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18小町
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庭の鹿威しが鳴る。
静まり返った部屋の中で、小田原警察庁長官の声だけが聞こえる。
「榊、水臭いではないか、こんな美しい娘御がいるなら、もっと早くに教えてくれればいいものを。霞が関小町と言う別名が付いているらしいな。」
「……恐れ入ります。私ではなく、妻に似てくれて、美しく育ってくれました。いい歳をしながら、まったく男っ気がなく、困っておりました。」
お父さんたら、勝手なことを言っている。これでも前世では、結婚していたのよ。今世は慎重になっているだけ。
「紗々さんは、ご結婚されたら、経産省を辞め家庭に入られるのですか?」
「いいえ。辞めません。」
「ハッハー。はっきりとものを申される娘御は、良いな。」
「では、そろそろお若い方だけで、お散歩などへ行かれたら、いかがですか?」
紗々と博は、料亭を後にし、近くの公園に散歩に行く。
「驚きました。サトウサクラさんではなかったのですね?」
「私、佐藤桜だなんて、名乗っていませんよ。」
「え?でも、あの時、予約名を佐藤って、おっしゃられたではありませんか?」
「あれは、おばあちゃんの苗字を名乗っただけです。」
「でも、あのおばあさんは、アナタのことを桜ちゃんと呼んでいましたよ。」
「お孫さんの名前を呼んでいただけで、私とお孫さんの区別がつかなかったのでしょう。」
「ああ、なるほど。」
「とにかく、私はアナタとは、結婚しませんから、ちゃんと断ってくださいね。」
「え?どうしてですか?私は紗々さんとなら、いい家庭が築けるものと、話を進めるつもりでいます。」
「冗談じゃないわ。私、まだ23歳よ。人生これからの時に、なんで、アナタみたいな人と結婚しなきゃなんないの?」
「まだ23歳って、オバサン臭いことを言う人だな。」
「ほら、そう言うところが嫌なのよ。とにかく、私はお断りさせていただきますからね!」
博は失言したことを焦り、謝るも許してくれそうにない。
恋愛経験が少ないから、一度怒らせてしまった女性の機嫌を取るにも、一苦労をする。
そこで、博は、紗々と同じマリンスポーツをすることにした。同じ趣味を通じて親交を深めようとする狙いがあるが、経験がないととにかく苦労の連続。
彼女はどうやらサーフィンだけではなく、マリンスポーツ全体を好んでいるようだ。スキューバダイビングをしているというから、博も挑戦することに。
なんでも博は、形から入るタイプで初心者には、到底必要のない道具、スーツを買い込む。
水泳自体が、高校の体育の授業以来だから、最初に、水に入った時、いきなり足がつり、溺れそうになってインストラクターから苦笑される。
そんなこんなで、ようやくライセンス資格を取得したころには、あのお見合いから半年が経過したときだった。
湘南に行ったとき、恐ろしくスタイルのいい綺麗な娘がいるなぁとインストラクターが話しているのを聞き、ふと見ると彼女、紗々のことだった。
なんとかして、紗々を俺の女にしたいと心底思う。
あのお見合いの後、親父からは、こっぴどく叱られた。
「若い娘をオバサン呼ばわりするなど、お前と言う奴は!」
「せっかく俺が苦労して、縁談にしてやったというものを!」
「もう、お前の縁談など知るか!勝手に、どこの馬の骨とも知れぬブスを嫁にしろ!」
さんざん、小言を言われた挙句、紗々を落とせなければ、勘当にする。とまで言われたのだ。
仕方なくではない。最初から紗々が欲しかったのに、言葉足らずで怒らせてしまったのだ。
こうなれば、あの時のおばあさんを見つけ出し、仲を取り持ってもらうしかない。あのおばあさんは、俺に対し、好意的だったことを思い出した。
手掛かりとなるのは、「サトウ」と言う名の元小学校校長だけである。
年のころは70歳ぐらいか?もう少し、上ぐらいだろうか?いわゆる団塊の世代かもしれない。
