悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀

文字の大きさ
2 / 7

2.

しおりを挟む
 マリアベルーナが家を出てから、修道院に着くまで2日を要した。その間、誰かに見咎めるわけではなく、順調に旅程は進む。

 食事やかいばは、貯金していたもので買えた。目立たないようにフード付きマントを被っていたので、貴族令嬢とは思われなかったみたい。

 だいたい護衛や侍女も付けずに遠出をしたことがない。

 だから生まれて初めての遠出ともいえる家出に、実はワクワク感が止まらないでいる。

 これも一種の冒険だから。母が厳しくて、遊ぶこともままならなかったので、こういうことにも、いちいち感動してしまう。

 ふと、このまま修道院に行かず、いっそのこと冒険者にでもなれば楽しいだろうか?と頭を過ぎるも、そこまで冒険するのもいかがなものかと思いとどまってしまう。

 一応、お妃教育で、護身術や武術の心得はあるものの。男性とは比べ物にならない程、か弱い……はず。

 我が家の騎士と腕比べしたことがないから、実力の程はわからない。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 一方、その頃のアマリリス家では、マリアベルーナの家出を知り、父の公爵が頭を抱えている。

 屋敷の者に、マリアベルーナの行きそうなところを探索するように命じるも、マリアベルーナの外出先は主に、王城だったわけで、他のところには、一切心当たりがない。

 流行りの劇場やカフェにも行ったことがないマリアベルーナの行きそうなところはまったく見当がつかない。それもそのはずで、アマリリス公爵は、本妻とマリアベルーナを蔑ろにして、愛人のところに入り浸っていたのだから、知る由もない。

 新しい公爵夫人となった愛人は、我関せずと鷹揚に構えていて、動じないどころか厄介払いができて、清々したと言った風にお茶を飲んでいる。

 焦りまくっているアマリリス公爵とは、対照的。

 そこにリリアーヌが、もう昼だというのに、今頃起きてきて、マリアベルーナの家出について

「ああ。昨日、レオンハルト様がマリアベルーナと婚約破棄するって、言ってたから、それと関係があるんじゃないの?レオンハルト様にお姉さまに苛められたって泣きついたら、頭を撫でてくれて、婚約破棄してやるって、息巻いてたから」

「り、リリアーヌ!それはまことか!?なんということをしでかしてくれたんだ!いいか?お前がいくらレオンハルト殿下と親密になろうとも、お前は決して、婚約者や結婚相手にはなれないんだぞ!」

「どうしてよ!お姉さまが婚約者になれて、私が成れないなんて、どうして!」

「身分の差だ。婚外子であるお前は、ただの俺の連れ子としてしか、身分がない。俺の身分は、マリアベルーナで保っているようなものだからな。あーあ。でも、これでマリアベルーナの失踪が王家にバレでもしたら、俺もこの家もお終いだ」

 アマリリス公爵は、こんなことになるのなら、リリアーヌをこの家に入れるべきではなかったと後悔し、同時にマリアベルーナをもっと大切に扱って、せめて父娘の信頼関係ぐらいは築いておけば、こんなことにならなかったのかもしれないと、今更ながらに後悔をしている。

「だって、アイツ(マリアベルーナのこと)ウザイんだもの。それに何もできない私を嘲笑うんだよ。誰からも愛されていないくせに生意気なんだよ」

「いい加減にしないか!リリアーヌも少しはマリアベルーナを見習って、勉強しなさい」

「なんなのよぉ!さっきから、マリアベルーナ、マリアベルーナって、アイツが私を苛めなきゃ、もう少し仲良くしてあげたのに」

「この家で一番偉いのは、俺ではなくマリアベルーナなのさ。マリアベルーナがいるから実父である俺がアマリリス公爵を名乗っていられる。失踪したことがバレれば、この家は取り潰しになる運命なのだ」

 マリアベルーナの実母は、某国の王女殿下で、ブランシェ国に嫁いできた。本来、アマリリス家は、改易になるところが、実母が実父と結婚して、子供を生すことを条件に家が存続していた。

 アマリリス公爵は、妻の王女殿下へのコンプレックスから、つい浮気に走ってしまったのだ。何事においても、完璧すぎる妻だったから。

 王女殿下の血を引くマリアベルーナがいなくなれば、当然、家は改易になる。アマリリス公爵は、その地位を失うばかりか、下手をすれば平民落ちになりかねない。

 離婚するも、できない。離婚したら、たちまち公爵の身分を失い、路頭に迷うことになる。このことは、マリアベルーナでさえも知らない話だったのだ。

「そんな話、初めて聞きましたわ!」

 今まで、さんざんマリアベルーナをバカにしてきた使用人も一様に項垂れるばかり。

「元はと言えば、こんな阿婆擦れに引っかかった俺が一番悪い。お前は、俺の地位を見て、俺を愛している風を装っていたのだな?」

「ええ。そうよ。旦那様が、借り物の公爵だなんて、思わなかったから」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

わたくしが悪役令嬢だった理由

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。 どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。 だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。 シリアスです。コメディーではありません。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。

hikari
恋愛
妹に婚約者を奪われて狼狽していたら、自分はある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気づく。 妹のナタリーがヒロイン。両親は妹の味方。唯一の味方が弟のルイでした。 しかも、何をしてもダメ出しをする間抜けな平民のダメンズに言い寄られ、しつこくされています。私に分相応なのはこの平民のダメンズなの!? 悪役令嬢ものは初めてです。 今作はギャグがメイン

【完結済み】王子への断罪 〜ヒロインよりも酷いんだけど!〜

BBやっこ
恋愛
悪役令嬢もので王子の立ち位置ってワンパターンだよなあ。ひねりを加えられないかな?とショートショートで書こうとしたら、短編に。他の人物目線でも投稿できたらいいかな。ハッピーエンド希望。 断罪の舞台に立った令嬢、王子とともにいる女。そんなよくありそうで、変な方向に行く話。 ※ 【完結済み】

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...