ブスを粗末にするな!~顔だけ美人のイジメ主犯格に旦那を寝取られ、復讐に燃える元妻

青の雀

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 「もっと博さんのこと、知りたいです。」

 「あ!私も紗々さんのことを知りたいです。」

 食事が始まってから、お店の人が個室へ来て

 「本日は、初デートおめでとうございます。店主からのサービスでございます。」

 グラスワインがもらえたので、それで乾杯をする。

 初デートだなんて、きっと佐藤のおばあさんが頼んでくれたのだろう。二人は、その心遣いをありがたく頂戴することにした。

 小田原博は剣道五段の腕前で、中学までは、登山の経験があったらしく、

 「昔は、よく山へ行ったものです。雲海、ご来光を拝みにまた行きたいと思っていますが、紗々さんも、ご一緒にどうですか?」

 「はい。私とぜひ、ご一緒していただきたいです。ただ、装備がなくて、一からそろえなければなりません。」

 「佐藤のおばあさんから借りられないのですか?」

 「どうでしょうか?佐藤さんの家にある装備は、古いものばかりだし。」

 「だったら、これから買いに行きませんか?靴とザック、コッフェルとケトルは必需品です。あと、地図とコンパスも。テントは重いから、自分が買います。」

 「詳しいですね!」

 ただ、紗々の気を惹きたいだけでなく、小田原博は本物だと思う。

 ここまで、山のことを詳しい人も珍しい。本当にただ気を惹きたいだけの男性ではないのだ。

 結婚の条件に、もうひとつ加えるとしたら価値観、その価値観に十分影響するものは、趣味が同じであるということ。その面から見ても、小田原博こそ、ふさわしい人物はいないと感じる。

 食事の後、一緒に山岳ショップでお買い物をする。

 前世以来の登山靴購入、専用の靴下、着替え、ニッカズボン、ザックなどを一緒に選んでくれる。

 博さんが、テントを見ている間に、調理器具のブスコンロ、ケトル、コッフェルを見る。寝袋もいるわ。テントは、山小屋を利用すれば、持っていく必要がない。でも、山小屋の予約がいっぱいならば、持っていく必要もある。

 裕介とは、初めてエッチしたのが山で、いきなり覆いかぶさってこられた時は、ビックリした。

 博さんは、山でするつもりか?下着をそれ用のものを用意しといたほうがいいだろうか?

 ガツガツしている淫乱女だとは、思われないか、と心配する。

 博さんは、1人用テントを2つ買うつもりらしい。やっぱり、紳士だわ。

 「あのね。博さん、シュラフを見たいんだけど、相談に乗ってくれない?」

 「ああ、いいよ。今、行く。」

 シュラフの売り場へ行き、下に敷くマットも買う。

 「一度にたくさん買うと持ち帰りが重くなるから、今日の買い物はこれで終わり、今度は行く直前に買おうよ。」

 なんという心づかいができる人かと、感心し、ますます好意を寄せる。

 買った荷物のすべてを博さんが持ってくれ、家まで送ってくれる。

 だから、紗々は手ぶらで、帰宅できたのだが、帰宅時に父と居合わせてしまう。

 断った縁談相手の博さんを怪訝な眼で見る父。

 「小田原さん、これは一体どういうことなのでしょうか?ウチの娘と今後一切、近寄らないでもらいたい。このことは、小田原さんのお父上にも抗議しておきます。」

 「あ!違うの。お父さん、待って。」

 「ご挨拶が遅れて、申し訳ありません。お嬢さんともう一度、結婚を前提としたお付き合いをしたいと考えております。責任は取ります。ですから、今度お嬢さんと一緒に、山登りへ行く許可を頂きたいのです。」

 「私も、博さんと付き合いたいの。お願い、お父さん許して。」

 「へ?……、わかった。紗々がそう言うのなら、娘をよろしく頼む。ただし、一線は超えないでくれよ。」

 「はい。心得ております。」

 って、中学生かよ?内心思うが、なんとなく、紗々もガッカリした表情。

 要するに、最後の一線さえ、越えなければいいという話だと納得する。
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