裏口診療所 ~貧乏医者、現代医療で成り上がり

青の雀

文字の大きさ
17 / 24
江戸時代編

17.ハイエースワゴン

しおりを挟む
 門弟3人を江戸へ派遣するため、凛太朗は、電動自転車とバッテリーを買うことにした。
 歩いていくよりは、早いし、楽だし、電動アシストなら峠の道も楽々だろう。

 ヘルメットも好きな色を選ばせた。
 サイクリングスーツも好きな色、形を買ってやったら、他の門弟も欲しがったので、それぞれに買ってやった。

 かばんはリュックサック形式がいいだろう。
 丈夫な革製のドイツのリュックを選んだ。もちろん雨用のビニールカバーも合わせて買った。

 京都所司代の役人の一人が、江戸まで同行してくれることになった。
 それは、安心だから、と歓迎していたのだが、門弟たちの装備を見て、自分も同じものが欲しいと言い出した。同行者一人だったのが、噂を聞きつけて二人になった。

 いやいや、自転車乗れないでしょ?
 練習する、という。

 江戸時代の人間は、なぜこうも好奇心が旺盛なんだろう。
 珍しいもの、新しいものが大好きで、すぐに取り入れてしまおうとする。

 そういえば、現代の京都人に通じているところがある、と凛太朗は感じた。
 京都人も新しいもの、珍しいものが大好きだ。景観が…、とか、言っている奴は、あとから京都に入ってきた似非京都人だ。
 京都駅ができた時も、アベノハルカスができた時も、京都人は自ら行列をものともせず見に行く。江戸時代から、今も昔も本質的には、何ら変わらないというところか。

 結局5人で行くことになったのだが、電動アシストマウンテンバイクではなく、四駆のほうがいいのでは?と妻が言い出した。

 「いやいや裏口が壊れるって、四駆を裏口から出せないよ。」

 「裏口なんて広げればいいじゃない!」妻がキレた。

 「はい。そうします。とか、それならワンボックスカーのほうがよくないか?」

 「それより、免許はどうするんだ?」

 「江戸時代に免許なんてないから、あなた(凛太朗)が運転すればいいじゃない?」

 「ええ!俺も行くのか?」

 「そうよ。子供たちだけで行かせる気!」

 「クリニックはどうする?」

 「どうせ、開店休業でしょ。」

 「簡単に言ってくれるな。」

 夫婦げんかに発展してしまった俺たちを見て、門弟たちも役人たちも唖然としている。

 例によって例のごとく、いつものように完全に言い負かされてしまった凛太朗は、門弟6人と役人2人、それと俺たち夫婦、合わせて10人で行くことになった。

 運転は、妻にもできるから途中で疲れたら交替してもらえる…はず。

 まず、裏口を格納庫のような入り口に変えた。
 京都の家は、表から裏口まで、三和土(通り庭)になっているから、裏口さえ広げれば、問題なくワゴン車ぐらい入れる。

 ガソリンと大量の医療器械、薬剤をもって、江戸へ出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...