2 / 25
2離婚
しおりを挟む
寝室では、いつも眼鏡をはずしていた裕介の顔を知っている桜ならではの発案だったのだ。
桜は誕生日も結婚記念日も、「欲しいものはあるか?」と聞いても、「裕介さんと一緒にいられるだけで幸せ。」と言ってくれるような女で、それでいて裕介の誕生日には、豪華な手料理をふるまってくれる。
そんな最高の相手ともいえる妻を捨て、顔だけのバカ女と結婚したいと申し出た裕介は罪悪感の塊で、全財産と言えるべき、預貯金と株券、それと住んでいる家屋敷の権利書を慰謝料代わりに桜に贈ることをしたのだ。
株券は会社の持ち株制度で買ったもの。
家屋敷は、祖父からの遺産相続で得たものだったが、都内の一等地に300坪の広さであったため、よくブローカーや地上げ屋から再三にわたり、売ってくれという嫌がらせがあったもの。
結婚した当初、桜がまだ学生だったため、家の苦労はさせられないと、相続人が遺産分割協議の場で、裕介名義にしてくれたものだ。
もちろん、こんなもので償いが済むとは思っていない。でも桜は
「私と別れた方が、裕介さんが幸せになれるなら、もういいの。そのかわり一生、私の不幸の上で成り立っている幸せだということを忘れないで。」
最後は、桜が泣きはらした目にさらに涙を浮かべて言われたときは、さすがに心がズキリと痛んだ。
桜は、ただ身を引いたわけではない。
桜の勤務先は経済産業省、裕介が広告代理店に就職したのをきっかけに、監督官庁である経済産業省にキャリア官僚として合格したのだ。
結婚当時は、裕介のために援護射撃するつもりで、公務員試験に挑んだだけだったが、離婚するとなれば、この地位を最大限、復讐のために利用してやる。
離婚話が具体的に出る前、旦那がお風呂に入っている間に鳴った携帯電話の名前から、今回のことを計画していたのだ。
3か月間の別居を経て、離婚することになるが、その3か月間で、不動産を売却する。5年間住んでいた愛着ある不動産だったけど、この家にいれば、否が応でも裕介との生活を思い出すから。
慰謝料は、すべて金塊に換え、貸金庫に入れた。カードキーは、秘密の隠し場所に隠す。
離婚が成立した日の翌日、桜は旧姓にまだ戻っていなく、佐倉桜の名前で、博衛堂に臨検として乗り込む。
受付嬢は、あのにっくき涼森鈴。
「アンタが泥棒猫だったのね!高校時代、私をさんざん虐めていた性悪女が他人の亭主を寝取っておきながら、よくもぬけぬけと!」
「何よ。ブスにイケメンエリートなんて、不釣り合いよ。」
受付ロビーで、大声で反論してきた鈴に、桜は内心ほくそ笑む。上層部が経済産業省のキャリア官僚を派遣社員ごときが罵ったとわかれば、確実にクビ、うまくいけば、旦那の裕介も連座することになりかねないから。
「アンタの親は赤薔薇に1億円も学債を買わされたのに、アンタに短大の推薦状も下りなかったんだってね。バカすぎて、短大の品位が落ちるって、断わられたそうじゃない?この前の同窓会で、同級生から聞いたわよ。」
「アンタみたいに可愛げがない女より、マシよ!裕介さんは、私を選んだのよ。」
「アンタも相当、根性が悪いよ。今からだって、高校時代のアンタの犯罪を訴えることだって、できるのだからね。所詮、アンタは娼婦なのよ。股を開かなければ、男を手に入れられない。」
「なんですってー!」
鈴が桜につかみかかろうとした時、警備員が飛んできて、その場は収まるかに見えたが、臨検後、省に戻ろうとしていたところ交差点で、信号待ちしていたら、後ろから突き飛ばされ、あえなく死亡。
野次馬が「救急車!」と叫び、薄れていく意識の中で確かに見たものは、涼森鈴の「ざまぁみろ」という顔。
