みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について

青の雀

文字の大きさ
2 / 13

2

しおりを挟む
 ゴールデニアが領地に戻ってからというものグレジオラでは、一度も雨や雪が降らず好天が続きますが、決して干ばつというわけではない。

 王家では、女神様の怒りをおさめるため騎士団が編成され、グレジオラ領地へ派遣されますが、誰一人、グレジオラへたどり着くことができない。皆、何かしら敵意を抱いて、グレジオラへ向かうからである。敵対心のあるものは、女神の怒りではじき返され、氷像と化すのがオチである。王都を出た途端に、騎士団の氷像が至る所にあるのは、そのせいである。

 王都周辺の民衆は、グレジオラを目指していくものの、途中の悪天候のため足止めを余儀なくされる。また、敵対心を持つものは、女神の怒りですべて氷像になる。真に女神を信じる敬虔な信者のみがグレジオラへたどり着けるのである。

 グレジオラの妻、公爵夫人は、ゴールデニアの看病の甲斐があり、以前よりまして元気に丈夫に、よくしゃべる明るい母さんとなっていたのである。

 これに気を良くしたゴールデニアは、普段は、普通の聖女としての公爵令嬢の姿でいて、何か事が起これば、女神様の姿になり羽を生やして相手を威嚇することにしたのである。

 だって、背中に羽を生やした姿では、うつぶせ寝しかできないもの。たまには、大の字になってゆっくり寝たい!というのが本音である。それに、女神姿では、ごろ寝もできやしない。

 ゴールデニアは、領地でのことが一段落してから、再びいったん王都に戻る決心をする。なぜなら、王都に残してきた公爵邸の使用人が心配だから、あの時はアタマにきて、突発的に王都を氷の都にしてしまったけれど、よくよく考えると公爵邸の使用人たちを残してきたので、おそらくいろいろと不都合や不便があるだろう。それに向かい側のサルバカラ公爵邸をリリアーヌとともに、氷の館にしてしまったのであるから、おそらく騒ぎになっているかもしれない。

 サルバカラ公爵邸では、一瞬にして氷の館となってしまったので、近隣の貴族屋敷からお湯をもらって屋敷に掛けたところ、ただの水になってしまって、屋敷は跡形もなく消えてしまったらしい。

 そうよ、氷なんだもの。お湯なんて掛けたら水になるだけですわ。人間も同じですわよ。間違っても、お湯をかけてしまったら、二度と人間の姿に戻れない。

 まぁ、人間の氷像は、元に戻そうとすれば戻せないことはないけれど、普通の人間なら到底思いつけない方法だから、一生頑張ってみたら?としか言いようがない。

 簡単な方法なんだけどね。それは、その人のことを心底愛している人間が、氷像と化した人に抱きついて、自分の体温でその人の氷を溶かすと、人間に戻れる。ただ、氷となっていた時の記憶がないだけ。

 誰も自分の身体が冷え切るかもしれないリスクを負う人間はいないから、一生かかったってできないということは、そういうことです。

 でも、この方法ができるのは、人間や動物などの生き物だけで、建物などは、お湯をかけたら、水に戻るだけ、建物はすべて水に戻して、一から建て直すしか方法がない。

 別にゴールデニアは、ブルータスと結婚したかったわけではない。むしろ婚約破棄してくれて、ありがとうという立場だったのだけれど、養母の体調を悪化させてしまったことが許せなくて凍らせただけだもの。

 養母は、真に女神を崇拝する敬虔な信者であったから、養母の娘として生まれたかったのである。だが、ひとつ年上の兄レオナルドが殊の外、難産で生まれてきて、その後の産後の肥立ちが悪かったため、二度と子供が授からない身体になってしまったから、捨て子に身をやつして、門前にいたのである。

 それをリリアーヌとブルータスは面白おかしく吹聴したことが許せない!女神が人間の子として、養母から生まれてくることができなかったんだから、捨て子になるしかないじゃん!

 そのことが原因で、養母を傷つけ、病状を悪化させてしまったから、はずみで王国全体を氷の国にしてしまったのよ。

 あの時の勝ち誇った顔をしたリリアーヌとブルータスは一生忘れないし、絶対、許さない!

