転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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現世:カフェレストラン

25.異能の成れの果て

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「エストロゲンの奥様は、まだレストラン アフロディーテのオーナーがステファニーお嬢様だとは、お気づきになっておりません。しかし、戻ってきてほしいと、最近になって必死に探しておいでですので、見つかり次第連れ戻されるのは、時間の問題ではないかと危惧しております」

「あらま」

 侍女長にそう言われるも、アイリーンは実感としてまだそこまでの話ではないと思っている。

 だって、半年前から、いつ追い出されてもおかしくない状況で、毎日折檻されていた身の上では、とても今の侍女長の言葉は信じがたいものがある。

 なぜ、そこまでわたくしを、お探しになるのかしら?サファイヤやエレモアの話では、相当、エストロゲン家は困窮していると聞くけど……?お父様に何があったか、知りたくもない。

 今まで贅沢三昧してきたのだから、少しそれができないぐらいで、きっと大騒ぎされているに違いないわ、という程度にしか思っていない。

 それにもう二度とあの家の敷居は跨ぐ気はない。アイリーンは、家出したと思っているのではなく、あくまでも家を捨てたと思っているので、その差は大きい。

 でも、今の暮らしができているのは、3歳の時、侍女長が忠告してくれたおかげだということは感謝しているので、侍女長がレストランで働きたいと言ってきたときは、無理をしてでも受け入れる気はある。

 ただ、何度も言うけど、この店は「普通」ではない秘密がある。ホールスタッフは皆、馬だし、厨房スタッフもシンイーを除いて、花の精霊だから、仕事終わりには、急に背中から羽を生やし、ミニチュアになって、パタパタと花弁のねぐらに帰っていく姿が可愛い。

 それでもいいのなら、雇ってあげるけど……エレモアはその姿を見て、最初、腰を抜かさんばかりに驚いていたけど、人間、慣れというものは恐ろしい。もう今では、なんとも思っていないようで、当然という顔をしている。

 そしてサファイアの正体にも薄々気づいているようだが、これも何も言わない。エレモアもエストロゲン家のことで、ずいぶん地獄を見たせいか、完全に達観している。

「それで?今日はなんといって、お屋敷を抜け出してきたの?」

「それがですね……ご子息様の日用品を買いに行かされましたが、その分の御金を渡されず……」

 ああ、あのお母様ならやりかねないことね。お給金を3か月滞納して、弟たちの日用品の支払いまで、侍女長に押し付けることぐらいは、平気でなさりそう。

「では、その日用品代は、わたくしが立て替えて差し上げますわ。おいくらですか?」

「いえ!そんなこと、お嬢様にさせられません!」

 固辞する姿を見て、新たな疑問がわく。そもそも日用品って何だろう?それも、弟たちの……に限定しているところを見ると、ノートか筆記具などの類だろうか?

「先日、スザンヌお嬢様が教会からお戻りになられて……」

 へー。そうなんだ。聖女様でも里帰りを赦されることなんて、あるのか、とビックリしたが、侍女長は、なぜか言葉を慎重に選んでいるようだ。

「もう、わたくし、イヤです!あのお屋敷には帰りたくございません!」

 今まで、沈黙していたくせに、なぜか、思いつめた表情になって、急に話し始めた侍女長に、唖然とする。

「どうしたの?何があったの?」

「お嬢様、どうか、この年寄りをお嬢様の傍にお仕えさせてください」

「うん。まあ、いいけど?何があったか聞かせてもらえると嬉しいな」

 侍女長は、ポツリ、ポツリとステファニーが家出した時のことから喋りはじめた。その内容に、顎が外れるかと思うほど、アイリーンは驚くのであった。

「そんなことがあったなんて、信じられないわ。それに修道院の話、お父様が多額の寄付をしてまでわたくしをあの家から追い出そうとしていた話、それにクリストファー殿下との再婚約なんて……、そればかりか自慢の弟たちが揃って、寝たきりでおむつをしていることも、それにスザンヌの聖女様の光が消えたなんて、そんなこと実際に起こるのかしらね」

 それが狂言だと言い切る根拠はどこにもない。

「異能って、何かしら?こんな異能でも、あった方がいいかもしれない異能なんて……」

 その答えは永遠にわからない。
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