前世調理師の婚約破棄された公爵令嬢料理人録 B級グルメで王太子殿下の胃袋を掴めるように頑張ります!

青の雀

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1 釜揚げうどん

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 王都にある王立魔法学院の今日は卒業式、朝から卒業生に父兄でごった返しているが、物語のヒロイン公爵令嬢のミルフィーユ・マドレーヌは、熱を出して寝込んでいる。名代として、1歳年上の姉のショコラティエがかわりに出席している。パーティは欠席しても差しさわりがないであろうが、卒業式は名代を立てたとしても出席しといたほうがいいだろうと学園側の配慮でそれを認めたのである。

 そして、卒業パーティ、ショコラティエは自分は欠席するつもりでいたが、自分の旦那様で王太子殿下ブライアンが国王陛下の名代として出席されるので、王太子妃としてエスコートしたいとの申し出があり、これも妹の名代として出席することになったのである。

 学園側は国王陛下の名代として、ブライアン様の妻としての出席は歓迎すると言われてしまったのであるから、出ないわけにもいかなくなり、渋々、出ることに、主賓は卒業生なので、ブライアン様の陰に隠れ、なるべく目立たないようにしていたのだが

 「公爵令嬢ミルフィーユ・マドレーヌ!」

 呼びかけられたが、妹は高熱で寝込んでいる。

 「無視するな!公爵令嬢ミルフィーユ・マドレーヌ!貴様とは、今宵をもって婚約を破棄するものとする。」

 高らかに宣言されているのは、妹の婚約者である第2王子殿下のウィリアム様である。腕には、頭の悪そうなピンク色の髪の毛をした令嬢をぶら下げている。

 そして王太子殿下の腕にぶら下がっているショコラティエに向かって、何やら叫んでいるようだが、ショコラティエには、なんのことやらさっぱりで。

 妹のミルフィーユもこんな婚約者がいて、大変ね。と思っていたら、ショコラティエの左腕を掴んで引っ張られたので、そちらに転びそうになった時、旦那様のブライアン様が異変に気付いて助けてくださいました。

 「ウィリアム!何をする!」

 「へ?兄上、そこの女が男爵令嬢のリリアーヌを学園内で虐めぬいていたから婚約破棄を言い渡していたところです。」

 ショコラティエを指さして、ウィリアム様が叫んでいる。
 男爵令嬢のリリアーヌも、同じくショコラティエを指さして

 「そうですわっ!私も確かにこの女性に教科書を破られたり、噴水に突き落とされたり致しましてよ。」

 「ほう、それは奇怪な?ウィリアムもそこの令嬢も、確かに俺の隣にいるこの女性にやられたと申すのだな?誰か人違いをしているのではないのか?」

 「「間違いなく、この亜麻色の髪の女です。」」

 「無礼者!この女性は、俺の妻でショコラティエ王太子妃殿下であるぞ!」

 「へ?でも、卒業式の時は、ミルフィーユとして卒業証書を授与されていたではないか?」

 「あれは、妹の名代で、妹は一週間前から高熱を出して寝込んでおりますから。」

 「ウィリアム!お前は、婚約者殿の顔もろくすっぽ覚えていないのか?」

 「へ?でもリリアーヌが逃げていくときの亜麻色の髪の毛を確かに見たと言っていたから。」

 「リリアーヌとやら、虐められた時の状況を詳しく言ってみなさい。だれか証人がいるのか?」

 「いいえ。証人はいませんが、確かに……亜麻色の髪の毛をした女性が逃げていく後ろ姿を見ましてでございます。」

 「それは、いつのことだろうか?」

 「一週間前と3日前です。」

 「では、犯人は、ミルフィーユ嬢ではない。ミルフィーユ嬢は一週間前から原因不明の高熱で寝込んでいて学園を休んでいる。第一ミルフィーユ嬢は、プラチナブロンドヘアである。」

