランでスープとパンだけを売ることにしてみた。
午前中だけで用意していた100食を完売し、お客様の中にはスープだけを何度もお代わりされる方までいた。
なんと、お客様の中には、使用人の姿もチラホラ、聞けば家人への土産にするそうな。言ってくれたら、その分はタダであげるのに……、でも王家からきちんと賃金が支払われているのだから、何もないまりあよりははるかに裕福なことは確かで、これからは使用人だけをターゲットにして、料理をこしらえるとするか?どちらが使用人かわからなくなるけど……。
ちゃんと出汁を取れば、美味しいので売れることが証明されたわけだが、それではレシピが駄々洩れになり、複製を作られ売られてしまいかねない!ここは、やはり主従の関係を明確にしておかなければ、すぐに真似でもされてしまったら、たちまちこの世界で生きていけなくなってしまう。
昼食も売り物のスープとパン、サラダで済ませ王宮からの馬車で教会に向かう。昨日のうちにもう一つのお願いを伝えておいたおかげで、今日から毎日、午後は教会で聖女様の魔法を勉強させてもらえることになったのだ。
聖女魔法さえ使えられるようになれば、ここでの暮らし向きもずいぶん助かると言えるだろう。
教会の司祭様に教えていただくことになり、最初に魔力判定が行われる。
まりあは普通のニッポン人だったので、おそらく魔力は皆無だと思うが、言われるままに水晶玉に手をかざしてみた。
水晶玉はキラキラと七色に輝きだす。これは全魔法に適性があるということらしい。魔法にも学問と同じように経済、法学、医学、理学、文学などのように自然の生業をもとにした属性というものが存在する。
まりあは、その属性すべてに適応しているらしく、さすがは聖女様!と褒められたけど、ちっとも嬉しくない。
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