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神の国から帰る途中、ゴールデニアは世界のあちこちを子供たちに見せることにしたのである。グレジオラにいると、結界に守られているので、安全であると知らしめるためにである。
もちろん、アマテラスも一緒である。孫と一緒にいたいという気持ちと何かあれば、少しは役に立つということで。
まずは、生まれ故郷の今はもうたぶんないであろう祖国を見せることにしたのである。かつて反映した祖国は、見事に焼野原というか、溶岩が真っ黒なゴロゴロしていた土地になっている。王城の残骸も黒く焼け焦げている。
この地で両親は出会って、愛し合って結婚したのよ。あなたたちも誰か、好きな相手を見つけてよ。という願いを込めて、やってきたのだ。
次に向かったのは、フルダイヴ国側ではない反対側の隣国、ここへはゴールデニアも一度も足を運んだことがない。
こちらのほうへ逃れたら、また違う人生があったかもしれない。あの時は、レオナルド様の留学先がフルダイヴ国であったから、あちらを頼ったのだが。
あの時は、すでに女神と正体を明かした後だったから、別にどこへ行っても怖くはなかったのだが、なんとなく、レオナルド様のことが好きだったのよね。ただ、男前というだけではなく、運命の赤い糸を感じたのよね。
隣国に着いたら、まぁ一応、グレジオラ国の王太子妃とその王子、王女一行なので、隣国の国王陛下のところへあいさつに行くことにしたのである。
隣国は、ハーヴェスト王国というところで、市井の民たちは、陽気で朗らか、世話好きな、まるで大阪のおばちゃんを絵に描いたような国民性をしていたのだ。
こちらに移り住めば、さぞかし毎日が楽しかったであろうと思わせるような雰囲気があったのだ。
国王陛下も大阪人かと思わせるような吉本芸人さながらの面白い話をたくさんしてくださり、笑わせてくださいます。
「冗談は、さておき、実は女神様に頼みごとがあってな。女神様の結婚式に参列していなかったので、祝福を受けておらぬ。どうか、我にも祝福を授けてもらえるように頼んではもらえぬか?」
「なぜでございますか?失礼ながら、国王陛下におかれましては、見るからに頑強そうに見えますが?城内に不穏の動きでも?」
「いやいやそういうことではない。実は、海が荒れて、漁師たちが漁に出たがらないのでな。」
はっはーん。ポセイドンは、女神の結界のないところで、また悪さをしているのか?
泳ぎがうまく泳げなくて、女遊びもほどほどにしていると聞いたが、あれは、嘘であったのか!?
「わかりました。そういうことでしたら、貴国の領海に結界を張って差し上げます。すれば、ポセイドンといえども、近づけなくなるでしょう。」
「それはありがたい!女神様の結界なら安心できる。今後とも我が国ハーヴェストとグレジオラ王国の友好のためにも、ぜひともお願いしたいところであります。」
そのやりとりに気をよくしたアマテラスは、特別にハーヴェスト国王に祝福を与えた。女神とともにいた初老の男性が、全知全能の創造神だとは思っていなかったらしく、ひたすら平伏したのであった。
アマテラスはあくまでも女神のオブザーバーとしての立ち位置だったのである。王子たちが、「ジージ」と呼んでいるのだから、気づきそうなもの?なのに。名前だと思ったのかしらね。
ゴールデニアは、ついでだからと、海と空に療法、結界を張ることにしたのだ。母の仇の龍神がまた人間界に悪さしかねないから。飛竜の親玉はやっつけたけど、ああいう輩は湧いてくるから、油断は禁物である。
ハーヴェスト国を後にした女神一行は、その隣国にも立ち寄ることにしたのである。
ハーヴェスト国の隣国は、マウントレー国と言い、盆地であるが、落ち着いたたたずまいで、まさに古都の雰囲気がある。
マウントレー国も領空と領海の結界を張ることにしたのである。そしてアマテラスの祝福も一様に与えることになったのだが、こうなればありがたみがなくなる、と思いつつも望まれると許してしまうお人よし父娘なのである。
結局世界各国を回り、領空と領海の結界を張り巡らしたのである。子供たちに世界を見せるたびがとんだ結界針の旅へと変わってしまったのだ。神様の言うものは人々の安寧を願うものだから、望まれれば仕方がない。
これが普通の聖女であれば、望まれても自国の有利になること以外は、動かなくてもよい。聖女は人間だから、そういうものなのである。
半神の子供たちは、つくづくと人間として生きようと心に誓うのである。不老不死は嬉しいかもしれないが、何か争いごとがあると解決のため、いちいち尽力しなくてならないのは、正直めんどくさい。人間としての生涯を全うし、伴侶が死亡したのち、神界へ戻るか?はたまた、また新しい伴侶を得るか決めればよいのだから。
人間として生きれば、自分の幸せだけを考えればいいのだから。これが母の言う神界は自由がないということなのだとあらためて思うのである。
グレジオラへ戻ってきたのは、里帰りしてから3週間後のことであったのだ。
戻ってきてからというもの、スサノオをはじめとする年頃の王子やヒミコたち王女は、一様に縁談探しに夢中になったのは言うまでもないことである。
レオナルド様は首をかしげるが、ゴールデニアは
「里帰りのついでに、世界各国めぐりをしてきたから、少しは大人になれたのでしょう。真に愛する人が見つかればいいのだけど、お見合いから恋愛に発展するケースは、よくあること。出会いの一環として、お見合いを位置づけたのかもしれないわね。」
