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12白痴美
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実家の桜の部屋は懐かしい。家を出た時のままになっていたのだ。毎日、欠かさず掃除してくれていたのだろう。
おばあちゃんが、その部屋へお茶を持ってきてくれた。
「懐かしいだろう。桜がこんな別嬪さんになって、戻ってくるとは思わなかったよ。あたしゃ、生きててよかったよ。」
「おばあちゃん、私が桜だって、どうして気が付いたの?」
「そりゃあ、わかるさ。いくら姿・形が代わっても桜の雰囲気、ニオイが同じだったからね。それに昨夜、観音様が夢枕に立たれてね。今朝、そのことを息子夫婦に言ったんだけど、誰も信じてくれなかったんだよ。帰ってくるまで、いてくれるだろ?」
「ええ、今夜は私がご飯を作るわ。おばあちゃんは何が食べたい?好物の里芋の煮っころがしにしようか?それとも肉じゃががいい?じゃあ、ふたつとも作るね。」
おばあちゃんは、終始ニコニコ顔で頷いている。すきなもの、二つとも作れば、このまま死んじゃうのでは?と心配になるが、観音様がそんなことなさるはずがない。と信じて肉じゃがと小芋の煮っころがしを作る支度をする。
近所のスーパーで里芋とジャガイモを買う。ついでに牛肉も、桜は結婚してからはお出汁の紙パック入りのものを使うようになったので、それも併せて買う。
佐藤家では、昆布と鰹節からお出汁を取るが、仕事をしながらだったので、手軽な紙パック式のものを使うようにしたのだ。
スーパーへの買い物に、おばあちゃんもついてくる。
手際よく買い物かごに、どんどん入れていると
「慣れている手付きだね。今はもう誰かの奥さんになっているのかえ?」
「ううん。今はまだお嬢さんよ。23歳に若返ったのよ。そりゃあね、8年間も主婦をやっていたのだから慣れるわよ。」
「8年間も連れ添った相手の浮気相手に殺されてしまうなんてね。しかも高校時代、美人を鼻にかけイジメていたそうじゃないか?あんな女、死刑になればいいんだよ。ああいう女のことを白痴美というんだね。」
珍しくおばあちゃんが、過激な発言をするからビックリしてしまう。孫を失ってしまった悲しみが、言わせているのであろう。
確かに今や、仕事なってしまっている白痴美、知性の欠片もないただ美しいだけの女のことを言うが、鈴の場合は、ただ白痴と言うだけのレベルではない。根性がねじくり曲がっている。
でもそんな女の毒牙に引っかかってしまった裕介が悪い。裕介は、誰よりも女性を見た目だけで判断する男だったのだから。
結婚前は、甘い言葉で誘っていたのは、ただ女をタダで抱きたいだけの性処理としてしか、女性を見ていなかったのだろう。
結婚して、仕事がうまくいくようになってからは、性処理としてだけではなく、見栄えの良い女を連れて歩きたいとの理由から、桜を捨て、鈴を選んだ。
もしかすると、性処理の相手として、見栄えの良い女を選んだのかもしれない。
そんなこと、もっと若い頃に経験すべきなのよ。若い頃は相手の中身がどうでもよく、というか中身まで見る余裕がないから外見で判断する。
初恋がその顕著な理由、初恋の相手と不幸にも結婚してしまった人は、必ず大人になり、社会的地位ができてから、後悔している人が多い。
社会的地位ができると、離婚しづらい社会の仕組みがある。挙句に家庭内離婚、別居、不倫にしか愛を求めていないという結果がある。
「おばあちゃん、時々こうして会いに来てもいい?」
「ああ、いいよ。いつでも来ておくれ。」
おばあちゃんとは、手を繋いで帰った。もう20年ぶりぐらいのことで、おばあちゃんは重い芋の袋を持とうとしてくれるが、お肉の袋だけを渡し、紗々がその他の荷物全部を持ったのだ。