 「へ?では、ミルフィーユは、俺とリリアーヌの仲を嫉妬して誰かに頼んだのではないか?」

 「誰かとは、誰だ?その女が都合よく亜麻色の髪の毛だったのか?」

 「嘘ではありません。私は確かに亜麻色の髪の毛をした女性に突き飛ばされたのです。信じてくださいませ。」

 リリアーヌは瞳を潤ませながら上目遣いで見てくる。

 「では、証拠を拝見するとしようか?」

 「は?証拠も証人もおりません。と先ほど申し上げましたが……。」

 「ここは魔法学院なるぞ?この学院はいたるところに監視カメラが備え付けてあり、リアルタイムで映像が保存しているのである。」

 「もしその映像になかった場合、国家反逆罪で拘束させてもらおう。仮にもミルフィーユ嬢は義理の妹になるのでな。」

 リリアーヌは、青ざめ目が泳いでいる。
 そこへ映像が保管されている魔道具が運び込まれてきたのである。

 「最初は一週間前であったな。教科書を破られたと申していたから、教室での映像だな。」

 その映像の中身は、誰もいない教室でリリアーヌが机の中から教科書を取り出し、破りながら「ミルフィーユ様、何をなさいます!」と大声で叫んでいるところ。

 「次は3日前の噴水前の映像は、……おお!これだ。」

 誰もいない噴水前で、悲鳴を上げながら噴水に飛び込むリリアーヌが映っているだけであったのだ。

 「リリアーヌ!貴様、嘘を吐いていたのか!なぜだ?愛していると言ってくれていたではないか?なぜ、嘘を吐く必要があったのだ?」

 「だって……ウィリアムがなかなかミルフィーユと婚約破棄してくれないから。王家が決めた婚約を簡単に破棄できないって。それでも虐めたなどの瑕疵がある場合は、できるって言ったじゃない。」

 リリアーヌは泣きながら騎士に連れていかれた。

 「ウィリアム、お前は追って、父上の沙汰を待つがよい。しばらくは謹慎いたせ。」

 ウィリアムは、おとなしく騎士に連れていかれることになったのである。ウィリアムとミルフィーユの婚約は白紙に戻ったのである。

 ショコラティエは、父マドレーヌ公爵にパーティでの仔細を話すが、まだミルフィーユの熱は下がらない。

 卒業式の翌日、ようやく熱が下がり目覚めたミルフィーユは、なんと!前世の記憶を思い出してしまったのである。

 前世はニッポンの料理人だったのだ。京都の有名な茶懐石の店に嫁いで、今度小学生になる男の子が一人いたのである。小さい時から、料理が好きでお茶が好きで、茶道の家元でお稽古しているときに、お家元さんの勧めもあって主人と知り合い結婚したのである。なんで死んだのか?よく覚えていないが、料理を作る楽しさだけは鮮明に覚えている。

 目覚めてから、ミルフィーユは、公爵邸の厨房に入らせてもらい、あれこれ料理を作っては家人にふるまっている。

 みな、見たこともない珍しいお料理に舌鼓を打ちながら、美味しいと口々に言ってくれる。

 「わたくし料理屋さん(レストランと言わないところがミソ)をやりたいわ。」とポツリとこぼしたら、父が店を持たせてくれた。厨房仕様もミルフィーユの好み通りになり、使いやすさ抜群である。

 お箸を使って食べる料理、なんだけどこの世界の人は不器用だからお箸を使いこなせないでいる。それで、よく子供に作ってやったオムライスやハンバーグ、お好み焼きにホットケーキを中心に提供することにする。

 あとは、シュークリームにプリン、ウチの子の名前は憶えていないけど、プリンやシュークリームが好物だったことは、覚えている。旦那の好物は覚えていない。

 王都での店の名前は「マドレーヌ亭」お菓子屋さんかラーメン屋みたいな名前だけど、この世界の常識は、家名を店名にするところが多い。

 今日は、何を作ろうかしら。朝から実は、釜揚げうどんが食べたいのである。自分用の賄いに、出汁をたっぷりとって、さっさと作ってみた昆布とかつおだしの匂いが食欲をそそる。おうどんをパスタの要領で切り、湯がいてお出汁と一緒に煮る。かまぼこがあれば言うことないけど、ないからねぎを刻んで上にまぶして、すすっていたら、通りすがりのお客さんが自分にもそれをくれ、とオーダーが入ったので試しに一杯ごちそうしたら、行列ができちゃったわ。

 ミルフィーユは、釜揚げうどんを正式なメニューに加えることにする。
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