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現世:カフェレストラン
19.同情
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アイリーンの店の仕入れは、たいていのモノがユリアの商会から仕入れられるけど、どうしてもないものは、タワマンの冷蔵庫の前で唸ると不思議と数時間後には、そのものが入っている。例えばオリーブオイル、カレー粉、柚子ごしょうなどの調味料系がそのほとんどである。
だから欲しいものを考えてから、メニューを作るようにしている。先にメニューを考えると失敗してしまったことがあって、それからは冷蔵庫の中身と相談しながらメニューを作るようにしている。
ランチが終わり、カフェメニューは、ケーキを作り置きしているだけで、特に厨房に籠りきりというわけではないので、お買い物に行ったり、夜ご飯のメニュー開発をしたりしている。
その日もアイスクリームをバニラ以外の味でも作ろうかどうしようか、悩んでいると珍しく暗い顔をしたサファイアが入ってくる。
「どうしたの?」
「今、店に意地悪女が来ている。オーナーに会いたいって言っているけど、どうする?」
「えっ!?誰のこと?」
「今、店に来ている……、ほら、あの緑色の……」
厨房の料理を出し入れする窓から店内を見回す……、
「ひょっとして!?エレモアのこと?」
「そうだよ、偉そうにユリアを呼び捨てにしやがって。あの分だと、エストロゲン家を追い出されたに違いない!」
「今更、何の用かしら?」
「どうせ、行く当てもないから、ここで働かせてくれと言うに決まっているだろ?俺は反対だからな。せっかく、あの女の顔を見るのが嫌で、ここまで来たというのに、今更またあの女の意地悪そうな顔を見るのも嫌だ」
サファイアは、エレモアに飼い葉の代わりに泥を食べさせられた経験があり、ものすごく嫌そうな顔をしている。
「うーん。それで、営業時間が終わってから、また来いと言っておいた」
「なーに?その怪しげな対応は?そんなにキライだったら、追い返せばいいものを」
「オーナーの成功を見せつけてやりたいという気もあって……」
なるほどね。でもエレモアの前で、ステファニーだと暴露する気はない。
「わかったわ。夜ご飯前に集合しましょう。それでみんなの意見を聞きたいわ。他の子たちにもそう伝えてくれる?」
「了解しました」
納得はしていないけど、なんだかんだ言って、見捨てる気はなさそうなサファイアの後姿を見送る。
エレモアがどういう事情を抱えているのか、わからないから話だけでも聞いてみようかしら。
その考えは夜の部が始まる前に全員から却下されてしまう。
「アイリーン様、そのお考えは甘いです。あのエレモアですわよ?何を企んでいるのか、わかったものではございません!」
「そう?でも、もし今困っているのなら……」
「だから、それが甘いというのです。ここは心を鬼にしてでも、追い返してくださいまし」
元・馬だったホールスタッフからも厳しい目を向けられる。
「あの女は犯罪者なのです。商売は信用が第一なものですから、絶対に甘い顔を見せてはダメです。もしそれでも……と思われるようなら、きちんとした紹介者を間に立ててくれというべきです」
「わ、わかったわ。このレストランもスタートダッシュしてから間もないから、なんとかお断りするわね……、でももし、泊る所もないと言われたら、どうしよう……」
「それでもです!」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
エレモアは、レストランを出てから、行く当てもないので、店の営業時間が過ぎるまで、ずっと店の前で、立ち続けている。
もしかしたら、ユリアが口利きをしてくれるかもしれないという期待を込めているのだが、ユリアから、こっぴどく自分が嫌われていることなど思いもしていない。
アイリーンは、かわいそうと同情するが、甘い顔をすると、他のスタッフから怒られてしまうので、知らないふりをして、我慢している。
だから欲しいものを考えてから、メニューを作るようにしている。先にメニューを考えると失敗してしまったことがあって、それからは冷蔵庫の中身と相談しながらメニューを作るようにしている。
ランチが終わり、カフェメニューは、ケーキを作り置きしているだけで、特に厨房に籠りきりというわけではないので、お買い物に行ったり、夜ご飯のメニュー開発をしたりしている。
その日もアイスクリームをバニラ以外の味でも作ろうかどうしようか、悩んでいると珍しく暗い顔をしたサファイアが入ってくる。
「どうしたの?」
「今、店に意地悪女が来ている。オーナーに会いたいって言っているけど、どうする?」
「えっ!?誰のこと?」
「今、店に来ている……、ほら、あの緑色の……」
厨房の料理を出し入れする窓から店内を見回す……、
「ひょっとして!?エレモアのこと?」
「そうだよ、偉そうにユリアを呼び捨てにしやがって。あの分だと、エストロゲン家を追い出されたに違いない!」
「今更、何の用かしら?」
「どうせ、行く当てもないから、ここで働かせてくれと言うに決まっているだろ?俺は反対だからな。せっかく、あの女の顔を見るのが嫌で、ここまで来たというのに、今更またあの女の意地悪そうな顔を見るのも嫌だ」
サファイアは、エレモアに飼い葉の代わりに泥を食べさせられた経験があり、ものすごく嫌そうな顔をしている。
「うーん。それで、営業時間が終わってから、また来いと言っておいた」
「なーに?その怪しげな対応は?そんなにキライだったら、追い返せばいいものを」
「オーナーの成功を見せつけてやりたいという気もあって……」
なるほどね。でもエレモアの前で、ステファニーだと暴露する気はない。
「わかったわ。夜ご飯前に集合しましょう。それでみんなの意見を聞きたいわ。他の子たちにもそう伝えてくれる?」
「了解しました」
納得はしていないけど、なんだかんだ言って、見捨てる気はなさそうなサファイアの後姿を見送る。
エレモアがどういう事情を抱えているのか、わからないから話だけでも聞いてみようかしら。
その考えは夜の部が始まる前に全員から却下されてしまう。
「アイリーン様、そのお考えは甘いです。あのエレモアですわよ?何を企んでいるのか、わかったものではございません!」
「そう?でも、もし今困っているのなら……」
「だから、それが甘いというのです。ここは心を鬼にしてでも、追い返してくださいまし」
元・馬だったホールスタッフからも厳しい目を向けられる。
「あの女は犯罪者なのです。商売は信用が第一なものですから、絶対に甘い顔を見せてはダメです。もしそれでも……と思われるようなら、きちんとした紹介者を間に立ててくれというべきです」
「わ、わかったわ。このレストランもスタートダッシュしてから間もないから、なんとかお断りするわね……、でももし、泊る所もないと言われたら、どうしよう……」
「それでもです!」
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エレモアは、レストランを出てから、行く当てもないので、店の営業時間が過ぎるまで、ずっと店の前で、立ち続けている。
もしかしたら、ユリアが口利きをしてくれるかもしれないという期待を込めているのだが、ユリアから、こっぴどく自分が嫌われていることなど思いもしていない。
アイリーンは、かわいそうと同情するが、甘い顔をすると、他のスタッフから怒られてしまうので、知らないふりをして、我慢している。
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