「まぁ、見聞を広めたことはいいことだな。」
もちろん、アマテラスも一緒である。孫と一緒にいたいという気持ちと何かあれば、少しは役に立つということで。
まずは、生まれ故郷の今はもうたぶんないであろう祖国を見せることにしたのである。かつて反映した祖国は、見事に焼野原というか、溶岩が真っ黒なゴロゴロしていた土地になっている。王城の残骸も黒く焼け焦げている。
この地で両親は出会って、愛し合って結婚したのよ。あなたたちも誰か、好きな相手を見つけてよ。という願いを込めて、やってきたのだ。
次に向かったのは、フルダイヴ国側ではない反対側の隣国、ここへはゴールデニアも一度も足を運んだことがない。
こちらのほうへ逃れたら、また違う人生があったかもしれない。あの時は、レオナルド様の留学先がフルダイヴ国であったから、あちらを頼ったのだが。
あの時は、すでに女神と正体を明かした後だったから、別にどこへ行っても怖くはなかったのだが、なんとなく、レオナルド様のことが好きだったのよね。ただ、男前というだけではなく、運命の赤い糸を感じたのよね。
隣国に着いたら、まぁ一応、グレジオラ国の王太子妃とその王子、王女一行なので、隣国の国王陛下のところへあいさつに行くことにしたのである。
隣国は、ハーヴェスト王国というところで、市井の民たちは、陽気で朗らか、世話好きな、まるで大阪のおばちゃんを絵に描いたような国民性をしていたのだ。
こちらに移り住めば、さぞかし毎日が楽しかったであろうと思わせるような雰囲気があったのだ。
国王陛下も大阪人かと思わせるような吉本芸人さながらの面白い話をたくさんしてくださり、笑わせてくださいます。
「冗談は、さておき、実は女神様に頼みごとがあってな。女神様の結婚式に参列していなかったので、祝福を受けておらぬ。どうか、我にも祝福を授けてもらえるように頼んではもらえぬか?」
「なぜでございますか?失礼ながら、国王陛下におかれましては、見るからに頑強そうに見えますが?城内に不穏の動きでも?」
「いやいやそういうことではない。実は、海が荒れて、漁師たちが漁に出たがらないのでな。」
はっはーん。ポセイドンは、女神の結界のないところで、また悪さをしているのか?
泳ぎがうまく泳げなくて、女遊びもほどほどにしていると聞いたが、あれは、嘘であったのか!?
「わかりました。そういうことでしたら、貴国の領海に結界を張って差し上げます。すれば、ポセイドンといえども、近づけなくなるでしょう。」
「それはありがたい!女神様の結界なら安心できる。今後とも我が国ハーヴェストとグレジオラ王国の友好のためにも、ぜひともお願いしたいところであります。」
そのやりとりに気をよくしたアマテラスは、特別にハーヴェスト国王に祝福を与えた。女神とともにいた初老の男性が、全知全能の創造神だとは思っていなかったらしく、ひたすら平伏したのであった。
アマテラスはあくまでも女神のオブザーバーとしての立ち位置だったのである。王子たちが、「ジージ」と呼んでいるのだから、気づきそうなもの?なのに。名前だと思ったのかしらね。
ゴールデニアは、ついでだからと、海と空に療法、結界を張ることにしたのだ。母の仇の龍神がまた人間界に悪さしかねないから。飛竜の親玉はやっつけたけど、ああいう輩は湧いてくるから、油断は禁物である。
ハーヴェスト国を後にした女神一行は、その隣国にも立ち寄ることにしたのである。
ハーヴェスト国の隣国は、マウントレー国と言い、盆地であるが、落ち着いたたたずまいで、まさに古都の雰囲気がある。
マウントレー国も領空と領海の結界を張ることにしたのである。そしてアマテラスの祝福も一様に与えることになったのだが、こうなればありがたみがなくなる、と思いつつも望まれると許してしまうお人よし父娘なのである。
結局世界各国を回り、領空と領海の結界を張り巡らしたのである。子供たちに世界を見せるたびがとんだ結界針の旅へと変わってしまったのだ。神様の言うものは人々の安寧を願うものだから、望まれれば仕方がない。
これが普通の聖女であれば、望まれても自国の有利になること以外は、動かなくてもよい。聖女は人間だから、そういうものなのである。
半神の子供たちは、つくづくと人間として生きようと心に誓うのである。不老不死は嬉しいかもしれないが、何か争いごとがあると解決のため、いちいち尽力しなくてならないのは、正直めんどくさい。人間としての生涯を全うし、伴侶が死亡したのち、神界へ戻るか?はたまた、また新しい伴侶を得るか決めればよいのだから。
人間として生きれば、自分の幸せだけを考えればいいのだから。これが母の言う神界は自由がないということなのだとあらためて思うのである。
グレジオラへ戻ってきたのは、里帰りしてから3週間後のことであったのだ。
戻ってきてからというもの、スサノオをはじめとする年頃の王子やヒミコたち王女は、一様に縁談探しに夢中になったのは言うまでもないことである。
レオナルド様は首をかしげるが、ゴールデニアは
「里帰りのついでに、世界各国めぐりをしてきたから、少しは大人になれたのでしょう。真に愛する人が見つかればいいのだけど、お見合いから恋愛に発展するケースは、よくあること。出会いの一環として、お見合いを位置づけたのかもしれないわね。」
「まぁ、見聞を広めたことはいいことだな。」
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