 だから、リリアーヌの両親は捨て身をしてでも、リリアーヌに抱きついて自分の体温で溶かすべきなのに、その程度の愛情でしか育てていないから、あんな子に育ってしまったのだろう。

 リリアーヌは、ブルータスを狙っていたのであろうか?それならば、熨斗つけてくれてやるのに。

 だから、父が言う通り同い年の令嬢を婚約者にすればいいものを。これは、ブルータスにも責任があるというものだから、凍らされても文句は言えないよね。

 ということで、王都の公爵邸に転移したわけである。使用人一同を集め、なぜこうなったかのいきさつを話すと

 「お嬢様は悪くなんて、ございません。」

 口々にゴールデニアを擁護してくれる意見ばかりで嬉しい。

 それで、公爵邸もろとも領地へ移転するが、希望者は家族や今、住んでいる家も持っていけることを話したら、全員が全員、領地行きに希望、賛同してくれる。

 女神様の力を遣い、使用人がイメージする自分の住居に使用人とともに転移する。そして家人に、理由を話し承諾を得ると、その使用人、住居、家人もろとも領地へ転移させる。

 何十回とそれを繰り返し、全員を領地に送り込むと、最後は、公爵邸もろともというべきか?公爵邸の敷地ごと領地へ転移させて完了です。

 王都にあった公爵邸が建っていた場所は、巨大な底なしの穴ができていて、誰一人として近寄れなくなったのである。

 領地までのインフラは、女神の怒りで凍り付いている。
 ゴールデニアは、ひとっとびで転移魔法を使い、領地へ戻ったから、そんなことは知らない。女神様だから、王族ではないので国がどうなろうと知ったこっちゃない。

 グレジオラ公爵もゴールデニアも、いつまでもこの国にいるつもりはない。兄レオナルドの留学先にでも行こうか?という話し合いがもたれることになったのである。

 グレジオラ公爵は、一人息子のレオナルドに留学先が聖女様を受け入れてもらえるかどうか、訪ねることにしたのだ。あえて、女神様という言葉は遣わない。なぜなら、レオナルドは、ゴールデニアが聖女であることは知っているが、女神の化身であったことは知らないから。

 そういえば、と父は思い出したことがあったのだ。
 ゴールデニアが8歳、聖女認定を受けた時のレオナルド9歳の落ち込みぶりと言ったら、おかしかった。

 レオナルドは、もしも聖女様でなく普通の娘であったならば

 「将来は僕のお嫁さんにしたい。」

 それが、聖女だとわかり、さらに4年後、第1王子との縁談まで出てきて、失恋が決定的になった時、泣く泣く留学を決めたのであるから。

 今、女神様の化身であったことを告げれば、いったいどういう顔をするのだろうか?さらに落ち込むか、それとも目が高いと言って喜ぶかは、わからない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

【完結】恵まれ転生ヒロインと思いきや、好色王に嫁がされることに。嫌すぎて足を踏みつけてやったら、反乱を起こした王太子になぜか求婚されました。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 結婚式直前に婚約者にお金を持ち逃げされ、失意のうちに巻き込まれ事故で異世界転生をする。  異世界で今までにない優しさや温かさ、贅沢なものに囲まれ第二王女として何不自由ない生活を送ってきた。  しかし自国が戦争に負け、相手国の60過ぎの王へ貢物として第13番目の王妃として嫁ぐことが決められてしまう。  そしてその王からの注文で、持ち物は小さな衣装ケース一つ、見送りも、侍女も護衛騎士も付けてもらえず馬車で嫁ぎ先へ。  サレ女の次は好色王の貢物?  冗談じゃない。絶対に嫌! そんなのの花嫁になるくらいなら、もう一度転生したいとばかりに、好色王と対峙する。  その時兵を連れた王太子が現れて――

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。

ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。 辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。 ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。 その後、王都から助けを求める使者が現れる。 追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。 エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。 全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。 ◇ 命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。 ◇ ※他サイトにも投稿しております。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...