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日本全国の小学校の数は、約2万校足らず、そのうち、東京都内にある小学校の数は、1273もある。
あのおばあさんの年齢から、15年前にさかのぼり、過去5年分の卒業アルバムを取り寄せることに、手始めに管内の小学校から依頼状を送る。
都内だけでも、6365冊のアルバムを見なければならない計算になる。
おばあさんの顔を知っているのは、自分しかいないので、誰かほかの署員に手伝ってもらうこともできない。
あの繁華街で、他の署員も出動していたが、美人の紗々の顔しか覚えておらず、誰もおばあさんの顔など覚えていない。
砂漠の中で1本の針を探すようなもの。
マリンスポーツの場では、よく紗々を見かけることがあるが、紗々の周りには親衛隊が出来上がっていて、おいそれと近づくこともできない。
自分にとっては、あのおばあさんを見つけることができなければ、勘当もしくは、出世コースから外れてしまう。それほど切実な問題なのだ。
だからこそ、と思っていたが、最初の3校だけで、すぐ投げ出してしまう。これが事件捜査なら、人海戦術でできるものを、個人的なことでは、動員できない。
俺は考え、東京都の教育委員会に投げ、サトウ名の女性の校長経験がある教師を探し出してもらうことにする。
何名かがヒットしたので、その顔写真と現在の住まいをリストアップしてもらう。サクラという孫の存在までは、把握できなかったが、かなり近づいたと思う。
あとは、休日にでも、その人たちの家を回って、確認するだけとなった。
そこまでたどり着いてから、気になる人物の名前が突如、浮上する。佐倉桜、旧姓佐藤桜、学籍名簿を調べた時にもヒットしたが、もう佐藤桜はこの世に存在しない。
念のため、佐倉桜の戸籍を調べる。
佐倉桜の両親は、都内在住で官僚夫婦であることがわかる。驚いたのは、教育委員会からリストアップされた住所の中に、佐倉桜の両親の住所と同じところのものがあったということ。
このおばあさんが、あの時のおばあさんなのだろうか?だとしたら、なぜ紗々は、被害者の祖母とどこで出会ったのか?接点が見つからないと思っていたら、紗々の勤務部署は、佐倉桜の勤務部署であることがわかる。
紗々は、桜のお墓参りでもしたのだろうか?それとも、葬式の手伝いをして……そこでなら、祖母と知り合えることもできる。
でも、あの日出会った二人は、赤の他人と言うより、本当の祖母と孫と言った風であったのだ。あんな雰囲気、たとえ、あのおばあさんがボケていたとしても、出せるか?
答えは否。
調べを進めていくうちに、佐倉桜と榊紗々の類似点が気になり始める。
共に両親を官僚に持ち、帝国大学卒、誰からも親しまれる気立ての良さ。醜女と美女との違いは、あるものの勘働きだが、よく似ている。
それにあの繁華街での紗々の身のこなしも気になる。
運動神経の良さだけで、まるでSPのごとく素人娘が動けるのか?ということ。
紗々は、桜の生まれ変わりだと思えば、つじつまが合うが、生まれ変わりにしては、年が4歳しか違わないので、計算が合わない。
次の休日、佐藤さんのところへ電話で連絡してから、行くことにした。
玄関チャイムを押すと、あのおばあさんが困ったような顔をして、出てこられる。
話を聞いてみると、銀行協会から電話があり、「アナタの口座から無断で何者かが引き出しを行っています。これから、係の者がキャッシュカードを調べに行きますから、暗証番号を書いた封筒に入れ、渡してください。」というもの。
電話を切ったのは、俺が玄関チャイムを鳴らす直前のこと。
俺は、そのまま所轄署へ連絡し、特殊詐欺犯の一味は無事、逮捕されたのだが、銀行員を名乗る男は、まだ高校生ぐらいの子供だった。
「こんにちは。今日、来たのは、別件です。」
あのおばあさんの年齢から、15年前にさかのぼり、過去5年分の卒業アルバムを取り寄せることに、手始めに管内の小学校から依頼状を送る。
都内だけでも、6365冊のアルバムを見なければならない計算になる。
おばあさんの顔を知っているのは、自分しかいないので、誰かほかの署員に手伝ってもらうこともできない。
あの繁華街で、他の署員も出動していたが、美人の紗々の顔しか覚えておらず、誰もおばあさんの顔など覚えていない。
砂漠の中で1本の針を探すようなもの。
マリンスポーツの場では、よく紗々を見かけることがあるが、紗々の周りには親衛隊が出来上がっていて、おいそれと近づくこともできない。
自分にとっては、あのおばあさんを見つけることができなければ、勘当もしくは、出世コースから外れてしまう。それほど切実な問題なのだ。
だからこそ、と思っていたが、最初の3校だけで、すぐ投げ出してしまう。これが事件捜査なら、人海戦術でできるものを、個人的なことでは、動員できない。
俺は考え、東京都の教育委員会に投げ、サトウ名の女性の校長経験がある教師を探し出してもらうことにする。
何名かがヒットしたので、その顔写真と現在の住まいをリストアップしてもらう。サクラという孫の存在までは、把握できなかったが、かなり近づいたと思う。
あとは、休日にでも、その人たちの家を回って、確認するだけとなった。
そこまでたどり着いてから、気になる人物の名前が突如、浮上する。佐倉桜、旧姓佐藤桜、学籍名簿を調べた時にもヒットしたが、もう佐藤桜はこの世に存在しない。
念のため、佐倉桜の戸籍を調べる。
佐倉桜の両親は、都内在住で官僚夫婦であることがわかる。驚いたのは、教育委員会からリストアップされた住所の中に、佐倉桜の両親の住所と同じところのものがあったということ。
このおばあさんが、あの時のおばあさんなのだろうか?だとしたら、なぜ紗々は、被害者の祖母とどこで出会ったのか?接点が見つからないと思っていたら、紗々の勤務部署は、佐倉桜の勤務部署であることがわかる。
紗々は、桜のお墓参りでもしたのだろうか?それとも、葬式の手伝いをして……そこでなら、祖母と知り合えることもできる。
でも、あの日出会った二人は、赤の他人と言うより、本当の祖母と孫と言った風であったのだ。あんな雰囲気、たとえ、あのおばあさんがボケていたとしても、出せるか?
答えは否。
調べを進めていくうちに、佐倉桜と榊紗々の類似点が気になり始める。
共に両親を官僚に持ち、帝国大学卒、誰からも親しまれる気立ての良さ。醜女と美女との違いは、あるものの勘働きだが、よく似ている。
それにあの繁華街での紗々の身のこなしも気になる。
運動神経の良さだけで、まるでSPのごとく素人娘が動けるのか?ということ。
紗々は、桜の生まれ変わりだと思えば、つじつまが合うが、生まれ変わりにしては、年が4歳しか違わないので、計算が合わない。
次の休日、佐藤さんのところへ電話で連絡してから、行くことにした。
玄関チャイムを押すと、あのおばあさんが困ったような顔をして、出てこられる。
話を聞いてみると、銀行協会から電話があり、「アナタの口座から無断で何者かが引き出しを行っています。これから、係の者がキャッシュカードを調べに行きますから、暗証番号を書いた封筒に入れ、渡してください。」というもの。
電話を切ったのは、俺が玄関チャイムを鳴らす直前のこと。
俺は、そのまま所轄署へ連絡し、特殊詐欺犯の一味は無事、逮捕されたのだが、銀行員を名乗る男は、まだ高校生ぐらいの子供だった。
「こんにちは。今日、来たのは、別件です。」
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