お肉は、一番上に乗せなければならない。お肉は動物の肉だから、上に重いものを載せると筋が壊れてしまい、不味くなる。
おばあちゃんが、その部屋へお茶を持ってきてくれた。
「懐かしいだろう。桜がこんな別嬪さんになって、戻ってくるとは思わなかったよ。あたしゃ、生きててよかったよ。」
「おばあちゃん、私が桜だって、どうして気が付いたの?」
「そりゃあ、わかるさ。いくら姿・形が代わっても桜の雰囲気、ニオイが同じだったからね。それに昨夜、観音様が夢枕に立たれてね。今朝、そのことを息子夫婦に言ったんだけど、誰も信じてくれなかったんだよ。帰ってくるまで、いてくれるだろ?」
「ええ、今夜は私がご飯を作るわ。おばあちゃんは何が食べたい?好物の里芋の煮っころがしにしようか?それとも肉じゃががいい?じゃあ、ふたつとも作るね。」
おばあちゃんは、終始ニコニコ顔で頷いている。すきなもの、二つとも作れば、このまま死んじゃうのでは?と心配になるが、観音様がそんなことなさるはずがない。と信じて肉じゃがと小芋の煮っころがしを作る支度をする。
近所のスーパーで里芋とジャガイモを買う。ついでに牛肉も、桜は結婚してからはお出汁の紙パック入りのものを使うようになったので、それも併せて買う。
佐藤家では、昆布と鰹節からお出汁を取るが、仕事をしながらだったので、手軽な紙パック式のものを使うようにしたのだ。
スーパーへの買い物に、おばあちゃんもついてくる。
手際よく買い物かごに、どんどん入れていると
「慣れている手付きだね。今はもう誰かの奥さんになっているのかえ?」
「ううん。今はまだお嬢さんよ。23歳に若返ったのよ。そりゃあね、8年間も主婦をやっていたのだから慣れるわよ。」
「8年間も連れ添った相手の浮気相手に殺されてしまうなんてね。しかも高校時代、美人を鼻にかけイジメていたそうじゃないか?あんな女、死刑になればいいんだよ。ああいう女のことを白痴美というんだね。」
珍しくおばあちゃんが、過激な発言をするからビックリしてしまう。孫を失ってしまった悲しみが、言わせているのであろう。
確かに今や、仕事なってしまっている白痴美、知性の欠片もないただ美しいだけの女のことを言うが、鈴の場合は、ただ白痴と言うだけのレベルではない。根性がねじくり曲がっている。
でもそんな女の毒牙に引っかかってしまった裕介が悪い。裕介は、誰よりも女性を見た目だけで判断する男だったのだから。
結婚前は、甘い言葉で誘っていたのは、ただ女をタダで抱きたいだけの性処理としてしか、女性を見ていなかったのだろう。
結婚して、仕事がうまくいくようになってからは、性処理としてだけではなく、見栄えの良い女を連れて歩きたいとの理由から、桜を捨て、鈴を選んだ。
もしかすると、性処理の相手として、見栄えの良い女を選んだのかもしれない。
そんなこと、もっと若い頃に経験すべきなのよ。若い頃は相手の中身がどうでもよく、というか中身まで見る余裕がないから外見で判断する。
初恋がその顕著な理由、初恋の相手と不幸にも結婚してしまった人は、必ず大人になり、社会的地位ができてから、後悔している人が多い。
社会的地位ができると、離婚しづらい社会の仕組みがある。挙句に家庭内離婚、別居、不倫にしか愛を求めていないという結果がある。
「おばあちゃん、時々こうして会いに来てもいい?」
「ああ、いいよ。いつでも来ておくれ。」
おばあちゃんとは、手を繋いで帰った。もう20年ぶりぐらいのことで、おばあちゃんは重い芋の袋を持とうとしてくれるが、お肉の袋だけを渡し、紗々がその他の荷物全部を持ったのだ。
お肉は、一番上に乗せなければならない。お肉は動物の肉だから、上に重いものを載せると筋が壊れてしまい、不味くなる。
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