職権を使って、各小学校の卒業アルバムを入手し、名前と写真から探す。
静まり返った部屋の中で、小田原警察庁長官の声だけが聞こえる。
「榊、水臭いではないか、こんな美しい娘御がいるなら、もっと早くに教えてくれればいいものを。霞が関小町と言う別名が付いているらしいな。」
「……恐れ入ります。私ではなく、妻に似てくれて、美しく育ってくれました。いい歳をしながら、まったく男っ気がなく、困っておりました。」
お父さんたら、勝手なことを言っている。これでも前世では、結婚していたのよ。今世は慎重になっているだけ。
「紗々さんは、ご結婚されたら、経産省を辞め家庭に入られるのですか?」
「いいえ。辞めません。」
「ハッハー。はっきりとものを申される娘御は、良いな。」
「では、そろそろお若い方だけで、お散歩などへ行かれたら、いかがですか?」
紗々と博は、料亭を後にし、近くの公園に散歩に行く。
「驚きました。サトウサクラさんではなかったのですね?」
「私、佐藤桜だなんて、名乗っていませんよ。」
「え?でも、あの時、予約名を佐藤って、おっしゃられたではありませんか?」
「あれは、おばあちゃんの苗字を名乗っただけです。」
「でも、あのおばあさんは、アナタのことを桜ちゃんと呼んでいましたよ。」
「お孫さんの名前を呼んでいただけで、私とお孫さんの区別がつかなかったのでしょう。」
「ああ、なるほど。」
「とにかく、私はアナタとは、結婚しませんから、ちゃんと断ってくださいね。」
「え?どうしてですか?私は紗々さんとなら、いい家庭が築けるものと、話を進めるつもりでいます。」
「冗談じゃないわ。私、まだ23歳よ。人生これからの時に、なんで、アナタみたいな人と結婚しなきゃなんないの?」
「まだ23歳って、オバサン臭いことを言う人だな。」
「ほら、そう言うところが嫌なのよ。とにかく、私はお断りさせていただきますからね!」
博は失言したことを焦り、謝るも許してくれそうにない。
恋愛経験が少ないから、一度怒らせてしまった女性の機嫌を取るにも、一苦労をする。
そこで、博は、紗々と同じマリンスポーツをすることにした。同じ趣味を通じて親交を深めようとする狙いがあるが、経験がないととにかく苦労の連続。
彼女はどうやらサーフィンだけではなく、マリンスポーツ全体を好んでいるようだ。スキューバダイビングをしているというから、博も挑戦することに。
なんでも博は、形から入るタイプで初心者には、到底必要のない道具、スーツを買い込む。
水泳自体が、高校の体育の授業以来だから、最初に、水に入った時、いきなり足がつり、溺れそうになってインストラクターから苦笑される。
そんなこんなで、ようやくライセンス資格を取得したころには、あのお見合いから半年が経過したときだった。
湘南に行ったとき、恐ろしくスタイルのいい綺麗な娘がいるなぁとインストラクターが話しているのを聞き、ふと見ると彼女、紗々のことだった。
なんとかして、紗々を俺の女にしたいと心底思う。
あのお見合いの後、親父からは、こっぴどく叱られた。
「若い娘をオバサン呼ばわりするなど、お前と言う奴は!」
「せっかく俺が苦労して、縁談にしてやったというものを!」
「もう、お前の縁談など知るか!勝手に、どこの馬の骨とも知れぬブスを嫁にしろ!」
さんざん、小言を言われた挙句、紗々を落とせなければ、勘当にする。とまで言われたのだ。
仕方なくではない。最初から紗々が欲しかったのに、言葉足らずで怒らせてしまったのだ。
こうなれば、あの時のおばあさんを見つけ出し、仲を取り持ってもらうしかない。あのおばあさんは、俺に対し、好意的だったことを思い出した。
手掛かりとなるのは、「サトウ」と言う名の元小学校校長だけである。
年のころは70歳ぐらいか?もう少し、上ぐらいだろうか?いわゆる団塊の世代かもしれない。
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