桜は誕生日も結婚記念日も、「欲しいものはあるか?」と聞いても、「裕介さんと一緒にいられるだけで幸せ。」と言ってくれるような女で、それでいて裕介の誕生日には、豪華な手料理をふるまってくれる。
そんな最高の相手ともいえる妻を捨て、顔だけのバカ女と結婚したいと申し出た裕介は罪悪感の塊で、全財産と言えるべき、預貯金と株券、それと住んでいる家屋敷の権利書を慰謝料代わりに桜に贈ることをしたのだ。
株券は会社の持ち株制度で買ったもの。
家屋敷は、祖父からの遺産相続で得たものだったが、都内の一等地に300坪の広さであったため、よくブローカーや地上げ屋から再三にわたり、売ってくれという嫌がらせがあったもの。
結婚した当初、桜がまだ学生だったため、家の苦労はさせられないと、相続人が遺産分割協議の場で、裕介名義にしてくれたものだ。
もちろん、こんなもので償いが済むとは思っていない。でも桜は
「私と別れた方が、裕介さんが幸せになれるなら、もういいの。そのかわり一生、私の不幸の上で成り立っている幸せだということを忘れないで。」
最後は、桜が泣きはらした目にさらに涙を浮かべて言われたときは、さすがに心がズキリと痛んだ。
桜は、ただ身を引いたわけではない。
桜の勤務先は経済産業省、裕介が広告代理店に就職したのをきっかけに、監督官庁である経済産業省にキャリア官僚として合格したのだ。
結婚当時は、裕介のために援護射撃するつもりで、公務員試験に挑んだだけだったが、離婚するとなれば、この地位を最大限、復讐のために利用してやる。
離婚話が具体的に出る前、旦那がお風呂に入っている間に鳴った携帯電話の名前から、今回のことを計画していたのだ。
3か月間の別居を経て、離婚することになるが、その3か月間で、不動産を売却する。5年間住んでいた愛着ある不動産だったけど、この家にいれば、否が応でも裕介との生活を思い出すから。
慰謝料は、すべて金塊に換え、貸金庫に入れた。カードキーは、秘密の隠し場所に隠す。
離婚が成立した日の翌日、桜は旧姓にまだ戻っていなく、佐倉桜の名前で、博衛堂に臨検として乗り込む。
受付嬢は、あのにっくき涼森鈴。
「アンタが泥棒猫だったのね!高校時代、私をさんざん虐めていた性悪女が他人の亭主を寝取っておきながら、よくもぬけぬけと!」
「何よ。ブスにイケメンエリートなんて、不釣り合いよ。」
受付ロビーで、大声で反論してきた鈴に、桜は内心ほくそ笑む。上層部が経済産業省のキャリア官僚を派遣社員ごときが罵ったとわかれば、確実にクビ、うまくいけば、旦那の裕介も連座することになりかねないから。
「アンタの親は赤薔薇に1億円も学債を買わされたのに、アンタに短大の推薦状も下りなかったんだってね。バカすぎて、短大の品位が落ちるって、断わられたそうじゃない?この前の同窓会で、同級生から聞いたわよ。」
「アンタみたいに可愛げがない女より、マシよ!裕介さんは、私を選んだのよ。」
「アンタも相当、根性が悪いよ。今からだって、高校時代のアンタの犯罪を訴えることだって、できるのだからね。所詮、アンタは娼婦なのよ。股を開かなければ、男を手に入れられない。」
「なんですってー!」
鈴が桜につかみかかろうとした時、警備員が飛んできて、その場は収まるかに見えたが、臨検後、省に戻ろうとしていたところ交差点で、信号待ちしていたら、後ろから突き飛ばされ、あえなく死亡。
野次馬が「救急車!」と叫び、薄れていく意識の中で確かに見たものは、涼森鈴の「ざまぁみろ」という顔。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる