みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について

青の雀

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 ゴールデニアが領地に戻ってからというものグレジオラでは、一度も雨や雪が降らず好天が続きますが、決して干ばつというわけではない。

 王家では、女神様の怒りをおさめるため騎士団が編成され、グレジオラ領地へ派遣されますが、誰一人、グレジオラへたどり着くことができない。皆、何かしら敵意を抱いて、グレジオラへ向かうからである。敵対心のあるものは、女神の怒りではじき返され、氷像と化すのがオチである。王都を出た途端に、騎士団の氷像が至る所にあるのは、そのせいである。

 王都周辺の民衆は、グレジオラを目指していくものの、途中の悪天候のため足止めを余儀なくされる。また、敵対心を持つものは、女神の怒りですべて氷像になる。真に女神を信じる敬虔な信者のみがグレジオラへたどり着けるのである。

 グレジオラの妻、公爵夫人は、ゴールデニアの看病の甲斐があり、以前よりまして元気に丈夫に、よくしゃべる明るい母さんとなっていたのである。

 これに気を良くしたゴールデニアは、普段は、普通の聖女としての公爵令嬢の姿でいて、何か事が起これば、女神様の姿になり羽を生やして相手を威嚇することにしたのである。

 だって、背中に羽を生やした姿では、うつぶせ寝しかできないもの。たまには、大の字になってゆっくり寝たい!というのが本音である。それに、女神姿では、ごろ寝もできやしない。

 ゴールデニアは、領地でのことが一段落してから、再びいったん王都に戻る決心をする。なぜなら、王都に残してきた公爵邸の使用人が心配だから、あの時はアタマにきて、突発的に王都を氷の都にしてしまったけれど、よくよく考えると公爵邸の使用人たちを残してきたので、おそらくいろいろと不都合や不便があるだろう。それに向かい側のサルバカラ公爵邸をリリアーヌとともに、氷の館にしてしまったのであるから、おそらく騒ぎになっているかもしれない。

 サルバカラ公爵邸では、一瞬にして氷の館となってしまったので、近隣の貴族屋敷からお湯をもらって屋敷に掛けたところ、ただの水になってしまって、屋敷は跡形もなく消えてしまったらしい。

 そうよ、氷なんだもの。お湯なんて掛けたら水になるだけですわ。人間も同じですわよ。間違っても、お湯をかけてしまったら、二度と人間の姿に戻れない。

 まぁ、人間の氷像は、元に戻そうとすれば戻せないことはないけれど、普通の人間なら到底思いつけない方法だから、一生頑張ってみたら?としか言いようがない。

 簡単な方法なんだけどね。それは、その人のことを心底愛している人間が、氷像と化した人に抱きついて、自分の体温でその人の氷を溶かすと、人間に戻れる。ただ、氷となっていた時の記憶がないだけ。

 誰も自分の身体が冷え切るかもしれないリスクを負う人間はいないから、一生かかったってできないということは、そういうことです。

 でも、この方法ができるのは、人間や動物などの生き物だけで、建物などは、お湯をかけたら、水に戻るだけ、建物はすべて水に戻して、一から建て直すしか方法がない。

 別にゴールデニアは、ブルータスと結婚したかったわけではない。むしろ婚約破棄してくれて、ありがとうという立場だったのだけれど、養母の体調を悪化させてしまったことが許せなくて凍らせただけだもの。

 養母は、真に女神を崇拝する敬虔な信者であったから、養母の娘として生まれたかったのである。だが、ひとつ年上の兄レオナルドが殊の外、難産で生まれてきて、その後の産後の肥立ちが悪かったため、二度と子供が授からない身体になってしまったから、捨て子に身をやつして、門前にいたのである。

 それをリリアーヌとブルータスは面白おかしく吹聴したことが許せない!女神が人間の子として、養母から生まれてくることができなかったんだから、捨て子になるしかないじゃん!

 そのことが原因で、養母を傷つけ、病状を悪化させてしまったから、はずみで王国全体を氷の国にしてしまったのよ。

 あの時の勝ち誇った顔をしたリリアーヌとブルータスは一生忘れないし、絶対、許さない!

 だから、リリアーヌの両親は捨て身をしてでも、リリアーヌに抱きついて自分の体温で溶かすべきなのに、その程度の愛情でしか育てていないから、あんな子に育ってしまったのだろう。

 リリアーヌは、ブルータスを狙っていたのであろうか?それならば、熨斗つけてくれてやるのに。

 だから、父が言う通り同い年の令嬢を婚約者にすればいいものを。これは、ブルータスにも責任があるというものだから、凍らされても文句は言えないよね。

 ということで、王都の公爵邸に転移したわけである。使用人一同を集め、なぜこうなったかのいきさつを話すと

 「お嬢様は悪くなんて、ございません。」

 口々にゴールデニアを擁護してくれる意見ばかりで嬉しい。

 それで、公爵邸もろとも領地へ移転するが、希望者は家族や今、住んでいる家も持っていけることを話したら、全員が全員、領地行きに希望、賛同してくれる。

 女神様の力を遣い、使用人がイメージする自分の住居に使用人とともに転移する。そして家人に、理由を話し承諾を得ると、その使用人、住居、家人もろとも領地へ転移させる。

 何十回とそれを繰り返し、全員を領地に送り込むと、最後は、公爵邸もろともというべきか?公爵邸の敷地ごと領地へ転移させて完了です。

 王都にあった公爵邸が建っていた場所は、巨大な底なしの穴ができていて、誰一人として近寄れなくなったのである。

 領地までのインフラは、女神の怒りで凍り付いている。
 ゴールデニアは、ひとっとびで転移魔法を使い、領地へ戻ったから、そんなことは知らない。女神様だから、王族ではないので国がどうなろうと知ったこっちゃない。

 グレジオラ公爵もゴールデニアも、いつまでもこの国にいるつもりはない。兄レオナルドの留学先にでも行こうか?という話し合いがもたれることになったのである。

 グレジオラ公爵は、一人息子のレオナルドに留学先が聖女様を受け入れてもらえるかどうか、訪ねることにしたのだ。あえて、女神様という言葉は遣わない。なぜなら、レオナルドは、ゴールデニアが聖女であることは知っているが、女神の化身であったことは知らないから。

 そういえば、と父は思い出したことがあったのだ。
 ゴールデニアが8歳、聖女認定を受けた時のレオナルド9歳の落ち込みぶりと言ったら、おかしかった。

 レオナルドは、もしも聖女様でなく普通の娘であったならば

 「将来は僕のお嫁さんにしたい。」

 それが、聖女だとわかり、さらに4年後、第1王子との縁談まで出てきて、失恋が決定的になった時、泣く泣く留学を決めたのであるから。

 今、女神様の化身であったことを告げれば、いったいどういう顔をするのだろうか?さらに落ち込むか、それとも目が高いと言って喜ぶかは、わからない。
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