転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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現世:カフェレストラン

26.それぞれの事情

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 王城では、クリストファー殿下が相当苛立っている。

「まだステファニー嬢の行方が分からないのか?」

「はい。当初の見立てが間違っていたようで、エストロゲン領に向かったと思い、街道沿いをくまなく調べましたが、痕跡すらありませんでした」

 その後も国内のあちこちを探索したが、どこへ行ったのか、さっぱりわからずじまいであったのだ。まるで霧の様に消えてしまったとしか表現のしようがない。

 ただ、ひとつだけ気になることと言えば、最近、王都でOPENしたレストランの評判だけ。

 一緒に家出をしたと思われるユリアという侍女の実家の近くにできた店で、大層評判が良く、見たこともない多国籍料理をリーズナブルな値段で食べられるという。

 その侍女の実家は大きな商会を営んでいることから、外国とも交易しているので、多国籍料理を提供すること自体も、さほど珍しくはない。

 一度は話のタネに行ってみる価値はあると思うが、少々王城から遠いので、お昼休みに行こうとは、思わない。

 でも行動を共にしていたと思われる侍女は、エストロゲン家を出奔後すぐに結婚していることから、行動を共にしているとは考えにくい。

 となると、ステファニー嬢が単独で行動するにしても女の足など、たかが知れている。聞くところによれば、愛馬を厩舎に残したまま家出していることから、そう遠くには行っていないはず。

 卒業パーティの時、ステファニーの取り巻き令嬢だった彼女らの実家を当たるものの、見事に空振りで……初心に戻り、もう王都を出てしまった後ということを念頭に探索しているが、半年経った今でも手掛かりすらなく、行方は分からずじまいになっている。

 それとは別な案件だと思うが、最近、隣国のアムステルダムの間者と思しき集団が王都の夜を暗躍している様子で、少しずつだが、治安が乱れる傾向にある。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 アムステルダムから来たシンイーは、実は追剥に追われたわけではなく、アムステルダム国内での政敵に襲われたのだ。

 シンイーには、姉がいるが、もうすでに嫁いでいる。姉の名前はジュリアン・シドニー公爵夫人になったのであるが、実は、このシドニー公爵が大変な野心家で、シンイーを追い出して、自分が王位に就くことを望んでいるのだ。

 シンイーには、双子の弟がいたが、シドニー公爵の手にかかり、毒殺されてしまった。次は自分の番だと思い、逃げ出してきたのが、事の真相である。

 ふがいない話だが、シンイーは、幼いときから勉学に励み、魔法は、自由自在に使えるけれど、剣術はあまり得意ではない。それは弟も同じで、双子の兄弟はそろってインドア派になってしまったのだ。

 王たるものは、有事の時は、軍の先頭に立ち指揮を執る立場にあるというのにもかかわらずだ。

 シドニーは、そんな兄弟たちにアムステルダムを任せられないと、言いようによれば勇気を持って、王国に立ち向かおうとしているのだが、その実は自分が王様になりたいだけで、行き遅れの姉と結婚したのだ。

 姉もやっと結婚できた喜びで、夫に逆らわない。シドニーは、姉以外の女性を何人も側室にして、夜ごとローテーションを決めているのに、姉のところへは、ほとんど顔を見せないくせに、王位だけ欲しがる身勝手な男なのだ。

 父王もやっと姉が片付いたことが嬉しくて、ホっと胸を撫でおろした途端、持病を悪化させて、あっけなく他界してしまった。

 王位は、俺たち双子のところに転がり込んできたのだが、父もまだ自分が死ぬとは思っていなかったらしく、双子のうちのどちらかを指名することなく死んでしまったので、王位に空白が生まれた。

 その空白にシドニーが割り込んできたのだ。

 自分は王女の夫なのだから、自分にも王位を継ぐ権利があると言い出して。

 それからは、王位をめぐる熾烈な攻防があり、つい先日、とうとう双子の弟がなくなってしまうという不幸に見舞われた。

 その時、フワフワと飛んでいる花の精霊の導きにより、アムステルダムを脱出することに決め、追手を撒きながらレストラン前で力尽きてしまう。
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