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「この前の署長さんのおかげで、助かったよ。ありがとうね。」
「いえ、今日、伺ったのは、実はこの前のお嬢さんのことで。」
「桜ちゃんのことかい?」
「ええ。榊紗々さんのことで参りました。」
榊紗々の名前を出すと、おばあさんは急に悲しそうな顔をされ、みるみるうちに目に涙をいっぱい溜められたので、焦る。
「あの娘は、佐藤桜、私の自慢の孫だよ。そのさかきかなんか、知らない。そんな話なら、帰っておくれ。」
「あ、いや、お孫さんを亡くされたのに、ぶしつけなことを申しました。お許しください。実は、先日、紗々さんとお見合いをしまして。」
「ほぉ、それでどうだった?断られたか?」
「はい。木っ端みじんです。」
「だろうな。あの娘は一度、結婚に失敗しておるからのぉ。」
「え!? 紗々さん、離婚経験あるのですか?」
「アンタさっきから、何の話をしておるんじゃ?私が言っているのは、佐藤桜のことじゃよ?アンタも警察官なら、知っておるじゃろ?あの事件のことを?」
「霞が関の交差点で、夫の浮気相手で高校の同級生だった女に突き飛ばされて死亡した事件のことですよね?」
「桜は、あれで相当傷ついた。だから、桜を落とすには甘い言葉や優しい態度だけではダメ。人間不信に近いところまである。でもね、あの娘は神様から守られているところがある。アンタも見ただろう?あの日、暴漢に襲われたとき、掏摸に遭った時、あの娘には神様が憑いている。だから、あの娘の心を掴みたいのなら、神様に好かれることじゃな。」
「はぁ……。具体的には?」
「そんなこと、自分で考えなさいよ。アンタも帝大卒のエリートさんなんだから。」
神様に好かれるとは、どうすればいいのだ?今まで、信心のひとつもしたことがない。
おばあさんを前にしながらも、うんうんと考える。その姿を見て、おばあさんは、やれやれと言った風に、
「仕方ないね。私が一度だけチャンスをやるよ。今は、マリンスポーツに夢中になっているが、桜ちゃんはもともと山ガールなんだ。だからキャンプかハイキング、スキーに誘ってごらんよ。夜空を見上げながら、愛を囁くんだ。一世一代のチャンスだと思って、心してやりなさい!」
「ありがとうございます。頑張ります。」
でも、ここでひとつ問題点がある。紗々さんに近寄れないのだ。榊の親父さんは、紗々さんが縁談を断りたいとの申し出にホイホイ乗ってきたので、家に行っても会わせてくれない。
そのことをおばあさんに相談してみると、
「どこまで世話が焼けるんだ。ったく!」
どこか、嬉しそう。
やっぱり、おばあさんを頼って正解だったかもしれない。
そして、次の休日、紗々さんを誘い出してくれることを約束してくれる。非番にならなくても、有給休暇を使うつもり。
今度こそは、何としてもLIMEの連絡先を交換したいところ、それがダメでも山へ誘いたい。
おばあさんには、美味しいランチを御馳走することを約束し、軽い足取りで帰路に着く。
署内の若い女性に、おすすめの美味しいランチが食べられる店を片っ端から聞いて回る。
「署長がごちそうしてくださるのなら。」という条件付きで、リサーチをする。あとは、タベブログで評判がいいかどうかなどを参考にする。
最終的には、サラダ・パン・パスタ・ケーキセット込みで1500円のお手頃ランチのイタリアンを予約したのだ。
「グレーハウンド」という犬みたいな名前のお店に、「サトウ」の名前で予約を入れる。
前日に、女性署員何人かを引き連れて下見がてら食べに行く。半年前にopenしたばかりのお店。
白を基調とした明るい店内、聞けば、個室もあるらしいので、そこを予約することに。
女性署員の評価もなかなか高く。手ごたえを感じる。これなら、紗々さんも気に入ってくれるかもしれない。
「いえ、今日、伺ったのは、実はこの前のお嬢さんのことで。」
「桜ちゃんのことかい?」
「ええ。榊紗々さんのことで参りました。」
榊紗々の名前を出すと、おばあさんは急に悲しそうな顔をされ、みるみるうちに目に涙をいっぱい溜められたので、焦る。
「あの娘は、佐藤桜、私の自慢の孫だよ。そのさかきかなんか、知らない。そんな話なら、帰っておくれ。」
「あ、いや、お孫さんを亡くされたのに、ぶしつけなことを申しました。お許しください。実は、先日、紗々さんとお見合いをしまして。」
「ほぉ、それでどうだった?断られたか?」
「はい。木っ端みじんです。」
「だろうな。あの娘は一度、結婚に失敗しておるからのぉ。」
「え!? 紗々さん、離婚経験あるのですか?」
「アンタさっきから、何の話をしておるんじゃ?私が言っているのは、佐藤桜のことじゃよ?アンタも警察官なら、知っておるじゃろ?あの事件のことを?」
「霞が関の交差点で、夫の浮気相手で高校の同級生だった女に突き飛ばされて死亡した事件のことですよね?」
「桜は、あれで相当傷ついた。だから、桜を落とすには甘い言葉や優しい態度だけではダメ。人間不信に近いところまである。でもね、あの娘は神様から守られているところがある。アンタも見ただろう?あの日、暴漢に襲われたとき、掏摸に遭った時、あの娘には神様が憑いている。だから、あの娘の心を掴みたいのなら、神様に好かれることじゃな。」
「はぁ……。具体的には?」
「そんなこと、自分で考えなさいよ。アンタも帝大卒のエリートさんなんだから。」
神様に好かれるとは、どうすればいいのだ?今まで、信心のひとつもしたことがない。
おばあさんを前にしながらも、うんうんと考える。その姿を見て、おばあさんは、やれやれと言った風に、
「仕方ないね。私が一度だけチャンスをやるよ。今は、マリンスポーツに夢中になっているが、桜ちゃんはもともと山ガールなんだ。だからキャンプかハイキング、スキーに誘ってごらんよ。夜空を見上げながら、愛を囁くんだ。一世一代のチャンスだと思って、心してやりなさい!」
「ありがとうございます。頑張ります。」
でも、ここでひとつ問題点がある。紗々さんに近寄れないのだ。榊の親父さんは、紗々さんが縁談を断りたいとの申し出にホイホイ乗ってきたので、家に行っても会わせてくれない。
そのことをおばあさんに相談してみると、
「どこまで世話が焼けるんだ。ったく!」
どこか、嬉しそう。
やっぱり、おばあさんを頼って正解だったかもしれない。
そして、次の休日、紗々さんを誘い出してくれることを約束してくれる。非番にならなくても、有給休暇を使うつもり。
今度こそは、何としてもLIMEの連絡先を交換したいところ、それがダメでも山へ誘いたい。
おばあさんには、美味しいランチを御馳走することを約束し、軽い足取りで帰路に着く。
署内の若い女性に、おすすめの美味しいランチが食べられる店を片っ端から聞いて回る。
「署長がごちそうしてくださるのなら。」という条件付きで、リサーチをする。あとは、タベブログで評判がいいかどうかなどを参考にする。
最終的には、サラダ・パン・パスタ・ケーキセット込みで1500円のお手頃ランチのイタリアンを予約したのだ。
「グレーハウンド」という犬みたいな名前のお店に、「サトウ」の名前で予約を入れる。
前日に、女性署員何人かを引き連れて下見がてら食べに行く。半年前にopenしたばかりのお店。
白を基調とした明るい店内、聞けば、個室もあるらしいので、そこを予約することに。
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